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9/エンディング 時は流れ、春が来る。 当然のように。 * 春休み入る直前、私は一馬と直接…
8.水曜二限。 後期最後のイタリア語クラスで、私は裕也を捕まえた。 二人共通して取っていた…
7.『咲生がさっちゃんて、やっぱり全然似合わないよな』 猫が笑うみたいにきゅっと目を細く…
6.一年生の九月のこと。 接客が向いていないことを痛感しながらのアルバイトは本当につらく…
0/オープニング 『ごめん、もう、無理だ。ごめん』 よく知っていたはずの、だけどほんとは…
2. 雄介のことに加え一馬もことも考えなくてはならなくなった私の気分はその日、雨に追い打ち…
3. あれはそう、二年生になったばかりの、五月か六月のことだった。 政治学部の同じ授業を受けていた私と裕也は一緒に大学を出ようとしていた。 『うわ、かわいい』 そう言ったのは、校門の前にパステルグリーンに白いラインのミニクーパーが停まっていたからだ。 『こんなとこ停めたら迷惑だろ』 『大学の人のだよね。すごい、珍しい色』 人の車の前で勝手なことを話していると、男子学生を一人つれた女性が、それぞれ段ボールを抱えて歩いてきた。 あの人は学部で何度か見かけたことがある。教授
4.友達と先生、知っている人同士の不倫という、身近に降って湧いた問題を私はどう受け入れた…
5. 夢を見た。 暗い世界で私はあちこちに小さな傷のある右手と手をつないでいた。けれど気づ…