唐揚げ市場のリアル:唐揚げは価格設定がデリケート、競争を勝ち抜くために必要なこと
惣菜で思い浮かべる商品とは?
と問われると、多くの人が「唐揚げ」と答えるようです。
今や唐揚げは、どのスーパーや弁当専門店にも並び、
特にコロナ以降、外食業界からも多くの企業が参入し、
ますます注目を集めています。
しかしその後、外食からの参入組は、あっという間に閉店に追い込まれることが多いのです。
スーパーの関係者やバイヤーなどは、
外食が参入しても最終的には淘汰されることを予測していたのかもしれません。
外食企業が唐揚げ業態に参入した背景
コロナ禍以降、スーパーの唐揚げ販売状況は大きく変わりました。
スーパーでのばら売りが難しくなり、客が好きな量を選ぶ楽しみが減少したため、
唐揚げの価値も相対的に低下しました。
トングで唐揚げをつかんだ際に伝わる「サクサク」とした感触は鮮度の象徴ですが、
これがパックに入れた途端、衣が急速に柔らかくなるため、商品価値も下がってしまいます。
外食唐揚げ専門店の差別化ポイント
量とボリューム:
スーパーでは通常25gから30gのサイズですが、外食では1個50gにし、
ボリュームで訴求しました。
価格設定:
スーパーが100gあたり178円のところ、外食専門店では165円に設定し、
競争力を高めました。
揚げたて提供:
専門店ではピーク時でもカリカリの揚げたてを提供できる体制を整え、
他店との差別化を図りました。
しかし、売れないと一気にロスが発生し、経営の負担にもつながります。
また、専門店ならではの「二度揚げ」技術も導入されました。
衣を多めにつけて一度揚げた後、少し時間を置いて最後にさっと揚げることで、
肉の縮みを抑え、衣のサクサク感を保つ工夫です。
スーパーでもかつては行われていた方法ですが、
現在は多品目を扱うため、二度揚げのオペレーションが難しいのが現状です。
外食が閉店に追い込まれた理由
スーパーには生鮮三品が揃っており、他の買い物も一度で済ませられる利便性があります。
特に高齢化が進む中で、単一商品の専門店に出向くことは少なく、
生活圏内のスーパーで唐揚げと他の必要な生鮮品をまとめて購入する傾向が強まっています。
このため、外食唐揚げ専門店は小商圏での競争に直面することとなりました。
スーパーの唐揚げの進化
そしてスーパーでは、3か月ごとに唐揚げの見直しが行われ、味付けのトレンドも取り入れています。
ニンニク、麹、生姜、発酵エキスなど多様なフレーバーを試み、
焦げやすい醤油の代わりに脱色たまりを使い、香ばしさを保つ工夫もされています。
また、野菜のすりおろしを加え、柔らかさを向上させるなど、様々な改善が進んでいます。
また最近では、タンブリング工程が不要になりつつあります。
タンブリングとは、洗濯機のような装置で鶏を塩分と一緒に混ぜ、
空気を含ませることで柔らかく仕上げる方法です。
味付けは勿論のこと、衣の改善もありまして・・・
衣をあまりにカリカリになりますと、口内を傷つけないよう、丸みのある衣に仕上げているところも・・・
もちろん冷めてもおいしく感じる食感なども改良されているのです。
外食が誤解した唐揚げ市場
ある外食企業は、家庭でも簡単に作れると考え参入しましたが、
「朝から晩まで唐揚げのことを考えている方々に勝つのは並大抵の努力では難しい」
と痛感することになり、それほどスーパーの唐揚げは日々、進化しているのです。
唐揚げの価格と弾力性
そして、最後にもっとも重要なこと。
それは唐揚げの価格弾力性です。
コロナ後、鶏の価格高騰でキロ600円、700円と上昇し、
価格を上げるとたちまち売れなくなりました。
唐揚げは価格に敏感な商品で、顧客が当たり前に購入するため、
値上げに対して、唐揚げは非常にデリケートです。
価格変更がどう影響するかは経験から理解し、
実際の売上数を把握し、数値管理に基づく判断が重要です。
このため、クライアントからのデータ提供をもらうこと、つまり信頼関係が必要です。
最近では、その価格の許容範囲は、あらゆるところで重要とされ、強調されています。
その前に・・・・
クライアントや経営者にとって、商品の価格許容度についての知見はもちろん重要ですが、実はその前提となる基本的な事実を知らない方も多いのです。
価格の弾力性や唐揚げに対する顧客の敏感な反応などの理解があって初めて、適切なマーケティングや商品開発のアドバイスができるので、同じ感覚、温度が必要なのかもしれません。