『NEWTYPE〜ニュータイプの時代〜』
2019/12/9
vol.13
『NEWTYPE〜ニュータイプの時代〜』
山口周 著
〜Topis〜
1. 「ニュータイプ」とは
2. 6つのトレンド
3. 24の行動様式
4. まとめ
1. 「ニュータイプ」とは
本書では、旧来以前とした思考・行動様式を「オールドタイプ」、それに対峙される新しい思考・行動様式を「ニュータイプ」として整理し、提示していく。
これからの時代、かつて礼賛された「オールドタイプ」は、「ニュータイプ」にアップデートされなければならない。その背景となる時代の変化と、それによって求められる人々の変化について、以下で述べていく。
★Point
「オールドタイプ」=従来の望ましい人材要件
「ニュータイプ」=今後望ましい人材要件
2. 6つのトレンド
「ニュータイプ」へのアップデートが必要な背景には、以下のような時代背景(トレンド)がある。
<6つのトレンド>
⑴飽和する「モノ」と枯渇する「意味」
⑵「問題」の希少化と「正解」のコモディティ化
⑶「クソ仕事」の蔓延
⑷社会の「VUCA化」
⑸「スケールメリット」の消失
⑹「寿命」の伸長と「事業」の短命化
⑴飽和する「モノ」と枯渇する「意味」
今はありとあらゆるモノが手に入る時代である。
→役に立つ「モノ」と生産し続けようとするオールドタイプは価値を失う。一方で、希少な「意味」を世界に対して与えるニュータイプは大きな価値を生み出す。
⑵「問題」の希少化と「正解」のコモディティ化
ビジネスは「問題の発見」と「問題の解決」が組み合わさって成立する。ありとあらゆるモノが過剰に溢れることで「問題」が希少化してくると、ボトルネックは「問題の解決」から「問題の発見」へとシフトする。
→かつて評価された「問題解決者」はオールドタイプとして価値を減損する。一方で、新たな問題を見出すことができる「課題設定者」がニュータイプとして大きな価値を生むことになる。
⑶「クソ仕事」の蔓延
本来であれば生産性の向上によって労働量は減少していくはずである。しかし、我々の労働時間は100年前と変わっていない。
→目的や意味を明確化することなく、量的成果を追求するオールドタイプは「クソ仕事」を作り出す。一方で、常に仕事の目的や意味を形成し、本質的な価値を構造化するニュータイプは大きな価値を生み出すことになる。
⑷社会の「VUCA化」
今日の社会は不安定で不確実で複雑で曖昧なものである。このような時代には「経験」や「予測」は無価値となる。
→ある瞬間における最適化を求めるオールドタイプは無価値となる。むしろ、変化していく環境に対してどれだけしなやかに適合できるかという柔軟性を持つニュータイプが必要となる。
⑸「スケールメリット」の消失
産業革命以来、強いビジネスとはすなわち大きなビジネスだった。大量に生産した製品を大量の広告によって告知し、売り捌くことが強さに繋がっていたからである。
→オールドタイプである「スケール」で勝負する企業の強さは絶対的ではなくなった。サブスケールの事業主が人々の求める「意味」に応じて精密にコミュニケーションを取る、というニュータイプが可能になってきたからである。
⑹「寿命」の伸長と「事業」の短命化
近年、人間の寿命が伸長する一方で、事業の寿命は短命化している。すると、多くの人は人生で複数のキャリアを経験せざるをえない。
→人生で1つの仕事を貫くオールドタイプでは生きていけなくなる。柔軟でしたたかなキャリアを歩むニュータイプが求められるようになる。
3. 24の行動様式
以下、ニュータイプの具体的な行動様式である。
※イメージしやすいようにオールドタイプと比較する形でまとめる。
1.問題を解くより「発見」して提案する
★NewT:問題を探し、見出し、提案する
▲OldT:問題が与えられるのを待ち、正解を探す
2.革新的な解決策より優れた「課題」
★NewT:手段にこだわらず課題の発見と解決にこだわる
▲OldT:課題に向き合わずにイノベーションという手段にこだわる
3.未来は予測せずに「構想」する
★NewT:未来を構想する
▲OldT:未来を予測する
4.能力は「意味」によって大きく変わる
★NewT:意味を与え、動機付ける(リーダー)
▲OldT:目標値を与え、KPIで管理する(リーダー)
5.「作りたいもの」が貫通力を持つ
★NewT:自分がやりたいことにフォーカスを絞る
▲OldT:スケールを求めて市場におもねる
6.市場で「意味のポジション」を取る
★NewT:「意味がある」で差別化する
▲OldT:「役に立つ」で差別化する
7.共感できる「WHAT」と「WHY」を語る
★NewT:WHAT+WHYを示して他者をエンパワーする
▲OldT:HOWを示して他者に指示・命令する
8.「直感」が意思決定の質を上げる
★NewT:論理と直感を状況に応じて使い分ける
▲OldT:論理だけに頼り、直感を退ける
9.「偶然性」を戦略的に取り入れる
★NewT:遊びを盛り込む
▲OldT:生産性を上げる
10.ルールより自分の倫理観に従う
★NewT:自らの道徳・価値観にしたがって「わがまま」に行動する
▲OldT:組織のルール・規範にしたがって「無批判」に行動する
11.複数のモノサシを同時にバランスさせる
★NewT:質的な向上を目指す
▲OldT:量的な向上を目指す
12.複数の組織と横断的に関わる
★NewT:組織間を越境して起動する
▲OldT:一つの組織に所属し、留まる
13.自分の価値観が高まるレイヤーで努力する
★NewT:勝てる場所にポジショニングする(2段目の努力)
▲OldT:今いる場所で踏ん張って努力する(1段目の努力)
14.内発的動機とフィットする「場」に身を置く
★NewT:好奇心に駆動されて動く
▲OldT:命令に駆動されて動く
15.専門家と門外漢の意見を区別せずフラットに扱う
★NewT:素人の門外漢にも耳を傾ける
▲OldT:専門家の意見を重んじる
16.大量に生産して、うまくいったものを残す
★NewT:とりあえず試し、ダメならまた試す
▲OldT:綿密に計画し、粘り強く実行する
17.人生の豊さは「逃げる」ことの巧拙に左右される
★NewT:すぐに逃げて、別の角度からトライする
▲OldT:一箇所に踏みとどまって頑張る
18.シェアする人は最終的に利得が大きくなる
★NewT:与え、共有する
▲OldT:奪い、占有する
19.常識を相対化して良質な「問い」を生む
★NewT:リベラルアーツを活用して構想する
▲OldT:サイエンスに依存して管理する
20.「他者」を自分を変えるきっかけにする
★NewT:傾聴し、共感する
▲OldT:要約し、理解する
21.苦労して身につけたパターン認識を書き換える
★NewT:経験をリセットし、学習し続ける
▲OldT:経験に頼ってマウントする
22.「モビリティ」を高めて劣化した組織を淘汰する
★NewT:オピニオンを出し、エグジットする
▲OldT:空気を読み、同調し、忖度する
23.権威ではなく「問題意識」で行動する
★NewT:肩書きや立場に関係なく、フラットに振舞う
▲OldT:肩書きや立場に応じて、振る舞いを変える
24.システムに落ち着かず、脚本をしたたかに書き換える
★NewT:システムを批判し、修正する
▲OldT:システムに無批判に最適化する
※各行動様式について、根拠や具体的な内容が気になる場合はコメント下さいませ。
4. まとめ
時代の変化は、ある日誰かが「みなさん、新しい時代が始まりましたよ!」と告げておこるようなものではない。新しい時代への転換は、オールドタイプがかつて目指したような「「ファンファーレ」を伴うようなシステムのリプレースによってなされるのではない。
時代の転換は、誰もが気づかないうちに「人間の見方」が変わることで起こる。人それぞれの思考・行動様式が、ニュータイプへと変換することで起こるのである。
本書を叩き台として、ぜひ自分なりの「新時代の要件=ニュータイプ」について考えていただき、自分自身をアップデートしていって頂きたい。20世紀的な労働観に縛られない、しなやかで自由な、新しい人生のあり方を実践して頂きたい。