ゆのはま100年キッチン「海とワイン」イベントレポート
9月17日土曜日、夕陽を眺めながらの時間。8月26日にオープンしたばかりの、山形県鶴岡市「ゆのはま100年キッチン」でイベントがあり、2人の仲間と「海とワイン」をテーマにトークセッションしました。波音と潮風と景色と共に五感すべてで味わうワインとお料理を、地域の皆さんと楽しんだひと時は唯一無二の時間でした。
同じイベントはもうないのですが、同じワインとお料理、なによりも景色を楽しむことはできるので、トーク内容と共にお伝えしたいと思います。
◆生涯ココの人・今ココの人・ココによく訪れる人の3人で。
一緒にトークしたお二人は、創業200年、湯野浜温泉「亀や」の主、阿部公和さん。生まれもこれからも湯野浜の人です。そして、もう一人が、ANA SHONAI BLUE Ambassadorの切江沙也加さん。昨年12月からアンバサダー5人で庄内に移住。来年春まで庄内で活動を続ける、今湯野浜の人。そして、何度もこの地に足を運ぶ観光客としての私。年齢も、過ごしてきた時間もだいぶ違うけれど(阿部さんと私は同い年だけどw)、共通点はワインが大好きなこと。それぞれ、3人の感覚と視点から、ココ湯野浜で飲むワインの時間の価値、そして湯野浜だから飲みたいワインについて語りあいました。
◆ゆのはま100年キッチンを作った理由。
阿部さんから、まずはなぜ、ゆのはま100年キッチンをつくろうと思ったのか? のお話を聞きました。阿部さんのお祖父さんの時代、それよりもっと古い時代、湯野浜はハイカラな場所で、伝統を大切にしながらも、新たなモノ・コトを受け入れる文化があったそうなんです。左の写真は、大正時代にあった洋食屋さん。真ん中は明治時代の公衆浴場。なんてモダンなんでしょう。右は当時の亀やで、ベッドとバスがついた部屋もいち早く取り入れていたそうです。びっくりですね。
そんな文化を引き継ぎでいく使命が、今を生きる僕らにはあるよね、ということで、仲間たちと一緒に、ゆのはま100年キッチンを作ることにしたのだそうです。
◆メニューはANAのCAの皆さんが考案!
でも、自分たちだけで何もかも考えたら、独りよがりになるよね。ということで、強力な助っ人、ANAの庄内プロジェクトで湯野浜を担当する切江さんに相談。すると、切江さんはANAのキャビンアテンダント(CA)仲間100人にアンケート。そのアンケートをもとにメニューを考案し、阿部さんたちがそれを取り入れたのだそうです。そのメニューは地元の方からも観光客からも大好評。常時10種類以上のワインや日本酒をグラスで楽しめる機械も導入し、食とお酒を楽しむことができる場所を実現したのだそうです。素敵なコラボですよね。
◆そろそろ、この日のテーマである「海とワイン」へ
この景色を見ながら、どんなワインを飲みたいだろうね、っていう話を。 世界の人はどんなところでワインを楽しんでいるだろう、と思い、バカンス・ワイン・景色、で検索してみました。
結構、海が多いなあという印象。実際、私も海外で「海とワイン」の思い出あります。でも、日本で「海とワイン」って印象のある場所、意外にないですよね。湯野浜を、「海とワイン」を楽しめる日本の名所にしたいですよねぇって盛り上がりました。
◆「海(湯野浜)と一緒に」楽しむワインに求められるもの
それは、圧倒的に美しい景色を、より美しく感じるワイン。この景色の記憶を、深くしてくれるワイン。まさに、湯野浜の景色と「マリアージュ」してくれるワインのイメージですよね。
◆マリアージュは、こうやると間違いなし!
盛り上がってきましたので、そろそろ、ワインを飲みながら。マリアージュで間違いないのは、2つあるよね。ということで、まずは似ている要素のあるもの同士の組合せ。一番確実なのは、ワインとあわせる相手の”濃淡”を合わせること。ヘビーで濃い味付けのお料理にはコクのある日本酒や赤ワイン、さっぱりしたお料理にはスキッと爽やかな端麗辛口の日本酒や白ワイン、のように景色に合わせるワインも、その景色から感じる「雰囲気」「匂い」に近いワインを選べばよいよね、とお話ししました。
もう一つは、同じ土地でつくられたもの同士の組合せ。「地元の食べものには地酒が合う」と言いますよね。同じ環境、気候風土。特に同じ「水」でつくられたお酒と、同じ水で調理した料理の相性は、間違いありませんね。
◆それではテイスティングを!
この日は、似ている要素の組合せを2種、同じ土地の組合せをを1種。合計3種のワインを。(これらのワインは、ゆのはま100年キッチンではいつでも味わえます)
◆1杯目は、メゾンウイリアムフェーブル シャブリ
フランス・シャブリ地区は遥か昔、海だったので、土壌はキンメリジャンとよばれる石灰岩が主体。ミネラルが豊富な土に、牡蠣や貝類など海洋化石を含んでいるため、ワインもミネラルな香り、味わいに。まさに海に合う定番ワインです。実際、テイスティングしてみると、白浜のように透明感のあるイエローグリーン。フレッシュな柑橘系の香り、キレのある酸味。潮風の香りと似たミネラル感のある味わい。波の音を聞きながら。最高です。
◆2杯目は、ドメーヌ・ファビアン・デュヴォー ソーミュール・シャンピニー
フランス・ロワールのこのワインは、遊び心溢れるラベルデザイン。砂浜の落書きをイメージし、「ビーチで気軽に美味しく楽しんでもらいたい」というつくり手の思いを表現したんだそうです。そんな話を聞いたら、もう絶対合いますよねって思えちゃいます。
テイスティングしてみると、明度の高い、美しく明るいルビー色。小さな赤い果実の香り、しなやかな口当たり。きめ細かく溶け込んだタンニンが心地よく、地平線、夕陽を眺めながら、味わいたいワインでした。まさにその時間にピッタリで。景色とのマリアージュは参加者の皆さん全員で感動でした。
◆3杯目は、この地生まれの、鶴岡市松ヶ岡産の白ワイン「VestitoTerre」
「ANA SHONAI BLUE Ambassdor」のCAとワイナリー「ピノ・コッリーナ ファームガーデン&ワイナリー松ケ岡」のゼネラルマネージャー、川島旭氏が共同でアッサンブラージュしたワイン。松ヶ岡産のぶどうを使い樽発酵したソービニヨンブランとステンレス発酵したシャルドネとステンレス発酵の甲州を絶妙なバランスでアッサンブラージュ。香り高く芳醇な口当たりで、名前通り、広がりゆく大地のような奥行きのある味わいでした。
ワインのラベルに鶴岡シルクを着飾ったボトルデザインは、とってもおしゃれで斬新。さすがCAの皆さんがこだわったワインですよね。
◆私たちが「海とワイン」をテーマに選んだ理由
3種類味わって、どれが合う? と聞いたり、発言したりするのは、どうも邪道な気がしました。なぜなら、どれも美味しかったし、何より、この景色と一緒であれば、ワインの美味しさはどうしたって高まると思えるからです。
そして、ワインというのは、幸せな時間を過ごしながら飲むこと多いなあ、と思えて。ここ湯野浜での時間を、より一層、幸せな時間にしてもらいたいから、このテーマを選んだんだよね、とお伝えしてお開きとなりました。
◆トークセッションを終えて。
私がこのイベントに参加できたのは、阿部さんが大学の同級生だったご縁から。同じ志を持つ旅館の同志の皆さんと湯野浜温泉の未来に向けたプロジェクトを進めていること、またシェアキッチンの構想があるのを聞いたのは3年前のことでした。それはまさにコロナ禍突入の折で、お客さんがほとんど来なくなってしまった時でした。そんな中でも、弱音を吐いたりは一切せず、この活動を牽引する友人の姿には本当に頭が下がりました。だからこそ、今回のオープンがうれしいし、これからも多くのお客様を魅了する場所であり続けてほしいです。そして阿部さんに、年初からは強力な助っ人が登場。それがANA SHONAI BLUE Ambassadorの皆さん。昨年12月からこの地に赴任し、本業の傍ら地域活動に取組、この地の未来のために役立ちたい、という強い志を切江さんから聞いて本当に感動しました。コロナ禍で、CAの皆さんはどれだけ大変だったかわかりません。そんな中、会社が公募したプロジェクトに手を上げ、庄内への移住を決意した彼女たち。赴任後わずか6か月でオリジナルワインを、9か月で、ゆのはま100年キッチンのオープン。それ以外でもたくさんの活動を、地元の方々に溶け込み、一緒に明るく邁進彼女たちの活動を垣間見て、元気と勇気をたくさんもらった、そんな素敵な時間でした。この活動が、未来へと100年続きますように。