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『5つ星をつけてよ』奥田亜希子
Spotifyで聞き流しをしている、真夜中の読書会、おしゃべりな図書室で紹介されていた本。
タイトルが、頭に残っていて手に取ってみた。
6つの短編集。
身近なような、ふわふわとして非現実のような。
不思議なリアリティと、心地悪さが共存した全体感を持った物語たち。
「キャンディ・イン・ポケット」
沙耶な私と、椎子。通学と、のど飴。
美しさへの憧れなのか、恋心のような一方的な気持ち。私だけが思っていて、それでよい。絶対の距離と絶妙なバランスを持った距離。
最後に、少しだけ。
偶然が重なったところに、見えてくる、本当の距離。
苦しくも、美しさのある物語。青春時代の、一時に感じた、同年の同性への不思議な感情の1部が書かれていたような感覚がした。
「ジャムの果て」
ジャムを作る母。母は子どもたちにジャムを送る。ジャムだけでなく、おかずも送る。
私の味。子どもを育てた私。誰でもない私の子どもたち。私。私。私……
なんとかされたい、わたしの気持ち。私を形づくる、私以外のものたち。
特にはじめの2つの物語は、私を、居心地の悪い心持ちにさせ、この後に続く物語の全体的な印象に影響を与えた。
気味の悪い自己と外側の距離。自分を自分で肯定しない人。出来ない人。
ジリジリと追い詰められるような他人との距離、冷めているのに、どうしても離れられない家族との距離。
物語に出てくる、食べ物や、食事の描写は、"生活"や"生きること"の生臭さよのうなものを感じさせた。
自分はどうだろう。
他人との距離に、何か理由をつけて、複雑にさせていないだろうか。
心地の良い、自分の心の居場所を、自分で作れているだろうか。
そう思わせる物語たちだった。
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