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それぞれにできることを、できる場所で。あの日のことを。

先週、写真家の石井麻木さんの写真展「3.11からの手紙/音の声」に出かけてきた。

石井さんは、東日本大震災から現地に通い続け、写真を写し続けている。
あの日のこと、あの日からのことを伝えるために、写真にことばを載せていて、写真だけではわからないその背景を届けてくれる。

東日本大震災を福島県喜多方市で体験した私も、展示を見て、いっきにあの日に思いが引き戻された。

そのときのことを書いたnote。

◇◇◇

実は、私はあれから何回か福島県に足を運んでいる。
そのことは、こちらでは書いてこなかったのだけれど、石井さんの展示を見てこちらにも残しておこうと思ったことがあったので、書くことにした。

忘れないためにも。

2019年10月の台風19号。

郡山市在住の仕事関連の友人から、伊達市にある実家が浸水したと、SNSでの投稿があった。
ニュースでも阿武隈川流域の被害状況が報道されていたけれど、その場所は報道対象にならなかったため、皆に知ってほしいとのことだった。

友人の実家には、友人の両親、友人の弟とその妻、4人が住んでいた。
実は、30年前に阿武隈川が氾濫したときに、床上浸水になったことがあったと伺った。
あれから時が経ち、ご両親も年をとって、逃げるのに時間がかかるであろうと瞬時に判断し、今回は危険を感じてすぐに避難所に避難したため、全員無事だったそうだ。

友人の報告は簡素で、多くを語っていなかった。
「できることがあったら言ってください」というコメントが続く。
そこに、丁寧にコメントを返している友人がいた。

善意を届けたり受け取ったりすることのやり方に正解はないから、私自身はどうすればいいのかがわからずに戸惑った。

手伝いに行くのがいいのか。
いやかえって気を遣わせてしまうのではないか。
何が必要かを聞いて、送り届けるのがいいのか。
いや断られるだろう。友人はそういう人だ。
被害が大きいときは、どこまで補償されるのだろうか。
全くわからない。

友人はSNSの情報を公開していたから、他の共通の友人たちも投稿を見ている可能性が高い。
私は自分のSNSで募金を募ることにした。
個別に呼び掛けることは避け、私の投稿を見た人で、一緒に届けたいと思う人がいれば、との思いだった。

困ったときにいちばん役に立つのは、人力とお金だということを、私自身が病気でピンチだったときに感じたからだ。

結果、複数名からお金をお預かりすることになった。
友人のことを直接知らない、私の別の友人たちからも「届けてください」との要請があった。

友人には受け取ってもらえるかがわからなかったけれど、とにかく現地に赴くことにした。
台風の被害から約1ヶ月。
現地のコーディネートは、別の友人が行ってくれた。

コーディネートしてくれた友人が、伊達市~本宮市~郡山市を案内してくれた。

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増水し、流れてきたビニール袋が対岸の木の枝に無数にぶらさがっている

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お店は修繕中だった。看板の下まで浸水したそうだ

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この奥が友人の実家だ
処分する必要なものを集める場所になっているようだった

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災害ゴミは、こないだまで生活を彩っていたものたちだ
片づけにきている方が、この地区は2階の床上まで浸水したこと、全員が避難したことを教えてくれた

◇◇◇

この日の夜に、友人に募金を渡すことができた。
ご実家のご家族は、3か月間のみ無償の仮住まいが決定したそうだが、その先の住まいは自分たちで探さねばならない。
一部の補償はあるだろうが、相当の出費と労力がかかりそうだった。

家族で無心で片づけをしていたけれど、地元の高校生がボランティアで片づけを手伝いにきてくれたときには、本当に心強かったとも聞いた。
知っている人が手伝いにきてくれることもありがたいが、やっぱりどこかで遠慮したり気をつかってしまうのではないか、とも教えてくれた。

私は最後までこの支援のしかたが最善だったのかがわからない。
もっと適切なやり方があるのかもしれない。

◇◇◇

「被災地」というのは私たちの近くに無数にある。
それくらいに自然災害がたくさんある。

思いのある場所にいちど出向くのもいいし、近い場所に継続して通うのも支援が続いていいように思う。
重いものを運ぶ以外にも、たくさんの支援の方法がある。

東日本大震災から9年が過ぎても、まだ支援が行き届かない地域があるように、その他の被災地にも、まだまだできることがある。

写真展にでかけて、忘れてはいけないことを思い出した。
石井真木さん、会場でお話をしてくださったボランティアの皆さんにもきっかけをいただいた。

それぞれにできることを、できる場所で。

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2019.11.12 郡山の夕景。東京に帰る前に。

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汐見英里子
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