ブラームスはお好き
ここのところわりと見ている「モーツァルトインザジャングル」。Amazon primeのオリジナル作品のなかでも一番のお気に入り。ニューヨークの名門オーケストラで新たにタクトを振ることになった若き天才指揮者ロドリゴと、オーボエ奏者を目指すヘイリー、彼らを取り巻く個性的な面々が織り成すコメディです。
狭き門にいつまで挑み続けるべきか、自分には夢を叶えるだけの才能があるのか、揺れるヘイリーの気持ちがあまりによくわかるので、なんかこっちまでいちいち一喜一憂してしまう。途方もない夢を見ていられるのは、いったいいつまでなんだろう。自分が何者にもなれないかもしれないと思う彼女のそばには、世界から選ばれた天才たち、夢を手にした人たちが集う。その苦しさと、心のもう半分が感じる幸せ。
クラシック音楽に対して初めて持った強烈な憧れは、いまでも鮮明に思い出せる。オーケストラに入った18の春。その夏の演奏会のプログラムだった、ブラームスの交響曲第2番。ここにない世界を現出させられるオーケストラの魔力に、すっかりまいってしまった。いつか舞台に立ちたい、いつかあの曲を弾きたい。わたしはアマチュアだから、ヘイリーほどの切実さは持たなかったとは思うけど、彼女の夢の原点にある衝動には、多分わたしも触れたことがあると思うんだ。
ヘイリーがルームメイトとその彼氏と、クラシック音楽のポッドキャストを撮影しに行ったシーンとか、地味にグッと来るものがある。偶然出逢った伝説的なオーボエ奏者に、彼女が感じた畏敬と情熱。好きなものをまっすぐ好きでいたいと願って進んできたはずの道に、迷いが生まれ始めた彼女は、もう一度自分の原点を思い出す。
クラシック音楽という扉が彼女の前で初めて開いた瞬間に、きっと彼女はすっかり魅了されてしまったんだろう。何百年も前の、言葉も通じない国で生まれた音楽。ひとつひとつの曲のなかに立ち現れる世界。そうして作曲家の頭のなかに鳴り響いたものを、丹念に再現していく興奮。
ときどき思うが、もはや神の領域に近い音楽なんである。その美しさを知る、才能ある若者にはぜひ全力で頑張ってほしい…って感情移入しすぎたな。
このドラマ、選曲も幅広くて、またCD漁り再開してしまいました。Amazonの術中にはまってるなぁ。