写真展「風和らぐ」被写体インタビュー/AAAMYYY(ミュージシャン)
三浦えりの写真展「風和らぐ」展示中のAAAMYYYさんの写真をちょっとだけ公開します。
AAAMYYYさん
シンガーソングライター / トラックメイカー。2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。『WEEKEND EP』を皮切りに、『MABOROSI EP』『ETCETRA EP』と3作品をカセットテープと配信でリリースしている。さらに、RyohuのゲストボーカルやTENDREのサポートシンセ、DAOKOへの楽曲提供やCMソングの歌唱、モデル、ラジオMCなど多方面で活躍中。2018年6月からはTempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリース。
AAAMYYYちゃんと出会ったのは確か4、5年前。真面目でまっすぐで物事を深く考える子で、真面目過ぎて誰かと一緒にやることがつらく感じてしまうことがあるんだろうなと思っていました。ただ、Tempalayというバンドと出会ってから、うまく力が抜けて軽やかになった気がしました。そして、そこから彼女はバンドとしてもソロでの活動でも一気に表舞台に駆け上がっていきました。
実はAAAMYYYちゃんとは同じ大学を卒業しました。そこでは相互理解や他者との違いを受け入れることを学んだよね、と話したことがあります。また、大学時代にCAを目指していたことが今の真面目さの元なのかなと思います。そんな彼女だからこそいろんなアーティストと一緒に柔軟にクオリティの高い作品づくりができるんだと思います。
AAAMYYYちゃんの作る音楽は叙情的で誠実です。キャッチーでありながら、あいまいな部分があり、そのバランスがとても居心地が良いです。一方的に与えるんじゃなく、考えたり感じたりする余白があるんだと思います。すべてがキャッチーで心を掴むような音楽が分かりやすく、聴きやすい音楽なのかもしれない。でも、彼女の作るような聴く側に委ねるような音楽こそ、心に残る音楽なんじゃないかと思います。
自分自身のやりたいペースで好き勝手やっていく方が、成功するかも。
三浦:AAAMYYYちゃんと出会ったのは、確か4~5年前の今とは違うバンドをやっている頃だったよね。その後、2~3年でガラッと変わったなぁ、一気に表舞台に行ったなぁって勝手に感じていて。何か、きっかけがあった?
AAAMYYY:三浦さんに出会った頃にやっていたバンドでは、完璧主義になりすぎてました。うまくいかないことも多くて、気付いたら負の連鎖にハマってて…。でも、Tempalay(テンパレイ)のサポートをするようになって、「完璧にならなくてもいいのかも?」って思えるようになったんです。自分自身のやりたいペースで好き勝手やっていく方が、道が開ける、成功する…かも!って。
三浦:それって、Tempalayのメンバーのおかげでそんな風に思えるようになったの?
AAAMYYY:彼らのおかげですね。Tempalayのメンバーは良い意味で言うと自由奔放、悪い意味で言ったら本当に無法地帯みたいな人たちで(笑)。だから、傍で見ていると心配になって、つい口を出しちゃうことがあったんです。その時に、「そういうアドバイスもあるんだけど、僕らはこういう人間で、こういう風にしかきっとうまくできないから」っていう答えが返ってきて。等身大で音楽と向き合う彼らの姿を見てきたから、「私ももっと、肩の力を抜いてやってもいいんだ」って思えるようになりました。
三浦:Tempalayとの出会いが、AAAMYYYちゃんにとってすごくいいきっかけだったんだね。とは言いつつも…いつ正式なメンバーになるんだろうってずっと思ってた(笑)。「海外ツアーにもいっしょに行ってるけど、あくまでもサポートなんだよなぁ」って。自分の周りを見ていても、バンドマンやアーティストって冷静に考えられなくて勢いだけで判断する人が多い気がする。でも、AAAMYYYちゃんは「今はまだ、Tempalayの正式メンバーにならないほうがいい」って冷静に判断してたのがすごいなぁって。もともと、どんなことに対しても物事を客観的に見て判断することができてた?
※2015年からTempalayのサポートメンバーとして活動開始、正式に加入したのは2018年6月。
AAAMYYY:バンドを始める前の方が、もっと考え方が硬かったかも。私はCAを目指していたから、根底にはすごく保守的な面があるんです。浮ついた感じだと不安というか。勢いだけでは動けないし、数字や根拠がないと「本当にそっちに進んでもいいのか?」って怖くなる。だから、アーティストが勢いに身を任せて突き進んでいくのも、それはそれですごいなって思います。Tempalayに正式に加入するときも、少しずつ数字が付いて来てるところがあったし、「ここで一気に身を投じないと、逆にバンド自体も波に乗り切れずに衰退しちゃうこともある」と思ったから、あのタイミングで加入を決意しました。
三浦:じゃあ、Tempalayに入ったのは「このタイミングで正式に入った方がいい」っていう自分の判断で?
AAAMYYY:そうそう。加入してほしいとメンバーから正式に言われたのも同じタイミングでしたね。
三浦:その判断が自分でできるってすごいよね。それって、Tempalayだけじゃなく自分のソロ活動でも活きてるなって思う?
AAAMYYY:ソロになったタイミングって、実は急に決まったことだったんです。個人的には、前身のバンドがもうなくてソロでやろうとかもあんまり思ってた時期じゃなかった。
三浦:そうなの?じゃあ、自分で「ソロでやっていくぞ!」っていう感じではなかったんだ。
AAAMYYY:当時、たまたま周りがソロでやっていく流れを作ってくれたんです。今思えば、Tempalayしかり、KANDYTOWN(キャンディタウン)のRyohu君とかとの出会いも、私の中ですごく大きかったのかも。Ryohu君が先見の明がある人で、当時ampel(アンペル)として活動していたTENDRE(テンダー)もそう。Ryohu君との繋がりで、InterFMのMCをやることが急に決まったりして。その時に、「ソロでやってください。ソロ活動の名前、どうしますか?」って言われて。
三浦:「ソロでやりたい!」オーラを自分が出していたわけではなく?
AAAMYYY:それはなかったと思います。どっちかと言うと、今までやってたバンドがなくなって、「これから何をしたらいいかわからない、どうしたらいいかわからない…。けど、とりあえず音楽が好き!」っていう想いだけはある状態でした。
三浦:自分の意思でソロを始めたと思っていたから意外!ソロ活動とバンド活動をそれぞれやっているときに、何か頭の切り替えとかしてる?
AAAMYYY:特にはやってないですね。今はTENDREのサポートとTempalayとソロの3つがあるけど、Tempalayのときはわりと歌に寄り添いながらシンセサイザーを担当する役割がある。TempalayのときはTempalayの音の出し方やみんなとの掛け合いがあると思うし、TENDREは人が違うから、それは少し変わるかも。
三浦:人柄的に、AAAMYYYちゃんは良い意味でいろんな人に合わせられる人だよね。
AAAMYYY:確かに。間に入るのが得意かもしれない(笑)。
「いろんなものを受け入れる」ということを、大学で学びました
三浦:AAAMYYYちゃんって、人との接し方を見ていてもあんまり隔たりないっていう感じがしていて。私も同じタイプだなって思ってるんだけど、それって大学での出会いが影響しているなって思っていて。文系だけど、みんな個性的というか。(私とAAAMYYYちゃんは同じ大学出身)
AAAMYYY:それ、すごくあると思う。相互理解とか他者との違いを受け入れるとか、そういう「いろんなものを受け入れる」ということを、大学で学びましたね。
三浦:私は田舎から出てきたから、いきなりポンっとあの環境に入って衝撃を受けたんだよね。カルチャーショックとまで行かないけど、「みんな、すごく主張激しいな…」って。
AAAMYYY:ね、それすごくあったかも!クラスメイトもみんな濃くて。
三浦:私、高校時代普通の子だったから、「大学ではちゃんと発言しないと、埋もれていってしまう…」って焦ったなぁ。
AAAMYYY:確かに「埋もれちゃう」っていう焦り、私にもありました。普通に講義もあるけど、クラス主体で動くことが多かったから積極性が培われたかも。
三浦:カナダに留学もしてたんだよね?
AAAMYYY:CAになりたくて、カナダのキャビンアテンダントの専門学校に1年だけ留学していました。
三浦:高校卒業~20代前半にいろいろ経験したことが、今のAAAMYYYちゃんの軸を作っているのかなって。
AAAMYYY:たしかに。でもカナダに留学していた時は、人格形成が6割くらいでした。伝えたいことがあるけど、うまく伝えられないフラストレーションもあったから。だから、カナダでは友達からすごいシャイな子だと思われていました。当時は、コミュニケーションをうまく取れないことがすごく悔しかった。知識とか話す中身とか人柄とかっていう基本的なものがないと、どんなに英語勉強していても話す内容がないと意味ないんだなって。
三浦:大学とかカナダでの経験が、AAAMYYYちゃんの人当たりの良さを作り上げたのかな。
やらされてる感があるときは、うまくいかない。
三浦:20代前半の頃は「好きなことをやるぞ!」ってがむしゃらにできるけど、やっぱり20代後半とか30代になってくると環境が変わってくるよね。家族を持つとかそういう選択肢も入ってくると思うけど、AAAMYYYちゃんは「今後、こんな風にやっていきたい!」とか考えてる?
AAAMYYY:私はまだ、結婚とかは考えられないですね。でも、恋人がいてその人とのことを好き過ぎたり、生活の一部になっている場合もあると思う。私自身は、仕事とプライベートを分けて考えるべきだと思っていたけど、そこは別に分けずに恋人を好きでいる自分でいることが仕事みたいなこともあってもいいのかなって。私は結婚はまだしないと思うけど…難しい。わりとしっかり音楽だけで食べていけるようになってきたから、そう思えるのかもしれません。
三浦:音楽だけで、しっかり食べていけない人もいるよね。
AAAMYYY:1個前にやってたバンドの時は、ほぼフルタイムでバイト掛け持ちして隙間の時間で音楽をやるみたいな生活だったなぁ。その頃も、楽しかったんですけどね。
三浦:バイトしながら音楽を続けていたAAAMYYYちゃんが、今は音楽だけで食べていけるようになってる。それって、自分でこういうことしたっていうのはある?
AAAMYYY:アーティストって、いっぱいい過ぎて埋もれてしまう職業だと思っていて。大勢アーティストがいる中で、自分をブランディングして、ちゃんと納期も守って、さらにこれくらいのクオリティを上げられる人材ですよ、みたいなのをアピールしていかないといけない。私の場合は、自分の名刺的な音源だったりアルバムだったりを作ったときから始まったのかなって思いますね。ソロになる1個前の音源をカセットテープで出して、それを3回繰り返して出して、アルバムにしたことがありました。その一連の流れとか、そこに秘めていた理由とか想いとかを周りからおもしろいと思ってもらえて、それが自分のブランディングになったのかなって。
三浦:やっぱりしっかりしてるよね。周りの誰かに甘えるんじゃなくて、歌ひとつ録るのも自分でしっかり準備してちゃんと100%出し切りますってタイプなのかなって。もともと、AAAMYYYちゃんに真面目な部分があるからっていうのもあるよね。
AAAMYYY:自分でそういうスキルが必要になって、身につけてきたところもあります。もちろん、気づかない間に楽しくて熱中してたっていうところもある。でも、やっぱり一定のクオリティーは超えないと。
三浦:誰かに任せてクオリティーを上げてもらうというよりは、自分でしっかり責任もってやり遂げるイメージがあって。でも、それができる人があんまりいないから、だからすごいなぁって思う。
AAAMYYY:最近は、チームが大きくなってきて関わる人が増えて、意見が食い違ったり伝わらないこともあります。でも、ものは言い方次第というのもあるし、全員が同じ目標のために「その人はこの仕事をする、この人はこの仕事をする」みたいな役割分担がしっかりできてて、今やっていることの最終地点っていうのをみんなが共有できてるときに、うまくいくんじゃないかなって。
三浦:どの仕事でも、いっしょだよね。
AAAMYYY:やらされてる感があるときは、うまくいかない。この仕事をしっかりやっていればこのチームの成功に繋がるんだ!とか、私も含めてみんながそういうポジティブな気持ちでやっているときはうまくいくことが多いですね。
三浦:Tempalayは1人ひとりがそういう感じでやってるから、いい感じに進みそう?
AAAMYYY:そうなんです。1人ひとりの特技というか、いいところがなんであれ、それぞれができるところをやっている感じですね。
今年は、「自分が満足できる良いもの」を突き詰めていきたい
三浦:最後に、今年の活動について聞かせてもらえれば。
AAAMYYY:今年はわりと、今年の年末までスケジュールが作られている状態で。
三浦:さすが!
AAAMYYY:その状態も、すごく良いと思っています。だからこそ良いものを作っていくために、毎日いろいろ吸収したい気持ちが引き続きありますね。
三浦:AAAMYYYちゃんが考えてる「良いもの」は、作品のクオリティー?
AAAMYYY:たとえば3〜4分の曲の中に、構成があって、音色があって、歌があって。そういう限られた枠の中でいかに自分が満足できる作品ができるか?みたいな。全員のバイブスというか、共通項とかちゃんと揃ってないとそれはできないし、日々の見てきた景色とか吸収するものが多くても少なくてもダメで、みんなのバランスが大事になる。バンドに関しては。
三浦:自分に関しては?
AAAMYYY:私は今はマイペースに。大衆的に良いものってもちろんあるけど、自分のなかでちゃんと満足がいくものじゃないと良いものと言えないから、そこを詰めていきたいですね。歌も、極めていけたらなぁと思います。
三浦:AAAMYYYちゃんを見ていると、たくさんの人に囲まれてるなって思うけど、孤独だなって感じるときある?
AAAMYYY:孤独というよりは、1人を好むタイプですね。私自身、1人でいることは好きでもあるから、なんでもかんでも友達に話すタイプではありません。人と人との距離感っていのは一定に保っていて、どんなことでも悩みを相談するっていうのは誰にもしてないというか。それがその人にとってプラスになるんであれば言ったりすることもあるけど、1度、自分の中で消化する時間が欲しかったりします。
三浦:自分と向き合う時間を作りつつ、成長してるっていう。
AAAMYYY:私はすごく喋るタイプじゃないし、どっちかというと相手の話も聞きたい。でも、それをすぐにその場で咀嚼できないというか、もうちょっと深く考えたい時に、家で1人にならないとゆっくり考えることができないっていう面はすごくあります。
三浦:日々バンド仲間といつつも、自分と向き合う時間をうまく作ってるんだね。今のAAAMYYYちゃんを見ていると、すごく楽しそうだなって。
AAAMYYY:おかげさまで、毎日すごく充実しています。
三浦:よかった。ありがとうございました!
写真展「風和らぐ」
場所 表参道ROCKET
日時 2020年1月10日(金)〜1月15日(水)
記事執筆:三浦えり
編集:せらなつこ
ヘッダー制作:カナメ@世界観デザイナー