胎内の記憶:双子が身体で憶えていること
わが家の双子はとっても食いしん坊です。
特に、小さく生まれた長男は、自分が食べたいタイミングで食べ物が口に運ばれないと、背中を仰反って大泣きします。
なんでかな。
なんでこんなに必死なのかな。
ある日、じーっとその様子をみながらぼんやりとその理由を考えてみたことがありました。すると、こんな考えが湧いてきたのです。
これはきっと、胎内の記憶、身体に刻まれた記憶なんじゃないかな。
1. 「一絨ニ羊膜双胎」いちじゅうにようまくそうたい
「一絨毛膜二羊膜」の双胎(双子)は、子宮の中で1つの胎盤を2人で分け合います。わかりやすく言うと、1つの胎盤から2本の臍の緒が伸びている状態です。(二卵性の双子は、胎盤が1人に1つずつあります)
1つの胎盤を2人で分け合う
このことによって、
◎双子同士が互いに常に輸血状態にある
◎臍の緒が胎盤のどの位置に付いているかによって、栄養に偏りが生じる可能性がある(どちらかに多く栄養が行き、どちらかが栄養不足の状態になる)
↑
これらの点が要因となって、生命に関わる重大な問題が生じるリスクがあると言われています。
2. ずっと小さめだった長男のこと
毎回の妊婦健診で、私は診察ベッドに横になると必ず、心の中でお願いしていたことがありました。
2人ともが無事に大きくなっていますように。
医師からは毎回の診察の後、長男の発育が気になると告げられていたからです。次男に比べて長男はなかなか身体が大きくならなかったのです。
先生はおっしゃいました。
「Bくんのへその緒が胎盤の端の方についていて、それで成長がゆっくりなのかもしれない」
(胎内にいる長男のことを先生は"Bくん"と呼んでいました)
常に栄養が十分に運ばれて来ない。長男はお腹の中にいる間、いつも飢餓状態だったのかもしれない。
そんなことに想いを馳せると、長男はやっとお腹の外に出て来られて、自分の意志で食べ物を求め、手を動かし、口を動かし、食欲を満たすことができるということには大きな意味があるように感じるのです。
3. 目の前の人のみえない背景に想いを寄せる
今、私の目の前にいるこの人がなぜそのように考えるのか。なぜそのような行動をとるのか。なぜそのような表情をするのか。
理由はさまざま。そしてその中には、【胎内の記憶】というのも、もしかしたら含まれているのかもしれないな、なんて。
語られない背景。表面には見えてこないけれど、たしかにその人が歩んできた道のり。置かれた状況、生まれ落ちた場所、生き抜いてきた関係。
そういったすべてのコンテクストの網の目が結合するところに、今、わたしたちは在る。
そう考えると、私たちは誰一人として同じではなく、だからこそ、皆々尊い。
私たちの唯一性を構成する事象の全てに、尊き意味があるのだと思えてくるのです。
生命の神秘。