ちいさきものとお団子ローラー
ちいさいものが好きだった。
ミニチュアサイズのお皿やティーポット、人形のおうちやお洋服。
普段自分の使っているものが人形やぬいぐるみサイズになるだけで、とにかくかわいく思えて仕方がなかった。今も変わらず、かわいいと思う。
ちいさい物の中でも一番心に残っているのは、BANDAIのエンジェルポケットだ。
(売り切ればかりだ…)
手のひらサイズのドールハウスで、海外のポーリーポケットというものもあったけれど、わたしはエンジェルポケットを持っていた。
コンパクトのようにパカッと開けると、ちっちゃっくて可愛らしい空間が広がっている。自分も小さくなって、この部屋に行きたいと思っていたほど、胸のときめきは掻っ攫われていた。
今見ても、かわいさに胸が踊る。(欲しい……)
グリム童話の『小人の靴屋』も好きだった。ちいさな小人が夜中に靴を作っている絵のところで「かわいいなぁ、こんなにちいさな人たちがせっせと働いているなんて」と想像しては可愛さが増し増しになっていた。
食欲が有り余りすぎて、4玉が串に刺さっている、3本入りの団子パックを買った。ひとりで全部食べる。
お昼ご飯後に味わっていると、2玉目までは難なく口に入れられるのだが、3玉目の団子から上手く食べることができない。
口の右端から串を入れて団子を食べようとすると、左頬の内側にズブッと串の尖端が突き刺さる。痛い。
面倒くさいので箸で団子を移動させるようなことはせず、前歯だけ使って団子を齧り取っている。
2本目に突入。1玉目の団子を食べ終わった後、2玉目の団子がぽーんと自然に押し出されてきたら食べやすいのになぁ〜と思った。
コンビニやスーパーで缶飲料を買おうと手前のものを取ると、下のレールが動いて(?)後ろの缶が手前に押し出されてくるみたいにさ。
うん、いいな。食べやすい。
でも、串にそんな機能を付けてしまったら、ぶっとい厚さの串になって趣がなくなってしまうから、それはできないな。そもそも、団子が刺さらずにちぎれてしまいそう。
となると、ここは小人の出番だ。
わたしが団子を1玉食べるたびに、2人の小人が後ろの団子をうんせうんせと押してくれるのだ。
ありがたい。かわいい。食べやすい。
小人にお願いしようと状況を想像してみると、団子を食べるときは串を手に持っていて空間に浮いているような状態だから、妖精に頼んだほうが上手くできるのかもしれないと思った。
小人も妖精もちいさきものたち。会えるだけで嬉しいだろうな。団子を食べると小人や妖精にお目にかかれるのなら、毎週買ってしまうかも。
いかんいかん、こんな小さなことのために小人に働いてもらうなんて…と思い直し、前歯を突き出して団子をがぶっと食べ終えた。