世界への自己紹介。 NEWSWEEK国際版に掲載!
本のことが、一旦トーンダウンした今週、なんとBIGなニュースが飛び込んできた。
「ついに、印刷が上がりました!!」
そう言って、広報のスタッフが持ってきたのが、NEWSWEEK国際版だ。
昨年末、私たちの会社に先方からこんなメールが届いていた。
「日本を代表するファッションブランドの一つとして、是非紹介したい。途上国の素材と職人の技術を、日本のデザインエッセンスに掛け合わせた唯一無二の存在であるマザーハウスを、掲載したいと考えています。購読者数は世界で4600万人です。英語に翻訳され、世界中に出版されます。」
「え・・・・・。」
全く予想もしていない不意打ちに、鳥肌がたった。
広報のチームが、早速ざわざわと動き始めてくれて、メールをもらってから1ヶ月後に、秋葉原にある私たちの事務所に、背が高く、スマートな雰囲気の海外からの取材チームが来てくれた。
びっくりするほど私たちのことをよく調べてきてくれて、取材は英語と日本語のミックスで、楽しくあっという間の時間だった。
そう、ここまでは「やったー!」とか「楽しい!」とか、そうしたポジティブな感情しかなかった。
しかし、いざ、原稿が上がってきた時に、タイトルにやや違和感を抱いた。
そして、改めてこの機会の価値と、大きさを痛感した。
「これは世界への自己紹介になる最初の記事だなぁ。生産地のみんなも読める最初の記事。どんなタイトル、内容であるべきなのか、、、これは難題だ・・・。」
先方が取材後に書いてくれた最初の原稿を読むと、いわゆるファッションブランドの一つとして、私自身のミニマムなデザインや身体を考慮した機能を、「用の美」のデザインとして、日本的なデザイナー色を非常に強く押し出してくれたものだった。
それは、とても光栄なことだと感じたんだけれど、私は、あくまで、デザインというのは、素材が光り、職人さんの技術がその上に踊り、初めて調和したデザインの意図が、ストレートにお客様に「感じられる」ものだと思っている。
それを途上国のみんなを主人公にしながら、どう言葉で説明し、日本の紹介ページに掲載してもらえるかを、悶々と悩み始めた。
「なんだか、説明が難しいブランドだなぁ・・・」
と、自分のことながらすぐに頭を抱えてしまった。
そこで、顧問として最近参画してもらっている編集家の松永光弘さんの力を全面的にお借りして、全体の構成を本当にまるっと(笑)躍動感を持ちながら、美しい構成に整えていただき、さらに、私が信頼している社内のアートディレクターの立石と、ページのサイズに合わせて、掲載する商品の画像をスタジオで撮り直す、という、フルカスタマイズな修正希望案を作って、本当に失礼だと思いながらも、先方に返送した。
内心「これは、流石に怒られちゃうかな・・・。」
とビクビクしていた。
しかし、なんと全面的に受け入れてくれ、なんと1ページにデカデカと記事を掲載してくれていた。
さらに、当初話があったページ以外にも、私たちの商品をドーンと掲載してくれたのだった。
一部だけれど、日本語訳をここに掲載。
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「MOTHERHOUSE:文化の出会いから生まれた高品質な革製品」
MOTHERHOUSEは、日本的なデザイン感性と途上国特有の素材、熟練した職人の手仕事という異色の掛け合わせで、高品質のレザーバッグとアクセサリーを生産している。日本国内のみならず海外のファンにも愛され、プロダクトを通じて発展途上国が持つ魅力と可能性を提示し続けている。
日本のバッグとアクセサリーのブランドMOTHERHOUSEは、文字通り、発展途上国と“ともに”革製品を製造している。
社長であり、デザイナーである山口絵理子氏は、自ら途上国を訪れて、その国が世界に誇るべき素材を見いだし、独自のデザインを施しつつ、現地の職人と“ともに自社工場で”高品質な製品を生み出している。
MOTHERHOUSEの製品は、「ものづくりにおける日本と発展途上国の真のコラボレーション」であると彼女は強調する。
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私は、“真のコラボレーション”という表現がとっても気に入っている。
“コラボ”ってファッションの業界ではとても最近多いけれど、私の場合はちょっと違う。
私がコラボしたい相手は、いつだって世界の発展途上国で、その目的は、彼らの可能性があまりにも大きく、素敵であることを伝えるため。そしてコラボの仕方も工場作り、素材作りからなので、本当にディープ。
そんな一風変わった個性が文章からストレートに入ってきて、「ああ、これこれ!!」と、とても嬉しくなった。
表紙がたまたまインドのモディ首相だったことも印象的で、一冊を自宅に持ち帰った。
子どもを寝かしつけたあと、ベッドで横になりながら、ぼーっと眺めていたら、なんだか、たくさんの想いが湧いてきて、一人で胸がいっぱいになり、泣きそうになった。
「途上国から世界に通用するブランドを作る」と自分自身が2006年に掲げた目標は、とても遠くて、進んでも、進んでも、夢に近づいているのかが分からない18年間を過ごしてきた。
それは、目標が、売上規模や、店舗数という数字で表現されるものではないからだった。
でもこうして歩んできた先に、国際的な雑誌に掲載していただけるまでになったことは、私にとっては、とても大きな出来事だった。
本当に大変な手仕事を徹底してやり続けてきてくれた職人のみんなと、日々、お客様のことだけを考えて店頭に立ってくれるみんな、そしてオフィスで作ることから届けることまでを必死に設計してくれているみんなに、感謝でいっぱいだった。
そして、一番たくさんの想いが湧いていたのが、このページの上段に載せたプロダクトたち。
それらは、マザーハウスを支えるヒット商品たちだった。
どれも、テイストやスタイル、素材も全然違うのに、どこか統一感があるのは、デザインしてきたのが私で、作ってくれたのがバングラデシュの職人のみんなで、作った場所が、私たちの「自社工場」だから。
そんなプロセスの一貫性は空気を作り、デザインの多様性を包み込むものに、気がつくとなっていた。
素材のやり取り、型紙の試行錯誤、やり直し、そしてやり直し。
サンプルルームの疲労の雰囲気と、ノリだらけになった自分の手と、最後のファイナルサンプルが出来上がった張り詰めた夜の工場の世界が、思い出される。
いろんな「向こう側」を思い出していたら、たった一枚のページだけれど、私には18年の集大成がここに宿っているように思えた。
工場長のマムンさんに早速LINEで記事を送ったら、こんな言葉が返ってきた。
「It’s another miles ahead.」
これからも数マイル先をみんなに見せられるように頑張ろう。
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書店では、5月下旬ごろより販売開始されます。