「お味噌知る。」
疲れていても、冷蔵庫に昨日とっておいただし汁があれば、お味噌汁とあとお肉かお魚を焼けばなんとかなるなと思える。
だし汁を鍋にかけてから少したつと、かぐわしい香りがたってくる。
そこに、季節の野菜やお豆腐、油揚げ、わかめや卵などその日のおかずや気分に合わせて、具材を入れて弱火よりの中火でコトコト煮込む。
具材に火がとおったら、火をとめてからひと呼吸おいて、お味噌を適量溶いたら、お味噌汁のできあがり。
土井善晴先生にかかると、お味噌汁が無限の宇宙になる。
水で具材を煮て味噌を溶くだけで充分だし、具材は野菜にお肉などの油やタンパク質を含むもの、素材そのものから美味しいだしが出る乾物食材に、はたまた残ったおかずの唐揚げや餃子などもお味噌汁に入れられるし、いろいろ組み合わせると具材から溶け出した味が集まって美味しさが生まれる。
本には、5つのテーマに分けていろいろなお味噌汁のレシピが紹介されていて、それらを眺めるだけでもなんだかお味噌汁を飲んだあとのように、ほっとした柔らかい気持ちになった。
産後にあまりに疲れていて、「お料理すること」「台所に立つこと」がひどく億劫になってしまったことがある。
そこには「ちゃんとやらなきゃ。」という謎のプレッシャーがあった気がする。
その時は、今は亡き大好きだった義母が温かい料理をたくさん作って持ってきてくれて、そのおかげで心身もだんだんと回復して、今では「お料理すること」「台所に立つこと」は疲れて大変なこともあるけど、今日もご飯が作れたという喜びを感じることができている。
あの時、おかあさんが作ってくれた具沢山の豚汁の味は今でも大事な思い出だ。
土井善晴先生は、本書の最後でこう記してくれている。
本著は、土井善晴先生の自分の仕事や考えてきたことが、愛をもって溶け出して詰まっている温かいお味噌汁そのもののようなだなと感じた。
読んだことで、わたしなりにお料理やお味噌汁作りをして、自立して、自由になって、一度きりの人生を最後の時に「いろいろあったけど、楽しかった!」と思えるように過ごしていく決意をそっとすることができた。