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岩手ガストロノミーツアーに行ってきました 牧場編
日本の宝、庄内イタリアン「アルケッチャーノ」の奥田政行シェフ。まだまだ知られていない東北の食の魅力と美味しさを体感するツアーを企画してくださり、私も参加者として、岩手北三陸・田野畑へ出かけてきました。感動の体験でまた必ず訪れたいと思える土地でした。皆さんにもその魅力を伝えたく、2編に分けて。
一行は、八戸駅に集合。北三陸方面に向かうには八戸が一番アクセスが良いそうで。バスに乗り込むと、奥田シェフのバスガイドでツアーはスタート。
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奥田さんの初恋は小学6年生の時の遠足で出会ったバスガイドさん。バスガイドの仕事に憧れ、もしシェフになってなかったらバスガイドになっていたと思う、なんてそんな小ネタも聞きながら、まずは北三陸にある「うに牧場」に向かいます。
1時間ほどで「うに牧場」が広がる、岩手県洋野町の北三陸ファクトリーに到着。まずは赤ちゃんうにが育てられているエリアへ。
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近年、環境変化で世界中の海藻の量と質が下がり続けているそうです。ここ北三陸も同様。うには海藻を食べて育つ生き物。だけれど、ウニはあるもの全て食べてしまうという習性もあるらしく、例えばタイヤが海底にあったらそれも食べてしまうらしい。うには4−5年で食べ頃になるようなのですが、赤ちゃんうにの時においしい海藻を食べて育っていなかったら、図体は立派だけど、中身スカスカの「うに」になってしまうそう。
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でも、海藻は減っているという現実。そこで代表の下苧坪之典さんが行政や研究機関とともに考えたのが、昆布漁で産業廃棄物とされていた海藻の端材を再資源化し、うにのえさにすること。もともと海にあった海藻をエサにするので、海を汚すこともない。環境にもプラスで美味しいものができるようになるなんて、最高のイノベーションですよね。
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下苧坪さんの、美味しいうにを育てたいという想いは、地域創生を原点とし、この取組で、日本の海産物全体のブランドと品質価値を上げ、環境負荷の少ない漁業のシステムを構築し、世界に広げていこうという壮大なビジョンにつながっていて感動でした。
いただいたうにのお味はというと。目を閉じて大事にたべたくなような上品な甘さと旨みがたっぷり。
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同じく、奥田シェフが体調崩れた時に薬代わりに飲むという、ふのり汁とともにいただきます。北三陸の海風は香りも風合いも心地よく。
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身体が一気に浄化されたような食後感とともにバスに乗り込み、次の牧場へ。
約50年も前から究極のSDGsに取り組む、岩手県田野畑の山地酪農牛乳さん。
日本で2軒しかない「餌となる牧草を100%自分たちで生産し牛に与えている」まさにグラスフェッドを実践する酪農家、吉塚公雄さん。
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吉塚さんに連れられ、アルプスの少女に出てくる景色のように美しい牧場へ。歩いているだけでスキップしたくなる心地よさ。
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でも、この景色ができるまでにかかる年月と努力は計り知れなず、それを思うと、一歩一歩を大事に踏みしめたくなリます。山林に牛を入れると生態系が変化、また餌となるシバが定着するには数十年、さらに山地傾斜に耐えられる牛を育てるには20年。つまり50年前からやっているけれど、安定した酪農を行える状態になったのは10年前位かもしれません。それまでの数十年の積み重ねがあって、この楽園のような景色が生まれているのだと実感しました。
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それにしても、広い。そして牛の数は思った以上に少ない。なんと、1.5haに1頭の割合しかいない、と聞いてびっくり。ここで暮らす牛さん達は幸せですね。
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牧場から戻り、牛乳とチーズを。
牛乳はサラサラとした喉越し。いわゆる牛乳臭さが全くない。ほのかな香りだけが鼻に残り、感動。そして、さらに驚いたのはチーズ。牛乳と生クリームを贅沢に合わせ、ピンク岩塩でコーティングした「白仙」というチーズ。爽やかな香りながら、口に入れるととろりとして芳醇な味わい。「ジャパンチーズアワード2020」乳酸凝固(ヤギ乳以外)部門で最優秀金賞を受賞したと聞いて納得。このチーズを作っているのは吉塚家の若き3代目、吉塚雄志さん。
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現地ではチーズを買うことはできなかったので、早速取り寄せて、熟成して、とろっとろになるまで待ってから、牧場の景色を思い浮かべ食することにします。
そして、ツアーはクライマックスとなるコラボディナーの会場、田野畑のレストラン「ロレオール」に向かいます。
後半のコラボディナー編はこちらから。