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書き出しで組み敷かれる小説

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書き出しだけでもう作者に組み敷かれている小説
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たましいの、抜けたひとのように

書き出しだけでその作者に組み敷かれるような小説について。

太宰治
「おさん」
新潮文庫『ヴィヨンの妻』収録

書き出しだけ、書き出しだけと思いつつ、ここまで引用してしもた。
ひと息に話す女の人のこれまで抑えていた胸のつかえがギンビスアスパラみたいに口からはらはら落つるよな。

「お皿を取落とすほど淋しく」
身体の心柱が落ちて、手足が冷たくなる、失望の感覚。
このとききっと、血は冷たく滾っている。

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