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価格改定にまつわる雑感。


今回世の中の御多分に洩れず私たちも値上げをしなければ耐えられない境地になりました。


すごくフォーマルな形の値上げの「お達し」が百貨店や商業施設の至る所にPOPとして書かれていたり、ウェブサイトのECページにはニュースで表記されているブランドが多いけれど、なんとなく、その一方向のアナウンスメントにちょっと違和感があって、私はこのnoteに自分が見てきた値上げまでの景色とか、モヤモヤがあったこととかを書き記したいなって思った。

まずそもそも、値上げはしない方がお客様は当然だけれど、私たちもできるならばやりたくないです。なぜって価格の変化に合わせて値札やタグやシステムのデータも改変しなければならず、無茶苦茶面倒くさいからです笑。

物流費の上昇くらいだったら何とか今のままでやっていこうって思っていた。でも、パンチが効いてるのが為替です。1ドル130円という世界が現実になった時に、起業当初は115円とかで全てを計算し、そこから利益率の計算、みんなの給与はこれくらい、、、っていう感じで組んでいたものが根底から見直しをかけないとならなくなりました。

更に、最後の決定打となったのが、先日バングラデシュに行った時。私たちの工場のみんなの給与って国内では非常に高い水準ではあるんだけれど、「米が高くなった」「じゃがいも高い」「ガソリン高いよ」そんな生活の中での物価上昇インパクトがスタッフみんなと話をするミクロな会話でもたくさん出てきました。

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時折、工場にいると私たちの革を作ってくれているなめし工場のオーナーが「えりこ、久しぶりだな!」と新規開発の革を持ってきてくれました。
やっぱり彼も、なめしプロセスに使う設備や薬剤の高騰、それらをイタリアから輸入しているのですが、物流コストの上昇などによって、全体的に革の値段をもう少し引き上げて(我々の革はおそらく国内で最も高いのですが汗)もらえないか、と申し込まれるような場面もあった。

私は2年ぶりに訪れたバングラデシュで、私が遠隔で感じていたレベル以上のインフレ影響を至る所で感じた。

そして、今、私たち経営者が行うべきDecision Makingとは何なのか、と自問自答した。

将来への漠然とした不安を抱えながら、私たちのミッションである、「世界に羽ばたく物作り」は決してできない。職人のみんなには、創意工夫の世界の中に、どっぷりと浸かってもらって、匠の技術を伸ばすことに集中してもらいたい。

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それが今やるべきことなんだと考えて、工場長のマムンさんと相談しながら、自社工場創業以来最も高い給与引き上げを4月に行なった。それはもちろん彼らの日頃の結果に対する評価がベースであるけれど、そこに外部環境からの要請を十分に加味した形だ。

みんなが大喜びで、中には涙をしている人もいたんだけれど、個人的には
「ふうー」って工場の椅子に腰掛けながら結構頭を抱えました。

「“世界の流れ”って強いなー」って私は感想を持った。


起業した当初、弱小企業だったときは(まあ今も弱小ですが笑)世界でテロやリーマンショックが起ころうとも、全く影響を受けなかったんですね。

当たり前な話しなんだけれど、そんなことより新しい店を構えた、とか新しい製品を出したとか、工場から裏切られた!みたいなことが破壊力抜群だったから、マクロで何が起きているかなんて、(こう言ったら語弊があるかもしれないけど)”知ったこっちゃない!こっちはいっぱいいっぱい!!!”って思っていた。

でも会社が16年経って、今世界の流れがどうなるかに無茶苦茶敏感になりながら仕事しなきゃいけないのって、すごく変化したなーって漠然と感じていて、それが同時にすごくストレスでもある。

通常の経営フェーズに入っているだけの話なんだけれど、私は「頑張ったら頑張っただけ報われる世界」がとても好きで、そうじゃない領域で頑張りが台無しになるのが本当にやるせない。

コロナも勿論そうだったんだけれど、こういう企業努力の範疇を超えた情勢変化とかコストの上昇って、なんかもう行き場のない無力感そのもの。
きっと多くの人がそう感じている。

そしてどこかで、「頑張ったってさー、時代がどうなるかわからないし、またコロナになったら今準備していることって吹っ飛んでしまうんだよね」という恐れとある種の諦めが心で1%は生まれていることを私は否定しない。

私はそんな少しの憂鬱を常に抱えている状態の自分が嫌だなあとここ半年とか、いやもっとかな、感じていた。

でも、そういう時って私は動くことよりちょっと様子見をする。本を読んだり、ネットで情報を取ったり、人の話を聞く。そんな風にしながら、周りをきちんと見渡していると、そうした環境変化をチャンスに捉えて、ぐぐぐっとスマートに方向転換して行き先を変えたり、全然違うところから解決策をもってきている人たちもちゃんといることに気が付く。

そして思った。

”ああ、自分の行き詰まった脳みそが一番問題じゃないか。

コントロールできないことに嘆く前に、コントロールできる範疇で荒波をさざなみに変えようと努力すべきだろ。”って。

値上げは、その波のコントロールを行うために、私たちが避けられない、そして行うべき最重要のアクションだった。

航海を続けていれば、波は再びくるんだと思う。けれど、波によって船を転覆させたり、船に乗ってくれているみんなの安全が損なわれることは避けなければならない。

そしてもっと大事なことは、どんな波が来ても、ずっと見続けていた目的地=ブランドのミッションを決して見失ってはいけないって思う。

本質的には、値段に対してサプライズがある状態を常に、如何に、どんな時代も、作り上げられるか。そしてそれを”途上国”から行う。

挑戦的な目標は、このご時世になって、更に挑戦的になっているなあって個人的には思うんだけれど、やっぱり外部要因を持ち出すのは最後の最後にしたいんだよね。なんかもうそこは個人のキャラかな。真っ先に外部要因を持ち出す人間にはなりたくない。カッコ悪いでしょう。ああ、なんか違う話題になってきちゃった笑。


最後に、私は思うんだけれど、最終的には自分が経営者であっても、デザイナーであっても、何者だろうと、一消費者として、たとえば3万円でお得感があったものが32000円になった時にどう思うかってことに素直でなきゃいけない。

「むむ、私だったらちょっと高いと感じる」そんな自分の本音はやっぱり無視しちゃ船が変な方向に行くなあって思う。

だから、その本音がうずいている商品については、機能や品質をアップデートする試行錯誤をしていきたいなと思っていて、まさに昨日もそのサンプルを作っていた。

逆に、正直いうと、私は「こんなに大変な作り方やっているのに3万円なの?!」と私の意思とチームの意思が違う時は、値付けに対して憤慨してきた経緯もあって(笑)、そういうプロダクトは改めて適正価格を設置したいなと思っている。(むしろ、そんな憤慨商品の方が多かったかもしれないか・・・・苦笑)

いずれにしても、6月から秋にかけて価格改定を順次行うのですが、”価格も含めて美しい商品”をこれからもストイックに追い求め、手を動かしていきたいと思っています。

以上、価格改定にまつわる雑感でした。書いたらちょっとスッキリしました。ありがとうございます。



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