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ピアノコンクール Pianissima 2


いよいよコンクールが始まった。

娘がピアノコンクールを受けるのは2回目だ。
でも前回はコロナ禍でビデオ審査だったため
入賞者コンサートには参加したものの
審査は何度も撮り直したビデオでの参加だった。

今回は舞台、一発勝負だ。
緊張は計り知れない。

会場に座っていた私から
舞台袖にスタンバイする娘が
見える。

アナウンスで彼女の名前が呼ばれると
私の心臓も、体から飛び出るかと思うほど
ドキドキと波打った。

ゆっくり歩いて舞台に出てきた娘は
小さな体で椅子に座った。
アナウンスをしたムッシューが足台を設置してくれた。

なかなか落ちついて、
課題曲であるモシュコフスキーのエチュードを
慎重に弾きはじめた。

ちょっと音が掠れる箇所があったけれど
よく歌っていた。
最後の和音を長めに伸ばし、手を膝に置く。

椅子を直して集中している。
自由曲、ショパンの幻想即興曲を弾くためだ。

10歳を迎えた娘は
今、なかなかの反抗期を迎えている。
両親ともピアノ弾きなのだから
息が詰まることもあるだろう。
衝突することも多々ある。

けれどこの旅に出てから
私の気持ちはずっと落ちついていて
娘のピアノの心配は何故か全くしていなかった。

結果はともかく、長旅をして舞台を踏む、
この経験がきっと宝物になるだろうと思っていたからだ。

フランスでは数週間前から
年金制度改革のための
大がかりなストが行われている。
交通にも影響が出ているので
旅行にはかなりの不安があった。

そのストにも負けずに
方向音痴のママが
迷わずに会場に来れたんだから
もう大丈夫!
あとは好きに弾いといで!

と言うと、ママは呑気で良いね、と苦笑していた。

頑張れと言うのは簡単だけど
実行するのがどんなに大変か、
それだけは分かっているつもりだ。

かなり集中している様子で
いつもより気迫溢れるショパンの後半にかかってから
あらー頑張ってる、戦ってるなあと
涙があふれて止まらなくなった。

娘の演奏後は
同じモデラート部門の他の子達、そして3つの上の部門、
審査を待つ間は前回の受賞者によるコンサートと
6時間近く音楽を聴き続けた。

セミプロ部門では
14歳のルイロング・リーさんのあまりに完璧な演奏に
娘も私もびっくり、度肝を抜かれた。
彼女のことは噂に聞いていたけれど
本物の天才だと思った。


いよいよ審査発表!

大人も子供も部門ごとに
参加賞、3位、2位、1位と呼ばれ
次々に舞台に上がる。

娘もありがたいことにモデラート部門の1位を頂いた。


おめでとう!



巨匠カツァリス氏と!感激!!

日本には37回行ったよ!
日本でどうもありがとうと言われたら
僕がなんて答えるかしってる?

と仰るので
ノン‥と答えると
ドレミファソラシドーいたしまして!
ドシラソファミレドーいたしまして!だよ!!

とニコニコ。
なんてお茶目なんですか!!


こうしてコンクールが終わり
2人で歩いてアパートへ帰った。
クタクタに疲れていたのに
うんと幸せだった。



翌日はストライキで路面電車がなく
リール駅まで2キロ、
スーツケースを引きながら歩き
なんとか列車に乗り込んだ。

これで母娘の北への旅もおしまいです。
もうすでに懐かしい!


さよなら北の町、ありがとう!



















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