音楽祭の夜Alexandra Dovgan
今年の夏は
世間はオリンピックに沸いていたが
フランスに住んでいるというのに
一度も観戦せずに
気づいたら終わっていた。
興味がないわけでは決してない。
自由を愛するフランスらしすぎて
良くも悪くも話題になった式の様子や
メダルの数などは
後からチェックしていた。
しかし何せ我が家にはテレビがないので
つけたらやっていた、ということがなく
単に見るタイミングを逃したのだった。
オリンピックに対する
周りのフランス人の反応は様々で
全く観ていないという人もいれば
パリの会場まで観戦に行ったという
熱心なスポーツファンもいた。
セーヌ川の流れるパリ市内を舞台にしたところに
フランス人の柔軟さ、誇りを感じた。
懸念されていたテロもなく
無事に終わって
とにかくホッとした。
さてオリンピックは見逃したが
夏の楽しみ、音楽祭は外せない。
例年通り今年も
ラ・ロック=ダンテロン国際ピアノフェスティバルへ
足を運んだ。
まずは
ロシアの天才少女アレクサンドラ・ドヴガンの
グリーグのピアノ協奏曲!
巨匠ソコロフが推す神童として
世界中で活躍する彼女の演奏は
去年初めて聴いた。
10代とは思えない
既に完成された深い音楽性に唸ったが
今年はさらに凄かった。
ヴェルビエ祝祭室内管弦楽団による
ハイドンの交響曲で
コンサートは幕を開けた。
この日の数日前に、アレクサンドラ譲は
彼らとスイスのヴェルビエ音楽祭で共演していたのだ。
世界中のオーディションで選ばれた
30代未満の音楽家で成り立つオーケストラ
ヴェルビエ祝祭管弦楽団通称VFCOの中から
さらに選ばれたメンバーが
この室内管弦楽団だそう。
普通は座っている楽器の殆どが立って演奏していて
躍動感があり素晴らしかった。
そしていよいよ17歳のスター
アレクサンドラ・ドヴガンが登場して
会場がさらに盛り上がる。
同オーケストラによる伴奏で
グリーグのピアノ協奏曲が始まった。
最初の和音、そして流れるような旋律に
すぐに息を呑む。
なんという迫力、なんという繊細さ‥‥!
決して飾ることなく無駄のない研ぎ澄まされた音楽を
この歳で実現しているなんて!
その後に
ブラームスのガボット
ショパンのワルツというロマン派尽くしのアンコールを
サービス。
ショパンは、決してくどくなくサラリとしている中
思いがけない左の旋律を歌ったりと
センスが光っていた。
昨年も貰ったのに、娘がまた欲しいというので
サイン会へ向かう。
近くで見たアレクサンドラさん、
目力の強い美しさが極まり
まだあどけなかった昨年より
ずっと大人っぽくなっていた。
こちらは2007年から同オーケストラの指揮者を務める
ハンガリー人の
Gábor Takács-Nagy氏(カタカナ表示がわからない!)。
とっても気さくでサインも可愛い。
コンサート前には裏から
ウオーッという雄叫びが聞こえたが
これは、まさに
オリンピック前のスポーツ選手たちのように
円陣を組んで叫ぶのだそうだ。
演奏にも若い音楽家たちと
ベテラン指揮者のチームの連携、信頼感の厚さが
感じられた。
サイン会の間も
アレクサンドラにおいで、と声をかけて
ファンの人たちと一緒に円陣を組んでみせていた。
セキュリティも何もなくオープンだ。
なんてお茶目なの!
素晴らしいオーケストラとソリストの共演を
堪能した夜だった。