夏の匂い
天井にかかるカーテンの向こう側で
音の鳴るコンパスの上に座り、均等に巡る四季をみまわしていた
夏の匂いは儚い
箱の中に生まれた熱が死んでいくように冬が向こう側にみえる
私は小さくなり、夏の熱に潜る
海が恋しくなる夏
眩しさと、蝉の声
賑やかな祭りの後に残る夜空の暗闇
思い出の日差しが線香花火のようだった
天井を覆う闇がコンパスの音を隠す
熱気に混ざる死の匂い
見えない三角が夜空で踊る
ぐっと凝縮した熱は、蜃気楼みたいに幻のまま
秋には忘れ去られる
生命は一瞬大地に押し付けられて、また永遠の夏に浮上して広がる
尽きることのない海の先の水に包まれ、赤い血が空に流れていく
蜃気楼の後の沈黙
祭りの後の熱が煙になって高くあがった