夫がはじめて旅に出たいと言ったとき、私は富良野でカメラを手放した
自分がまったく興味のない場所に旅に出るってなかなかない経験だと思う。
私のパートナーはドラマ「北の国から」の大ファンだ。20年の歴史のあるシリーズを1年に2回は見返すくらい大好きだ。そして、あの卑屈でどうしようもない純くんに自分を重ねているようだ。
私のパートナーは旅が好きではない。人生で旅行は小さいころの家族旅行くらいで、自主的に旅に出たことがない。旅好きな私と結婚して、海外や日本の各地に行く私の姿を見ても旅に興味を持たない。一度、半ば強引に3泊4日で瀬戸内へ旅行に連れて行ったことがある。足を運んでみれば楽しく過ごせるようで、いい思い出になったけど、だからと言って旅が好きにはならなかった。
そんなパートナーが「一緒に北海道に行きたい。富良野に行きたい。」と初めて自分から旅に出たいと言ってくれた。とにかくびっくりした。どうやら「北の国から」の聖地巡礼をしたいそうだ。ちょうど札幌に出張があった私と予定を合わせて二人で富良野に行くことにした。
私は「北の国から」は世代でもないので、まったく見ていない。ラベンダー畑が有名なのは知っていたけど、富良野に旅に行きたいとは思ったことがなかった。
一人はまったく興味がなく、一人は人生のバイブルの聖地巡礼。そんな夫婦ふたりの富良野の旅の記録を残していこうと思う。
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今回は札幌で仕事があったので、札幌から富良野へ向かうことに。
お得な「ふらの・びえいフリーきっぷ」を利用した。
主人公・黒板五郎の娘・蛍ちゃんが駆け抜けた「空知川」。富良野に向かうにつれて空知川が沿って流れている景色が見える。「空知川」に感動するパートナーを横目に「銀魂の作者ってここから名前取ったのかな?」と想像する私。
富良野駅に到着。富良野は北海道の中心部らしく、「おへそ祭り」というイベントがあるらしい。
そして、富良野駅の観光協会で「北の国から」ロケ地マップをゲット。観光案内のマップやチラシがずらりと並ぶけど、「北の国から」ロケ地マップは置いていなく、受付のお姉さんに声を掛けて奥から出してもらいました。
今回は2泊3日で間の1日で車を使って富良野をまわる予定。
北の国からのドラマは富良野駅周辺と麓郷エリアに大きく分かれている。旅に慣れていないパートナーは「できればこれ全部まわりたい」とマップを手に言う。私は「ぜんぶは絶対に無理」と思う。
ということで、「北の国から」聖地巡礼のはじまり。
まずは五郎さんの家へ向かいます。
マップから引用:「ʼ89帰郷」で五郎は、丸太小屋を建てようと計画したが、ʼ92巣立ちで 純がタマコを妊娠させてしまい、誠意を見せるために金をつくろうとして、 丸太小屋を諦めた。ただで積み上げられる石を使って、コツコツと建て たのがこの石の家である。
ちょうどたんぽぽが咲き乱れていて、緑も豊かで自然豊かな場所でした。そして、いま流行っているDYIの元祖では?というくらい手作り感がすごい。
古臭さもありつつ、写真映えのするとっても可愛いお家です。
「北の国から」は基本的には富良野でのロケ撮影だったらしく、家族での家の中の撮影もこれらの家で撮影をしたらしい。
「キッチンのつくりはこうなっていたのね」とかドラマのシーンを思い出しながら、家のなかを確認し感動を繰り返すパートナー。
お次は五郎さん「最初の家」
マップから引用:「ʼ81連続ドラマ」で、五郎が廃屋同然の家を修理し、水 を引き、風力発電を作った。平成18年秋には「最初の家」 がここに復元された。
有名なシーンのお家。
純「電気がなかったら暮らせませんよ!!!」
五郎「そんなことないですよ」
純「夜になったらどうするの!」
東京に住んでいた小学生がいきなり電気も通ってない廃墟寸前の家に住むことになったら、そりゃあ純くんみたいな歪んだ青年に成長してしまうよね。と「北の国から」のあらすじしか知らない私は感じてしまうのでした。
こちらは「3番目の家」
五郎さんが手がけた丸太小屋が全焼してしまい(純と友だちの正吉の火の不始末が原因。しかも純は正吉に罪を全部被せた)、その後に離農した農家の廃屋を直して作った家。
そして、最後は「拾って来た家 ─やがて町 ─ 純と結の家」
潤とお嫁さんの結のために作った家。
バスやトラクターを改良して作られた家。廃材がふんだんに作られていて、これこそ元祖サスティナブルというべきものなのではないだろうか…!
五郎さんの歴代の家を回って感じたのは「サスティナブル」。石の家も丸太の家もすべて自分の歩く範囲にある材料で作られている。無理に新しいものを取り入れるのではなく、いま目の前にあるものだけで生活をしていく。ここ最近、私たち現代社会が「サスティナブル」と必死に声を上げ、実現に苦労していることを五郎さんは40年近く前に当たり前のようにやっていたのかもしれない。
五郎さんの「遺言」の最後の言葉が印象的だ。
まったく興味のなかった富良野で「いま」について考えを巡らせている隣でパートナーは大感動で写真を撮っている。
そしてその後、中畑木材、純と結が出会った神社、シュウが働いていた金物屋さん、純とシュウがボートデートした公園、飲み屋の「くまげら」などなどなどなど、マップの7割くらいはまわることができた。
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「北の国から」聖地巡礼とはいえ、さすがに他の観光地もまわりたい。とのことで、いくつか「北の国から」以外もまわりました。
ランチはミシュラン星付きのジンギスカン「羊の家」
サフォークジンギスカン、ミルクラムジンギスカン、ホワイトラムジンギスカン3種類のジンギスカンが食べれてどれも絶品。お値段もお手頃価格です。ただ、富良野駅からかなり離れているので、車は必須。冬になると富良野駅近くでお店がオープンしているそうです。
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写真好きは一度は訪れたい「青の池」
お天気があまりよくなく、SNSで見るような真っ青な景色ではなかったのだけど、幻想的で不思議な世界観でした。
池に立つ枯れているカラマツは、あと何年くらいこの場所に立ち続けて、みんなのカメラの記録に残るのだろう。
北海道を旅行していていつも思うのは一本道がとにかく長い。景色すべてが自然で、そのなかを車で走るのは、ちょっと海外の映画の世界に入ったようで気持ちいいですよね。
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ホテルは「新富良野プリンスホテル」に泊まりました。「北の国から」で登場した「富良野プリンスホテル」は閉業になってしまい、同じ敷地内にある「新」の方に泊まりました。
「新富良野プリンスホテル」は倉本聰ワールドが満載。
「風のガーデン」や「優しい時間」の世界も楽しむことができます。
そして、倉本聰のドラマグッズも購入できるドラマ館もあります。(五郎さんの帽子を購入していた人も)
初日の夜には「優しい時間」で主人公が経営するカフェ「森の時計」へ。
「森のカレー」と「雪のシチュー」を食べました。
感動体験だったのは「珈琲」です。自分で豆を挽くことができ、目の前でバリスタがコーヒーを淹れてくれます。ドラマの世界を感じつつ(パートナーが)、静かな時間を過ごすことができます。
帰りはプリンスホテルの敷地内にある「ニングルテラス」に寄りました。
森の中にログハウスが連なるロマンチック・ショッピングエリア。個性あるクラフト作品が展示・販売されています。(ちなみに北の国からの雪子さんもニングルテラス内の店舗でキャンドルを販売しています)
ちょうど夜だったので、イルミネーションが輝いてとっても幻想的でした。
個人的には「北の国から」世代の年配の方、外国人観光客が9.5割を占める客層だったので、20年後30年後の未来はどうなってしまうんだろうという心配も旅の仕事に少しばかり関わる私にとっては感じることろだった。
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このnoteを見ていて気づいた人もいるかもしれませんが。後半はiPhoneでしか写真を撮っていません。自分が「行きたい」と思わない場所では自主的にシャッターを押すことはないんですね。いつも思っているのは「シャッターを押すこと」は自分の欲求を満たすことでもある。自分で行きたいと思わなかった場所では「撮りたい」という欲求は出てこないんですね。
でも、それって悪いことではないと思う。行く先々で常に「写真を撮る」ことばかり考えていると疲れちゃうよね。常に映える場所、素敵な構図、天気など「撮る」ことばかりに縛られて、「旅」本来を楽しめていないのかもと感じることがあった。だから、今回は途中でカメラを手放した。旅が好きではないパートナーが初めて「一緒に旅をしたい」と言ってくれた富良野という場所で、その人ととその場所にまっすぐに向き合う時間を過ごすのは私にとっては写真を撮ることよりも大切なことだったのかもしれない。
おかげで、富良野から帰ってきてから2ヶ月たった今でも富良野の旅の話をふたりでよくする。パートナーは嬉しそうにGoogleマップにピン付した「北の国から」の思い出の場所を見返している。
本当は写真を撮って、久しぶりにnoteやSNSで旅の発信をしたいなと思っていたけど、そんなのはどうでもよくなってしまった。
富良野は興味のなかった私でも、本当に楽しめたので、もし「富良野」「旅」と検索して、偶然にもこのnoteを発見した人にはちょっとでも何か参考になることがあればいいなとは思う。
記念撮影はあまりしないので、一緒に写っている写真はこれと、観光客の方に撮ってもらって、ピントが後ろの建物に合ってしまった写真だけでした。
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余談ですが、私のまわりでは旅にまったく興味がない人が多い。パートナーもそうだし、私の父母も旅行をする人たちではない。まわりの友だちも、もともと旅に興味がない人や、家族が増えて旅をしなくなってしまった人がいる。
私は旅のメディアで撮影や文章を書いて発信しているけど、旅に興味がない人にとっては、そういう発信ってどう見えるのだろう。旅に興味がない人にも、生活や人生のなにか種になるような、そんな寄り添える旅の記録を届けられる写真や文章を書きたいなあって思いました。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。写真展が続けられるようにサポートしていただけるとありがたいです…!