Biber et al. (2021) Grammar of Spoken and Written Englishについて
Biber et al. (1999) Longman Grammar of Spoken and Written Englishの“complete redesigned”版であるGrammar of Spoken and Written Englishが版元をLongmanからJohn Benjaminsに変えて、2021年に出版された[これ以降、前者をLongman版、後者をJohn Benjamins版と称す]。この版は、Longman版で本文中のLongman Grammar of Spoken and Written English (LGSWE)とあった箇所が、改題に伴い全てGrammar of Spoken and Written English (GSWE)と変えられていることや、Longman版にあったQuirkによるForewordが削除されていることを除いて、内容に大きな変更はないようである。また、カラー印刷となったことで、Longman版ではモノクロであったグラフなどもカラーとなっており、視認性は向上している。しかしながら、Amazonのレビュー等では触れられていない問題が二点あると考えるため、いずれも瑣末ではあるとは考えられるものの、触れておくこととしたい。
まず、John Benjamins版はLongman版の単純なReprintではないために、両者のページ数にズレが生じている。後半に行くにつれ、およそ同内容が記載されたページのずれが大きくなっていくため、本文の最後のページが、Longman版では1125ページであるが、John Benjamins版では1120ページとなっている。したがって、参照する際にやや注意を要する。
もう一点は参考文献一覧(Bibliography)の、編集上で生じたであろう問題である。BibliographyはLongman版では1139ページから1147ページに二段組で、John Benjamins版では1143ページから1157ページまでに一段組で、記載されている。John Benjamins版ではLongman版では付されていなかったDOIが付されている場合がある以外に大きな変化はなさそうである。しかし、文献、特にドイツ語のものの表記にJohn Benjamins版では不自然な点がある。行中であるにも関わらず、John Benjamins版ではBald (1988b)[1147ページ]でVermitt-lung、Mindt (1987)[1153ページ]でUnterrichts-grammatikやFor-schung、Thompson&Mulac (1991a)[1156ページ]でGram-maticalization、といった具合であるが、いずれも語中のハイフンは必要ない。これらはいずれもLongman版では改行の際に付されたものである。最後のもの以外はいずれもドイツ語であるために、ドイツ語に関する知識を有さない者によってJohn Benjamins版に〈移植〉される際に見落とされたのであろう。
ちなみにLongman版であった誤植がそのままである箇所があり、例えばGeluykens (1984)でpseudoleftとあるのはpseudocleftの誤りである[Longman版で1142ページ、John Benjamins版で1149ページ]。
Longman版は“US $119.00”であったようだが、John Benjamins版は“USD 325.00”である(電子書籍も同価格)ようである。カラーになったことや物価変動を考慮する必要はあるものの、内容に大きな変更がないことや上記のような問題を考えると、ハードバックであるとは言えども、いささか値段設定に問題があるように思われてならない。