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努力の限界と可能性:ピアノから学んだビジネスについて


「努力すれば報われる」とよく言われますが、実際にはそうでないことも多いのです。
私はピアノを通して、努力では補えない現実を痛感しました。

実は、私がピアノを始めたのは遅く、中学から本格的に取り組み始めましたが、テクニックがまったく伴わず、ミスタッチばかりでした。頭の中では「こう弾きたい」と思っても、指が思うように動かず、そのもどかしさは計り知れません。

何とかテクニックを挽回しようと、練習に明け暮れました。
しかし、テクニックは筋肉が発達するに応じて身に着けるものであると知らず、いくら練習しても上達しないことに苦しみました。
「努力すれば報われる」と信じていましたが、それを諦めきれなかったのかもしれません。

大学に入っても、相変わらず弾けない、テクニックがないことで苦戦を続けました。
そんな中、ドイツの有名なピアニストのレッスンを受ける機会がありました。
先生は私の演奏を聞いて、「弾けないものは弾けない。弾けない箇所をいかに目立たせないように工夫することが大切。弾けないからと言って、そこに集中して練習してもダメなものはダメだ」と指摘されました。
それは私にとって目から鱗の一言で、一発玉砕されました。
それまで日本の先生からは、ただ「練習しろ」と怒られるばかりだったので、衝撃的でした。

音楽にはテクニック以外にも大切なことがあります。
それが「音」です。
音の大きさや音色はもちろん、身体が小さいと、良い音が出ず、遠くまで響かないこともあります。テクニックがあっても、音色以前の問題として、音が届かないのです。

幸運にも、私は体格が大きかったため、大きなホールにも対応できました。ホールで音の伝わり具合を確認し、その場に応じた音作りを心がけるようになりました。
ホールによっては、大きな音だと、割れてしまうこともあります。
そこで、腕から弾くのか、肩から腕を下ろして弾くのか、つまりテコの原理で弾き方を変える必要があります。
小柄な方は、テクニックがあっても対応できないことが多く、多くの有名なピアニストが男性であることには、こうした要因があるのです。

そして、残念ながら才能というものが存在し、スタート地点で決まってしまう世界でもあります。

長々と書いてしまいましたが・・・
この経験をビジネスに置き換えると、得意でない分野や知らないことがあっても、それは仕方のないことです。
重要なのは、得意なものを見つけ、それを強化して弱点をカバーすることです。

私の場合、経歴を見てもわかりますように、食の肩書がないのです。その為、それを補うにはどうしたら良いか、常に考えないと仕事に結びつかないものでした。

そこでまず自分の強み、音楽でいう「音を出す」というのはどこか。
「食のお仕事に携わりたい」と思う方の多くは、女性向けの提案をやりたいと言う方が多いのです。しかし世の中、半分は男性であり、食の世界は、男性社会であります。
いかに男性に対して、提案していくかを考えることも大切かと思っております。

自分の強みを活かして、弱点をカバーする方法を探りました。
例えば、私には「栄養士」の資格はありませんが、マーケティングや統計学の知識が強みになるのかもしれません。
「統計学から結果を紐解く」と話すと、「統計学はプロに頼めば良い」と言われることが多いです。
しかし、どんな統計学のエキスパートでも、その業界の価格や商品内容、動向を知らなければ、依頼してもアンケートの質問内容に食い違いが生じ、プロの分析でも正確な結果が得られないことがあります。また、その違いを説明するのも難しいのです。

次にマーケティングですが、「マーケティング会社に依頼したら良い」と言われることも多いです。これも同様で、参加する回答者がクライアントの求める層と違っていると、精度の高い内容にはなりません。例えば、あるマーケティング会社の回答者は30代が多いとか、女性が多いといったことがあり得ます。スーパーなどでは、レジのPOSデータで大方のことを調べていますが、まだまだ見落としが多いのです。

また、膨大なアンケート数があれば良いというわけでもなく、ピンポイントで分析することで十二分に精度の高い結果が得られます。そのため、依頼する側にも知識が必要ですが、素地があればコストを下げることが可能です。これらをアドバイスすることもビジネスとして成立します。

これまでマーケティング会社に依頼して感じたのは、その分野のエキスパートでも、企業と分析を結びつける際に何が必要かが分からないケースが多いということです。間違った分析方法を用いられることもあり、その際には「?」となることがよくあります。こちらも、食の動向を知った上で、必要最小限の統計知識を持つことが求められます。

つまり、まだ業界で掘り下げられていない分野と既存の分野を結びつけることで、新たなビジネスが生まれ、それが肩書にない強みや差別化につながるのです。


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