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『影響力の武器』

vol.17
2019/1/6
『影響力の武器』 ロバート・B・チャルディーニ 著

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~Topics~
1.はじめに
2.返報性
3.コミットメントと一貫性
4.社会的証明
5.好意
6.権威
7.希少性
8.まとめ

1.はじめに

 私たちが生活する社会では、様々な心理学的原理が働き、人々に影響を与えている。本書ではこの原理を「影響力の武器」を呼び、中でも特に重要な6つの原理について解説していく。

 それぞれの原理について論じる前に、動物が保有する根本的な行動原理について把握してほしい。以下がそれである。


◆固定的動作パターン
=ある「信号刺激」を感知すると、自動的に発揮される行動の様式

※状況の中の関連情報の中の、たった一つの特徴によって引き起こされる可能性がある

<メリット>
・思考が省略され、効率的に行動できる
<デメリット>
・熟考しなかった結果、誤った行動を取ってしまう可能性がある

 以下に6つの原理について論じていく。それぞれの原理は多くの場合、無意識的に(固定的動作パターンとして)働き、プラス/マイナスの影響を及ぼす。それぞれの原理について認識し、今後の自身の行動に少しでも役立てて頂きたい。

2.返報性

◆返報性の原理
=他人が何かの恩恵を施したら、自分は似たような形でそのお返しをしなければならない

~特徴~
・「返報性の原理」の威力は「相手への好感度」よりも強い
・受け取ったものを自分が望んでいなくても、お返しの義務を感じてしまうことが多い

<メリット>
・人間社会、人間文化を円滑に保つ
(人が損をする心配を軽減させ、互恵関係を促進する)
<デメリット>
・不正不当な「恩恵」によって、不適切な「お返し」を強要される可能性がある(意識的にも無意識的にも)

Cf.「譲歩的要諦法」
・交渉の場において、自らの「譲歩」自体を「恩恵」とする
(→「お返し」として相手も「譲歩」せざるを得ない)
※発展:「拒否したら譲歩」法
・まず相手に確実に拒否されるような大きな要求を出し、相手がそれを拒否したら、次に少し小さな要求を出す。「要求のレベルを下げた」ということがこちら側の「譲歩」=「相手にとっての恩恵」となる→相手からの「お返し」としてのYesを引き出せる。

3.コミットメントと一貫性

◆コミットメントと一貫性の原理
=ひとたび決定を下したり、ある立場を取る(コミットする)と、内(自分)の力と外(他者)の力によって、コミットメントと一貫した行動を取るような圧がかかる

~特徴~
・圧力によって一度踏み出すと、自分の決断を正当化しながら行動するようになる
・自分の決断を正当化するだけで、行動に対する満足度も向上する
・一貫性の原理が強固になるのは、コミットメントに「行動が含まれること」、「公表されること」、「努力を要すること」、「自分の意思で選ぶこと」という要素が揃ったときである

<メリット>
・自動反応的に行動できる=「思考の近道」を提供してくれる
(考え続ける辛さからの解放、考えた結果導かれた不快な結果からの逃避)
<デメリット>
・情報が少ない段階で決断してしまった結果、冷静に考えれば導かれないような行動でも実行してしまう恐れがある

Cf.「段階的要請法」
・最初に小さな要求をのませ、それから関連する要求を通す

4.社会的証明

◆社会的証明の原理
=人は他の人が何を正しいと考えているかを基準にして物事を判断する

~特徴~
・ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと信じる
・社会的正目は、「不確かさ」と「類似性」という要素が揃ったときに影響力を強める

<メリット>
・一般には、周囲の人間と同じ行動をする方が、それと反対の行動を取るよりも、間違いを起こさずに済む
<デメリット>
・「集合的無知」が生じうる
└自分が不確かな状況で他人の行動を参考にするとき、その他社たちも周りの人々の行動を参考にしている。その結果、全員が不適切な行動を取ってしまうこともありうる。

5.好意

◆好意の原理
=人は自分が好意を感じている人に対して、Yesと言う(承諾する)傾向がある

~特徴~
・その人の「身体的魅力」はその人への好意に影響する
・好意と承諾の関係には、「類似性」(お互いに類似する点があるか)と「称賛」(相手に対して称賛を送っているか)が影響してくる

<メリット>
・社会的な結びつきが強まる
<デメリット>
・「好意」が悪用されたり、そもそも「好意」が不当に生み出されたりする可能性がある

Cf.「ハロー効果」
・ある人が望ましい特徴(外見など)と一つ持っていると、その人に対する他人の見方が大きく影響を受け、他の要素も魅力的に見えてくる、という効果

6.権威

◆権威の原理
=人は権威者の命令にはとにかく従おうとする


~特徴~
・権威者に対して自動的に反応する場合、その実体ではなくシンボルに反応してしまう
└肩書、服装、装飾品...

<メリット>
・自身の行動を決定する際に、「思考の近道」を提供してくれる
<デメリット>
・明らかに不適切な行動でも取ってしまう(盲目的に服従してしまう)可能性がある

7.希少性

◆希少性の原理
=人は機械を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなすようになる


~特徴~
・特に、不確実性や危険性の高い状況では希少性の原理が強まる
・もとから少ない場合より、もとはたくさんあったものが少なくなってしまった場合の方が、希少性の原理は強まる
・他人と競いあっている場合、希少性の原理は強まる

<メリット>
・(多くの場合、手に入れにくいものは良いものであるはずなので、)希少性を手掛かりにして意思決定を迅速かつ正確に行うことができる
<デメリット>
・希少性の原理を悪用され、不必要なものまで入手したくなるよう仕向けられる可能性がある

Cf.「数量限定」/「最終期限」戦術
・数量や期間の希少性を強調することで、相手の承諾を促す戦術

8.まとめ

 現代は、科学技術の驚くべき発展によって情報が溢れ、選択の幅が拡大し、知識が爆発的に増加している。人はこのような変化と選択の洪水に対して、自分自身を順応させなければならなくなってきた。

 全ての情報を考慮することはほぼ不可能なので、一部の情報をもとに決断を迫られることも多い。まして、生活の流れが速まるにつれて「手っ取り早い」判断がますます求められるようになっている。
 しかし、上記で述べたような自動的な判断能力(心理的原理)にも限界がある。だからこそ、それぞれの原理を理解し、自分の意思で適切に活用しなければならない。