美術館のメモ
透明のアクリルパネルに
無造作に描かれるカラフルな線たち
ひっくり返した反対側の面にも
さらに無造作に線を描き足したような作品
展示では、ある面が平面になるように飾られている
壁から少し離して飾ってあるため、
横に周れば裏面も覗けるようになっていた
この展示の仕方だからきっと
作者の意図としては、
一方が表で、一方が裏、という
認識だったのだろう
わたしも展示された作品を前にして
そういう視点でみていたし、
それが自然に思えるよう展示されていたと思う
一晩眠ってから振り返ってみると
壁から取り外されたアクリルパネルが
頭の中で立体的にくるりと回ってみえてきて
そうなるともう裏も表もないのではないか、と
思えてきて仕方ない
例えば
同じ面と面で背中合わせでいて、
お互いの存在を背中でじりじりと感じながら
時には美しく、時には荒っぽく重なってみたり、
少し重ねてからふわりと離れてみたり、
一方の面の美しさ、醜さを浮き出してみたり
偶然や必然の間を行き来しながら
お互いに影響し合ってそこにいる、
個と個のように思えてくる
美術作品は、
音楽よりもずっと情報が少ない
作者の綴った作品に対する想いや、
評論家の言葉、
さらには作者の生い立ちや
これまで手がけてきた作品など、
いま展示されている
わたしの目の前にある作品から
まっすぐに受け取るものに加えて、
積極的に情報を集めることで、
作品までも違って見えてくることが多くある
ぱっとみて理解不能なものでさえ
とても意味深くみえてくることもあるし
この作品がどうしてこんなにも魅力的なのか
という自身の感性への問いかけの、
答えが見つかることもある
わたしはこの美術館で、
ああ好きだなあって感じる作品が
ふたつあったのだけれど
どちらも少ない色味で、
直線の美しさと、
心地よい曲線の組み合わせがある、
そしていつもそこに
日常の中にある、という共通点があって
まっすぐ作品をみて感じたこと
意外の情報がなくても、
ただただ、ああ好きだなぁの
気持ちがじんわりやってくるものだった
美術作品だけじゃなくて、
きっと音楽も、
そのほかあらゆるものをみるときにも、
そういう部分にときめいていて、
一対一で向かいあったときに好きかどうかが
とても大切なのだろうなあ
感性を動かされたくて、足を運んだので、
美術作品をみるときには、全然正しい見方では
ないのかもしれないけれど、
目的は達成できたかな
前日のライブの余韻をいっぱいに抱いて
美術館に行った話
展示は今日まで◎
https://www.ueno-mori.org/exhibitions/voca/2021/