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DEAN & DELUCA カフェ 丸の内 | マイフォトストーリー
こんにちは。金融機関で働きながら、日々の気づきを発信している「エリンキ」と申します。10年以上前になりますが、山登りをきっかけにミラーレス一眼と出会いました。最近は、旅行先の出来事や草花の魅力を写真とストーリーで仕立てることに夢中です。
フォトレッスンやライティングスクールで新たな視点を学びながら、2024年にはKindle本を出版。仕事と趣味の境界線をブレンドして、少しずつ自分の世界を広げています。
この度、写真家の横田祐一さん企画の「#マイフォトストーリー」に参加させていただくことにしました。
フォトライターを目指す私の新たな挑戦として、以下のストーリーをお届けします。
DEAN & DELUCA カフェ 丸の内 | マイフォトストーリー
12:10 窓の外には灰色のオフィスビルが並ぶ。
「やっと終わったぁ」
リモート会議と研修を終え、背筋の力が抜ける。
「今日は外で食べよう」
ロングのダウンコートをギュッと小さく抱え、
オフィスビルを後にした。
ガラスドアの上部に刻まれた
DEAN & DELUCA の文字を見上げる。
店内に足を踏み入れると、
さまざまな言語がBGMのように心地よく響いている。
明るい陽光に満ちた開放的な空間
コーヒーの香りと色とりどりのデリが並ぶガラスケース
窓際のソファー席にReservedプレートを置き、
高い天井を見上げて深いため息をつくと、
胸の奥のもやもやが少しずつ晴れていく。
これから、自分を取り戻すための時間を過ごす。
仲良くしていた年下の同僚Tちゃんの異動が決まった。
私より後に来たのに、先に次のステージへ進んでいく。
「わたしの方が早く異動すると思っていたのに」
ポツンと置き去りにされたような気持ちになる。
初めてTちゃんとこのカフェを訪れたのは3年前の春のこと。
「お話ししたかったんです!」と
嬉しそうに誘ってくれた彼女との思い出が、
まるで昨日のことのように蘇る。
「今度はご飯を食べに行こうね」と話した日が最近のようだ。
「次の部署でも頑張ってね」と送り出した言葉とは裏腹に、
スマートフォンに映る自分の表情は曇っている。
比べる必要などないはずなのに、どこか焦りを感じていた。
「わたしはこれからどこへ向かっていくのだろう」
先に運ばれてきたカフェオレを手に、ゆっくりと店内を見渡す。
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リモートワークに励むフリーランス
ランチミーティングに興じる外国人たち
洗練されたスーツ姿のOL
誰もが自分なりの道を進んでいる。
「お待たせいたしました」
ぼーっと窓の向こうに広がる青空を眺めていると、
カレープレートが運ばれてきた。
色とりどりのサラダを一口ずつ味わううちに、
心が軽くなっていく。
「おいしい……」
ソファに身を預け目を閉じると、3年前の自分が浮かぶ。
「大丈夫、わたしは何にも変わっていない」
変わったのは周囲の環境と、少し増えた責任だけ
どこに辿り着いても「わたしはわたし」のまま
ここは、わたしの原点のひとつ
そんな心の居場所を、少しずつ増やしていきたい。
DEAN & DELUCA カフェ 丸の内
2003年、日本第1号店としてオープン
訪れるたびに、自分の原点を確認できる特別な空間