「この人には勝てない」とおもう人を紹介してください

私が勝てないと思う人は、
およそ20年間想いをよせていた高校の部活の同期です。

約20年前の4月。高校入学、部活スタート。
往復2時間の通学、学校の授業。
部活は、部員100名ほどの顔と名前を覚えながら練習をする。

部活で高校進学を決めたため、周りに知り合いはいない。
初めてのオンパレード。常に緊張状態で疲れる。

ある日、部活を少し早めに終わらせて駅へ向かった。
電車の到着時間まで時間がある。
1分でも寝ようと、駅のベンチに座ろうとしていた。

その時だった。
「一緒の吹奏楽部やろ?」
どこかから声が聞こえた。

キョロキョロ辺りを見回すと、2人の男子高校生が立っていた。
そのうちのひとりに、
私は落雷に撃たれたかのようにビビビッときたのだ。

私も含め3人で電車などを乗り継いでいる最中、いろんな話をした。
彼らも、私と同様に遠くの中学校から部活のために進学したこと。
通学手段がほぼ同じこと。
ビビビッときた彼と私は、履修科目もほぼ同じ。
3年間クラスが離れる場合でも、同じ授業が受けられると判明した。

帰宅して、ビビビッの感覚に違和感を覚えたが、
次の日以降、彼と一緒の時間を過ごせたら嬉しいなあとワクワクしていた。

3年間の通学や学校の授業、部活。
1度も彼よりも勝るものができなかった。
普段の授業、定期考査、資格検定試験。
勝てる見込みのある男女一緒の持久走授業も、最後のスパートで負けてしまう。
部活では、彼はキャプテン。私は担当する楽器のパートリーダー。
まとめ、引っ張っていく人の数がそもそも違う。
通学時間に音楽の話をしても、彼の聴いている音楽のジャンルが幅広すぎた。
そして彼も私も、それぞれ付き合っている人がいてプライベートも充実していた。

高校卒業後は別々の道へ進んだものの、
タイミングさえ合えば定期的に会っていた。
高校生の時とは違い、飲酒もできるしドライブもできる。
夜景を見ながら、彼の奮闘話を聞く。
次に夜景を見る機会があれば、
私が彼にすごい!と言うのではなく、
彼からすごい!と言われたいなあと思ったものだ。

高校卒業後も会うほどぞっこんな彼であったが、
一度も「好きなんよ」と伝えられなかった。

言って今までの関係が崩れてしまうのがこわい
そもそも付き合いたいと思ったことがない
など、様々な理由があった。

好きってなんだろう
哲学のような考えをめぐらせた日もあった。

2年前、ふと気づいた。
私は、今まで彼に認められる、褒められる人生にこそ価値があると
無意識に思っていたのかな。
でも、好きと伝えなかったからこその今がある。
彼の背中を乗り越えたくて、奮闘してきたから今がある。
彼がそばにいない今は、とても楽しいし充実している。
毎日を認め価値を見出すのは、
自分自身が行動するしかできないな。

自分の行いを認める、価値を見出すと気づいた以降は、
彼の名前を忘れるくらい、あっという間の毎日を重ねていった。

背中を乗り越えたかった過去と気づきを得てからの今。
どちらも私の人生に彩りを添えてくれた。

ビビビッと感じた相手に、全く勝てるものがなくて良かった。
彼とのめぐりあいに、感謝しかない。

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