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傍観者たち

ただいま俄か一人暮らし中だ。
娘のピアノレッスンのため、
そして家族に会いに、
夫と娘はパリとボルドー方面へ1週間ほど
旅行に行っている。
秋休み前ではあるが
ホームスクールの娘と
自由業の夫なので融通が効く。

私は猫と留守番を買ってでた。

ハロウィン前の我が家、ひとり暮らし中に
Alexa がハロウィンジョークを呟くとちょっと怖い

その間、仕事をしたり本を読んだりピアノを弾いたり
ここぞとばかりに片付けや掃除をしていたら
あっという間に半分が経った。

今日は日曜日。
親しい日本人の友人2人を家に呼んでランチ、
明日は仕事、その翌日には
チェリストとのリハーサルという予定もあり
結局ひとりでいる日は1日もない。

なんといっても
家には猫のパールがべったりくっついているので
孤独感はゼロである。


モスグリーンの愛車

そんな中、時間を見つけては
サイクリングをしている。
電動自転車を買ってもうすぐ2ヶ月。
すっかり虜になり230kmも走った。

南仏の田舎に移り住んで17年になるが
これほど自然を満喫したことがあっただろうか。

うちの周りには
歩いていくには遠くても
車で行けば見逃してしまう
宝のような景色が拡がっていたのだ。

この道をずーーっといくと城がある

昨日、猫と共に早く目が覚めた。
通勤にはまだ時間がある。
思いついて日の出を見にいくことにした。
真っ暗な中を運転するのは気が引けたので
朝食をとって待っていると東の空が明るくなってきた。
ガレージから自転車を出す。

丘を下ると空がどんどん明るくなってきた

そして息を呑んだ。
そこには
ちょっと言葉にできないほどの静けさを纏った
先客がいたのだ。


羊に遭遇することはよくあるが
いつもウロウロと草を食べたり
子羊が遊んでいたりする。
こんなふうにじいっと座っている羊たちを見たのは
初めてだった。
夜は小屋で寝ているはずだし
羊飼いの人々は
毎朝早く起きて羊たちを外に出すのだろうか。
毎日、朝日を浴びるのが彼らのルーティンとか?
あまりに穏やかな表情や風体に
私の心も癒された。

以前読んだ本に、
犬と散歩していると世の中に参加せずに
傍観している感覚がある、
孤独ではあるが決して寂しくはない不思議な感覚、
ということが書かれていて
(直訳すると「雨に濡れた後の彼の匂い」という本だった)
なんとなく胸に沁みた。


赤ちゃんだった娘とベビーカーや抱っこ紐で散歩している時もそういう感じがあったが(いつも犬猫と比べているな)
自転車に乗っていると、この感覚をさらに強く感じる。

自分だけのスピードで周りの景色が変わっていって、
その自由さが本当に心地よい。
これが車だとそうはいかない。ルールだらけの車道という世の中に奇しくも参加して、だいたい何かヘマをしていないか、迷惑をかけていないかとヒヤヒヤしている。

歩いていて知り合いに会ったら何か喋らなきゃと思うが
(私は人の顔を覚えるのが上手くない、
特にこの辺りの南仏男、スキンヘッドが多すぎないか?)
自転車ならボンジュールとニコッとして
去っていけばいい。最高である。


向かいの空には月がうっすら

おはよう

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