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『WORK SHIFT』

2019/11/11
vol.9
『WORK SHIFT』
リンダ・グラットン 著

 本書は『LIFE SHIFT』の著者リンダ・グラットンが、我々の「未来」における生活や働き方ついて述べた本である。
 彼女は、「漫然と迎える未来には孤独で貧困な人生が待ち受け、主体的に築く未来には自由で創造的な人生がある。」とし、「どちらの人生になるかは、「ワーク・シフト」できるか否かにかかっている。」と述べる。
 以下、2つの未来についての予測を述べたうえで、「主体的に築く未来」に進むために必要な「ワーク・シフト」の方法についてもまとめていく。

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~Topics~
1.はじめに
2.未来を形づくる5つの要因
3.漫然と迎える未来
4.主体的に築く未来
5.働き方のシフト
6.まとめ

1.はじめに

 いま、私たちの社会は非常に大きな変化を経験している。テクノロジーという「エネルギー」が、変化を突き動かし、そのスピードは日々加速している。
 この変化の時代を生きるにあたって、人々の未来を完璧に予測することは難しい。しかし、そのような不確実性の中でも、「未来を形作る要因」を分析し、ある程度の未来予想図と柔軟な計画を立て、様々な状況に耐えうるアイデアを追及することには意義がある。不確実性を前提に戦略を立て、予測の正確性も磨いていくことで、チャンスをつかめる可能性が高まるからである。

 未来に至る方法はいく通りもある。本書では、たどり着く未来を大きく2つに分ける。

「漫然と迎える未来」
 人々が孤独にさいなまれ、荒ただしく仕事に追われ、疎外感を味わい、自己中心主義に毒された未来。
 人々が人生のある側面で大きな成功を収めても、別の重要な側面で好ましい行動を取らなかったり、安易な行動を取らなかったりする場合に訪れる。

「主体的に築く未来」
 変化の好ましい側面を味方につけて、主体的に切り開く未来。人々が主体的に決断を下し、賢い選択を行い、決断と選択の結果を受け止める覚悟がある場合に実現する。
コラボレーションが重要な役割を担い、人々は知恵を働かせて未来を選択し、バランスのとれた働き方を実践する。

 おそらく多くの人が「主体的に築く未来」の方が好ましいと考える。「主体的に築く未来」を実現させるためには、以下3つの点で従来の常識をシフトしなければならない。

1.ゼネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直す
 全世界の人々がインターネットにアクセスしつながりあう世界が出現すれば、ゼネラリストの時代が幕を下ろすことは明らかである。「専門技能の連続的習得」を通じて自分の価値を高めていかなければならない。高度な技能を磨くと同時に、状況に応じて柔軟に専門分yあを変えることが求められる。

2.職業生活とキャリアを成功させる土台が個人主義と競争原理であるという常識を問い直す
 人々が時間に追われ、孤独を感じる傾向がさらに強まれば、人間同士の結びつきやコラボレーション、人的ネットワークの重要性は極めて大きくなる。活力を補給し、精神のバランスを保つためには、親密で温かく、愛情のある人間関係が欠かせなくなる。

3.どういう職業人生が幸せかという常識を問い直す
 
今までのライフスタイルが代償を伴うことを明確に確認したうえで、質の高い経験と人生のバランスを重んじる姿勢に転換することが求められるようになる。

 本章で述べた「未来を形づくる要因」「2つの未来」「働き方のシフト」について、以下にて具体的に述べていく。

2.未来を形づくる5つの要因

 未来を形づくる要因は大きく5つあると考えられる。

★Point
⑴テクノロジーの進化
⑵グローバル化の進展
⑶人口構成の変化と長寿化
⑷社会の変化
⑸エネルギー・環境問題の深刻化

 以下、5つの要因をとそれぞれの要素について具体的に述べていく。

⑴テクノロジーの進化

 歴史を通じて、テクノロジーは常に仕事の在り方と人々の働き方に大きな影響を及ぼしてきた。それだけでなく、人間や制度、文化、環境とも複雑に作用し、「文明」自体に大きな影響を与えてきた。未来の働き方を描くためには、新たに登場するテクノロジーを把握し、それらの変化を予測する作業が欠かせない。

<テクノロジーの進化>

①テクノロジーが飛躍的に発展する
②世界の50億人がインターネットで結ばれる
③地球上の至るところで「クラウド」を利用できるようになる
④生産性が向上し続ける
⑤「ソーシャルな」参加が活発になる
⑥知識のデジタル化が進む
⑦メガ企業とミニ起業家が台頭する
⑧バーチャル空間で働き、「アバター」を利用することが当たり前になる
⑨「人口知能アシスタント」が普及する
⑩テクノロジーが人間の労働者にとって代わる


⑵グローバル化の進展

 テクノロジーが進歩した結果、世界の多くの地域で情報を素早くやり取りできるようになった。優秀な人人材が世界を舞台に活躍できるようになるという好ましい影響が生まれる反面、競争が激化し人々がますます慌ただしく時間に追われるようになる。

<グローバル化の進展>

①24時間・週7日休まないグローバルな世界の出現
②新興国が台頭した
③中国とインドの経済が目覚ましく成長した
④倹約型イノベーションの道が開けた
⑤新たな人材輩出大国が登場しつつある
⑥世界中で都市化が進行する
⑦バブルの形成と崩壊が繰り返される
⑧世界の様々な地域に貧困層が出現する

⑶人口構成の変化と長寿化

 社会の人口構成と仕事との間には、切っても切れない結びつきがある。長寿化については悲観的な観測をされることが多いが、ある面では明るい材料をもたらす。人々が健康で長生きするようになり、80歳になっても生産的な活動に携わり続ける人が増える。協力関係を重んじる環境で育った、今の未成年層(Z世代)の影響が強まれば、仕事の世界でコラボレーションが活発になるとも考えられる。

<人口構成の変化と長寿化>

①Y世代(2025年に30~45歳になる世代)の影響力が拡大する
②寿命が長くなる
③ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える
④国境を越えた移住が活発になる

⑷社会の変化

時代の変化やイデオロギーの変化の中で、人々はいつも、自分自身に対して、他人に対して、そして仕事に対して望むものを変えてきた。しかし、表面的な部分こそ変わっても、根本の部分では人間の本質は変わらないとも言われている。マズローが提唱した「5段階欲求」はこれからも生き続けるであろう。

<社会の変化>

①家族の在り方が変わる
②自分を見つめなおす人が増える
③女性の力が強くなる
④バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える
⑤大企業や政府に対する不信感が強まる
⑥幸福感が弱まる
⑦余暇時間が増える

⑸エネルギー・環境問題の深刻化

 環境問題について議論される場面は多いものの、それらの影響が現実化するのは未来のことなので、現実感が乏しく、日々の意思決定に際して考慮されることは少ない。しかし今後はますます環境問題の影響が大きくなり、世界の最重要課題に浮上してくるはずである。

<エネルギー・環境問題の深刻化>

①エネルギー価格が上昇する
②環境上の惨事が原因で住居を追われる人々が現れる
③持続可能性を重んじる文化が形成される


 以上、今後数十年の働き方の未来を形づくる5つの要因と32の要素である。人々はこれらの要素をもとに、自分自身の未来ストーリーを描き出さなければならない。
 組み合わせ方やとらえ方によって、「暗い未来(≒漫然と迎える未来)」と「明るい未来(≒主体的に築く未来)」が導きされることだろう。
 以下それぞれの未来について述べていく。

3.漫然と迎える未来

 まずは、「漫然と迎える未来」について、未来予想図を描いてみる。
A~Cの3種類の予想図を描くので、これらが自身の未来に実現する可能性を想像しながら眺めてみてほしい。

<漫然と迎える未来>

A:「いつも時間に追われ続ける未来」

B:「孤独にさいなまれる未来」

C:「繁栄から締め出される未来」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

A:「いつも時間に追われ続ける未来」
 ~3分刻みの未来がやってくる~

 テクノロジーの進化とグローバル化の進展により、1日24時間・週7日休むことなく世界中の人々が1つに結び付く時代が現れ、みな慌ただしく仕事に追われる。

《時間に追われることの弊害》

専門技能を磨きにくくなる
・日々のスケジュールがあまりに慌ただしく、なんらかの技能に磨きをかけて専門分野を作る時間を確保することができなくなる。
観察と学習の機会が失われる
・あまりに忙しくなると、自分より高度な技能の持ち主の振る舞いを観察する時間が無くなり、自分のスキルを磨き上げることが難しくなる。
気まぐれと遊びの要素が排除される
・本来、仕事の世界で情熱と創造性を発揮する機会はこれからますます広がっていく。しかし、仕事があまりに忙しくなると、仕事に中に「遊び」の要素を取り入れ、楽しみながら仕事をすることができない。

《時間に追われない未来をつくる》

専門技能の習熟に土台を置くキャリアを意識的に築く
・まとまった時間を観察と学習と訓練のために確保する
時間に追われる生活を脱却しても必ずしも孤独を味わうわけではないと理解する
・多くの事をすべて自分で行おうとせず、強力なネットワークを築いて、自分の負担を軽減させる
消費をひたすら追求する人生を脱却し、情熱的に何かを生み出す人生に転換する
・自分で職業を選択し、思い切った選択を行い、選択の結果を受け入れる

B:「孤独にさいなまれる未来」
 ~人とのつながりが断ち切られる~

 人の移動を減らして、エネルギー―消費を抑えるために、人間関係のバーチャル化が進み、また、組織への信頼感が低下することで人々の孤独と孤立が深まる。人々は仕事のためにあまりに多忙な日々を送っていて、肩の凝らない人間関係を楽しめず、親や兄弟の結びつきも弱まっている。 

《人とのつながりが断ち切られることの弊害》

同僚との気軽な関係の消滅
・テクノロジーが進化すれば、バーチャルなアバターを通したコミュニケーションが一般化する。生身の人間と接する機会が減り続け、深い孤独を味わうようになる。
家族との関わりの希薄化
・家族生活が充実していれば、職業生活に好ましい影響が及ぼされる。しかし、仕事を重視するあまり、家族との関係性が希薄化することで、人々は精神的に充足されにくくなる

《孤独にさいなまれない未来を作る》

「ポッセ」という人的ネットワークを形成する
・「ポッセ」とは、同じ志を持つ仲間のことである。いざというときに頼りになり、長期にわたって互恵的な関係を築ける少人数のグループである。
「ビッグアイデア・クラウド」という人的ネットワークを形成する
・「ビッグアイデア・クラウド」とは、大きなアイデアの源となる群衆を指す。多様性に富んだ大人数のネットワークで、スケールの大きなアイデアや新たなコネをもたらす。
「自己再生のコミュニティ」という人的ネットワークを形成する
・「自己再生のコミュニティ」はとは、頻繁に会い、一緒に笑い、食事をともにすることができる人々である。時間と共にすることで、リラックスでき、リフレッシュもできる。

C:「繁栄から締め出される未来」
 ~新しい貧困層が生まれる~

  これからの時代は、生まれた地域が自分の人生設計に及ぼす影響が縮小する。貧しい農村に生まれても、聡明で意欲があれば、グローバルな人材市場に加わり、豊かな生活を送れる可能性がある。しかし一方、豊かな地域に生まれても、聡明な頭脳と強い意欲に欠けている人は下層階級の一員となる。

《新しい貧困層が生まれることの弊害》

■「勝者総取り」社会で格差が広がる
・一つの企業間、一つの国家間の格差は拡大していく
・物質主義的傾向が強い世界では、所有物がその人の成功の度合いを判断する物差しになる
・社会格差を拡大に伴って、社会不安も増大する
■劣等感と恥の意識が強まる
・社会的な格差への意識が強まる結果、成功者との比較が顕著になることで、人々の自尊心は傷つき、劣等感は強まる

《繁栄から締め出されない未来をつくる》
■高い専門技能の習得
・職を見つけるために、テクノロジーにだいたいされないような高いレベルの専門知識を身に付ける必要がある
(■各国:適切な政策立案と実施)

 
 上記のようなくらい未来のシナリオを書き換えるには、様々ことを試し、対策を取ること、そして、厳しい選択を行い、新しい能力を身に付けることが必要となる。それらは、個人で行うだけでなく、新たな形で世界に形成された「共同体」の中で営まれていくことが望ましい。

4.主体的に築く未来

 未来を形成する5つの要因は、先に述べたような暗い未来を生み出す可能性がある一方、明るい未来を生み出す可能性も秘めている。

<主体的に築く未来>

D:コ・クリエーションの未来
 
E:積極的に社会と関わる未来
 
F:ミニ起業家が活躍する未来

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

D:コ・クリエーションの未来
 ~みんなの力で大きな仕事をやり遂げる~

 テクノロジーの進化とグローバル化の進展により、世界中の人々が結びつくようになる。仕事(プロジェクト)においては、多様性に富んだ「協力関係」が核をなす。そのような場をうまく活用することができれば、未来の可能性は大きく広がる。

《コ・クリエーションの未来がもたらすもの》
■多様な繋がりと創造的な活動の広がり
・多様なアイデアや視点が組み合わさった結果、単純な足し算以上の効果が生まれ、斬新で有効な解決策が編み出される
・テクノロジーの進化のおかげで時間に余裕ができれば、人々は余暇時間にも思考力と創造性を発揮できるようになる

《必要な要素》
■専門技能を身に付ける
・自分が情熱を抱くことができ、かつ、自分の職業生活を価値あるものにできると思える分野で、専門技能を身に付ける
■「ビッグアイデア・クラウド」の一員となる
・インターネットを介して「ビッグアイデア・クラウド」の一員となり、互いに刺激しあいながら仕事をする
■実り豊かな経験とやりがいのある仕事を大切にする
・ひたすら働き、ひたすら消費する生活から抜け出し、実り豊かな経験とやりがいのある仕事のある日々をおk


E:積極的に社会と関わる未来
 ~共感とバランスのある人生を送る~

 インターネットが普及すれば、世界中の人々が互いを深く理解し、ほかの国や地域の状況に感情移入しやすくなる。そしていわゆる「グローバル思考」が広がっていくと考えられる。

《積極的に社会と関わる未来がもたらすもの》
■共感の精神と社会貢献意識の広がり
・共感の精神が広がって世界の人々がお互い思いやるようになると、社会貢献のために自分の時間をささげようとする人が増えていく
・家族や身近な人々のためだけでなく、国籍や文化が異なる人、一度もあったことの無い人達の力になろうという考えも広まっていく

《必要な要素》
■価値観の転換を追い風にする
・今までの性別観念や職業観念はこれから大きく変化する。そのような変化の中で、自分にとっては何が本当に大切かを理解し、生きがいと幸福wお感じられるような仕事を優先する

F:ミニ起業家が活躍する未来
 ~創造的な人生を切り開く~

 2025年には、世界中で何十万人もの人たちがミニ起業家として働き、他の起業家をパートナー関係を結んで、相互依存しつつ共存共栄していく仕組み(エコシステム)を築くようになる。特定の大企業ではなく、こうしたミニ起業家たちのエコシステムが市場の方向性を大きく左右するようになる。

《ミニ起業家が活躍する未来がもたらすもの》
■イノベーションのグローバル化
・テクノロジーの進化とグローバル化の進展により、世界中の人々がより自由な形でクリエイティブな仕事をすることができるようになる
・大木の企業家は、低コストで高いレベルのイノベーションを生み出すようになる
《必要な要素》
■イノベーションを推し進める能力の習得
・絶えず専門技能に磨きをかけるのと並行して、他の人々と連携しながらイノベーションを推進するような能力を身に付ける
■バランスのとれた職業生活を送る
・何十年先まで生産的に働き続けるためには、自分のエネルギーを様々な活動にどう割り振るのかをきちんと設計する


 世界はめまぐるしいペースで変化している。固定観念の多くは過去のものとなり、新たな選択肢とチャンスが拡大する。レールの上を歩くようなキャリアではなく、充実感とやりがいを抱ける人生を送ることも可能になる。ただし、自分にあったキャリアを実践するためには、主体的に選択を重ね、その選択の結果を受け入れる覚悟が必要になるのである。
 

5.働き方のシフト

 今までに述べてきたように、明るい未来を拓けるか否かは我々にかかっている。そのためには、従来の固定観念から根本的に「シフト」していかなければならない。
 ここからは、仕事の世界で必要な3種類の資本(知的資本、人間関係資本、情緒的資本)を切り口に、未来にどのようなシフトが必要かを見ていく。

★Point

◆第1のシフト 
 ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
 Cf.「知的資本」

◆第2のシフト
 孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
 Cf.「人間関係資本」

◆第3のシフト
 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
 Cf.「情緒的資本」

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◆第1のシフト
 ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ

 未来の仕事で成功するためには、以下2つの資質が求められる

①専門技能の連続的習得
・未来の世界でニーズが高まりそうな仕事を選び、高度な専門知識と技能を身に付ける
・その後も必要に応じて他の分野の専門知識を技能を身に付ける
②セルフマーケティング
・自分の能力を取引相手に納得させる材料を確立する

 以下に、向こう数十年で新たに開けそうなキャリアと、高い価値を持ちそうな専門技能の例をいくつか添える。

未来に向けてのシフトを実践していくには、様々な選択肢を深く理解し、それぞれの選択肢を選んだ場合に得るものと失うものを知っておく必要がある。とはいえ、未来が不確実なことを考えると、あくまで自分が好きなことや情熱を抱けることを職業に選ぶのが賢明である。

 なお、専門知識を身に付ける際に注意すべきは、「複数の分野」の高度な専門知識と技能を身に付けることが欠かせない、ということである。そのようなキャリア形成の成功の秘訣は以下の通りである。

<キャリア形成の成功の秘訣>

①新しいチャンスが目の前に現れたとき、未知の世界にいきなり飛び込むのではなく、新しい世界を理解するための実験からはじめる
②自分と違うタイプの大勢の人たちを接点を持ち、多様性のある人的ネットワークを築く
③はじめのうちは本業を辞めず、副業を言う形で新しい分野に乗り出す

 これからの時代は大きく働き方が変わる。今までのように同じ会社で同じ人たちと働くのではなく、常に新しい人々と関わることになる。
 となると、上記の方法で身に付けた高度な専門技能を、自分自身で他人に印象付けていかなければならない。そのためのポイントを以下に添える。

<セルフマーケティングのコツ>

①自分が手掛けた仕事が誰の目にも自分の仕事だとわかってもらえるよう、明確な特徴を持たせる
②専門職にならって、同業組合(ギルド)やそれに類するものを形成する
③活力を維持するために「カリヨン・ツリー」型(小さな釣鐘が連なる形)のキャリアを形成する


第2のシフト 
孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ

 これからの世界では、「人間関係資本」を築く方法が飛躍的に拡大する。その恩恵を最大限に生かすためには、協力ろネットワークとイノベーションについての発想を根本からシフトさせる必要がある。

 新たな時代で求められるコミュニティとして、以下の3つが挙げられる。

<これからの時代におけるコミュニティ>

①「ポッセ」
・頼りになる同士であり、アドバイスと支援を与えてくれる、比較的少数のブレーン集団
→孤独になることなく、高度な専門知識を磨き続けることができる

②「ビッグアイデア・クラウド」
・巨大なオンラインコミュニティ
→大きなアイデアを生み出す源泉となる

③「自己再生のコミュニティ」

・現実の世界で実際に交流する仲間
→支えと安らぎを与えてくれる

 3つのコミュニティを築く方法を以下に添える。

①「ポッセ」
・互いに役に立てる可能性があり、互いを信頼しあい、互いを助けたいと思い、互いのために時間を割きたいと思えるメンバーで集まる
・メンバーを惹きつけるために、まず自分が発信する
・「基本的な行動原則」を持っておく

②「ビッグアイデア・クラウド」
・普段あまり行かない道を歩く(いつもと違う世界に踏み出し、交流関係を広げる)
・自分と異なるタイプのグループに加わるときは、そのグループの流儀に合わせる
・「プッシュ」ばかりでなく「プル」を心がける

③「自己再生のコミュニティ」
・人が出合いやすい場所に住む
・周りの人と交流できるだけの時間を作れる仕事を選ぶ

 従来であれば、人的ネットワークは自然に形成されるものであった。しかしこれからは、意識的・主体的な選択が求められるようになる。そのような時代において、適切で強固な人間関係をはぐくむことができれば、それだけ大きなエネルギーを得ることができる。


◆第3のシフト
 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

 自分が望む未来を実現するためには、やりがいと情熱を感じられ、前向きで充実した経験を味わえる職業生活への転換を成し遂げなくてはならない。そのためには、自分の前にある選択肢の一つ一つを深く理解し、それぞれの道を選んだ場合に待っている結果を知的に分析したうえで、行動に踏み切る勇気を持つ必要がある。

 第3のシフトには、権力や地位、ニーズや欲求、そして金と消費といったテーマが関係してくる。仕事に関する古い約束事の核をなすのは「お金を稼ぐために働く」という考え方である。消費をするためにお金を稼ぎ、稼いだ結果ますます消費する。同時に、稼ぐことは社会的地位を映し出す指標の役割も果たしてきた。

 しかし、未来における「仕事」は、単にお金を稼ぐためのものではなく、自分のニーズと願望に沿った複雑な経験を意味するようになるかもしれない。事実、先進国の多くの人はこれ以上所得が増えても幸福感は高まらないといわれている。となると、充実した経験をあじわうことが満足感や幸福感の主たる牽引役となっていくだろう。

 主体的に選択を行うため、自分の選択肢について考えるためには、以下のようなと問いを投げかけてみるとよい。

<自分の選択肢について考えるための問い>

Q1.インターネットなどのテクノロジー、物事が起こるスピード、グローバル化の進展状況に関してどのような変化が訪れ、それが仕事の世界にどういう影響を及ぼすのか?

Q2.「漫然と迎える未来」が現実化した場合に、どのような未来がやってくるのか?いつも時間に追われ、孤独にさいなまれ、大規模な貧困が生まれる可能性のある未来で、自分の職業生活はどうなるのか?

Q3.仕事に関する選択を行うにあたり、自分がどういうう困難とジレンマに直面しているのか?

 私たちは職業生活で選択を繰り返し、選択を重ねることによって自分の人生を築いている。自分の自由意思に基づいて行動しようと思えば、漫然と行動するのではなく、意識的に選択していく必要がある。

6.まとめ

 あなたが、バランスのとれた生活を重んじ、やりがいのある仕事を重んじ、専門技能を段階的に高めていくことを重んじるのであれば、それを可能にするための「シフト」を実践し、自分の働き方の未来に責任を持たなくてはならない。

 自分自身と自分の大切な人にとって望ましい働き方の未来を切り開けるかどうかは、どんな人達と出会うか、どんなコミュニティを築けるか、によって決まる。

 私たち一人にとっての課題は、明確な意図をもって職業生活を送ることだ。自分がどういう人間なのか、人生で何を大切にしたいのか、を意識し、自分の前にある選択肢と、それぞれの道を選んだ場合に待っている結果について、深く理解しなければならない。そのためには、自分が大切にしたい要素を優先させる生活を送れる場を探す姿勢が必要である。

 未来の世界で、私たちは自分にとって大切な価値や自己像を追及できる可能性と、そのための選択を行動を行う自由を手にする。同時に、自分の選択と行動がもたらす結果からは逃れられないのだと理解しなければならない。

 仕事と職場はあなたが生きがいを見つけられる場である可能性が高い。その場を活かすか殺すかは、あなたの勇気と未来感覚次第である。