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病とは

バスが苦手な友人がいる。いわゆるパニック障害というものの名残らしい。名残といってよいのか分からないが、乗れなかったものが一人で乗れるようになったというのだからだいぶ克服できたと本人は言っていた。そんなわたしも一度だけパニック状態に陥ったことがある。それは駅のホームでのことであった。将来のことをぼんやり考えていたら、どうしようもない不安に襲われ手足が痺れ始め、呼吸が苦しくなり、冷や汗も出てきて、急にお腹が痛くなり近くのトイレに駆け込んだが、このままひとりでは本当に誰にも見つけられない、助けを呼べない、と考えすぐに出てきた。ここは海外、日本語が通じないのでもしかしたら自分の体調すら伝えられないかもしれない、とまさかのことを思い、数少ない友達二人にlineした。そこまでして、ふと我に返る。怖い。なにが私の体に起きているのか想像もつかない。発作が収まるのを待つこと20分、ようやく一人から返事が来た。友人の心配をよそにわたしはもう既に落ち着いていた。奇妙なことに、その間に「ここでは本当にだれも助けてくれないのだ」と考えることで逆説的に妙に冷静になっていたからだ。絶望を通り越して、無の領域だった。絶望なんかしていたって誰も来ない。完全に独り。救急車ですら、あのパニックの時に呼べるかわからない、ましてや保険が効かないときた、一回呼んでうん十万かかるらしい。ばかばかしい。人に頼るもんじゃない。そう思ったら落ち着いていたのだ。その友人にバスの車内でこの話をした。話し終えて、不思議だよね、と言った。すると友人はなにもおかしなところはない、とでも言いたそうに、やっぱり、とだけ言った。わたしはその違和感に触れていいものかわからず、そそくさと話題を変えてしまった。



どうも〜