ただのラブレター
先日、パソコンのデータ整理をしていたらある音声データが出てきました。
何の気なしに再生ボタンを押してみると、懐かしい声で中国語が流れてきました。
第一声は、「幸福的秘诀」
日本語で「幸せの秘訣」という意味です。
それは、私が大学生の頃に中国語の弁論大会(原稿を用意してスピーチを順番に発表していくもの)に出た際、お世話になった先生が練習用のお手本音声を録音させてくれたものでした。
「幸せの秘訣」というのは、私の発表タイトルです。
たしか、当日会場に行くと発表順が一番最後で、他の学生が国際関係や留学経験、文化交流などについて話すのを聞きながら、私は「よくこのゆるっとしたタイトルで原稿通ったな」と思ったのを覚えています。
「有人说,幸福是人人追求却又难以得到的东西,但是我认为获得幸福其实并不难,谁都做得到!我们只要明白一件事,就一定会幸福快乐」。
「幸せはみんなが追い求めるものだけれど、手にするのは中々難しいのだといいます。でも私は、幸せを掴むのは実は決して難しいことではなくて、誰にでも出来るのではないかと思うのです!たったひとつのことだけを理解出来さえすれば、きっと幸せいっぱいになれます」。
こんな言葉からスタートしたスピーチで私は、幸せの鍵を握るのは「愛」なのだと述べています。
その中でも、生活の中にたくさん溢れている「小小的爱(かけらみたいに小さな愛というニュアンスを込めていました)」を感じ、この星から受け取ることができるかどうか。それが最も大切なのだと。
友情や家族、パートナーとの間に生まれるような、よく言う『〇〇愛』ばかりが愛ではなくて、もっともっと生活の中に愛は溢れている。
私たちの目に映る作られた物達の裏に生きる誰かの想像力、美味しい野菜を作る人届ける人、会ったこともない誰かの痛みを悲しみ祈りを捧げられる人、その人が背負ってきた痛みのおかげで私に手渡される温かい言葉達、毎日私が日向に植物を動かし水を与えるおかげで今日も元気に生きている植物、もらい物のサンキャッチャーが拾った朝日。
もっと。もっともっと。きっともっとあるから。
隠れるのが上手な「小小的爱」を出来るだけたくさん。
抱え切れないくらい抱きしめて、たまに見せびらかしたりなんかしながら生きていこうよ。
私は、大学に入って初めて死に物狂いで学んだ中国語で、人前でのスピーチなんて日本語でも絶対にやらないのに、それでも敢えていつもより大きな声で、こんなことを伝えたかったのだと思います。
国籍も年齢も性別も、何も関係のない「幸せの秘訣」。
世界は、私たちは、こんなにもダメダメだと重々理解した上で。
それでも自信を持って、この星やこの星で生きるすべての人に、私はラブレターを書いたのだと思い出しました。
それから私はスピーチの最後に、「キラキラと美しい宝石のかけらのような『小小的爱』は、時を超えて私達の生活に現れる事もできるのだ」と話しています。
その自分が書いたラブレターを優しく強い声で読む恩師の声で、まさに時を超えて幸せを受け取れるなんて、何年もかけて実証した形になりました。
もしあなたが、この小さな愛を見つけるのが上手な方なら、ぜひ誰かにその見つけた愛をそっと差し出してみてください。
できる時だけでいいから。
小さな愛って人にあげると増えるんです、不思議だけれど。
もしあなたが、この小さな愛を見つけるのが苦手な方なら、気が向いた時にそっと私に教えてください。
その時私が持ち合わせているとっておきの小さな愛を、もれなく差し上げます。
きっと温かい物だと思います。
多分ふわふわだと思います。
明日もきっと、この部屋はこの国はこの星は、小さな愛で溢れています。
だから今日もゆっくり休みましょうね。
今週も読んでくださってありがとうございました。