東京と神戸、そして次のステージへ:柔軟な生活
お仕事を始めた当初は関西に住んでおり、仕事は自宅で行っていました。私が仕事を始めた頃は、はっきりと関東と関西の違いがあり、仕事が進むにつれて、関東の情報量の多さには圧倒されるばかりでした。しかし、当時は資金がなく、すぐに東京に移ることができませんでした。
仕事が徐々に増えていくと、自宅で仕事を続けるうちに、延々と働き続けるような状況が生まれてきました。
そんな中、とある方が独立された際に、「オフィシャルとプライベートをどうやって分けていますか?」と質問されました。その方は長年会社勤めをされており、切り替えがうまくいかないことに悩んでおられたようです。このような相談をよく受けますが、私は「フリーランスならオフィシャルとプライベートの境がないのは当然」と思っていたので、正直、驚きました。
私の場合、商品開発や講演、営業向けの資料作成などの仕事をすべて自宅で行っていたため、仕事の量が増えると、部屋は資料であふれ、自分のスペースがどんどん狭くなっていきました。
そこで、最初は自宅近くに仕事部屋を作ろうと思い、物件を探し始めました。しかし、ある方に相談したところ、「なぜ関西にこだわるの?東京にオフィスを作ればいいじゃないか」と言われ、その発想は私にとって新鮮でした。とはいえ、私の場合、契約が年ごとなので、翌年の収入がどうなるか分からず、ためらいもありました。
また、距離が離れれば離れるほど当然ですが経費も増えます。交通費の多くは顧問先が負担してくれますが、それでも費用はかさみます。
また、二拠点にすることで新たにストレスが生じないかと専門家に相談したところ、「やめておいたほうがいい」と言われました。「人間は動物なので、一つの身体が二つの場所にあると、ストレスを生みやすい」とのことでした。そして「それでもやりたいなら、3か月は熟考して決めなさい」とアドバイスを受けました。
3か月というのは、四季の節目を見て、季節が変わっても気持ちが変わらないなら決断しなさい、という意味だそうです。
最終的に二拠点での生活を選びましたが、かかる費用も慎重に考える必要がありました。最近では、ノマド的な生活やデュアルライフが一般化され、ずいぶんハードルは下がってきましたが、固定費については常に意識しておく必要があります。
まず、固定費の中で大きな部分を占めるのが家賃です。私は家賃を年収の15%以内に抑えることを目標にしました。通常、住居にかかる費用は年収の30%が目安ですが、二つの拠点を持つため、その割合を単純に二分割したのです。それでも、治安の良い場所で東京都内に住むには、それなりの収入が必要でしたが、逆にそれが毎年の目標となり、自分を鼓舞することにもなりました。
20年間、東京と神戸の二拠点で仕事をし、コロナ禍以降はWebミーティングが増え、父の介護もあって、最終的には東京の拠点を引き払いました。しかし、二拠点生活で得た経験は非常に大きなものでした。二つの拠点を持つ中で、時には疲労感もありましたが、そのたびに自分のペースで休息を取ることで長期間のモチベーションを保ち続けることができたのです。
そして何といっても、東京の情報量は圧倒的で、住んでみることでその多さを実感しました。改めて、東京は世界的にも通用する都市だと思っています。
次なるステージでは、どのような生活をするのか、まずは「試し住み」から始めるのも良いかもしれないと考えています。これは、私が海外の出店に際して現地の催事で何度かトライし、売り上げが確保できると判断した場合に出店するのと同じアプローチです。住む場所に関しても、すぐに移住するのではなく、まずはその土地で一定期間生活してみることで、生活環境や文化に対する適応具合を確認し、その後の決断に役立てるつもりです。
今後は、国内のどこかで新しい生活の可能性を探りながら、自分にとって最適な生活の拠点を見極めたいと考えています。このアプローチは、新しい場所での生活やビジネスに対するリスクを抑えつつ、柔軟に対応できる方法だと思っています。
とはいえ、最近の人たちは、ライフスタイルや住まいに対して、以前よりももっと気楽に考えているのかもしれません。私も、あまり気を張らずに、自分に合ったペースで新しい生活を模索していこうかなと感じています。何事もあまり固く考えすぎず、楽しみながら取り組むことが大切だと最近は感じています。