きっかけ

私がSに目覚めたきっかけがある。

それは忘れもしない小学校4年生の時。

私は仲がよかったYちゃんという女の子がいた。

いつも一緒に遊んでいた。Yちゃんは猫を飼っていて気が強く我儘で友達も少なかった。

そんなYちゃんの好きな人が、Tくん。

Tくんは背も低く、大人しくまじめなタイプ。なぜTくんにYちゃんが惹かれたのか理由はわからない。

T君とは私も仲がよかった。

放課後、教室に私とYちゃんとTくんが残っていた。

YちゃんがTくんに激怒していた。

私はわけがわからなかったのでYちゃんに怒っている理由を聞いた。その内容はYちゃんがTくんに「私のことを好きと言え」と怒っていたのだ。

Tくんは泣きそうな顔で机をがっちりと両手で掴み「いやだ」と言っている。

私は怒っているYちゃんをよそに、Tくんに好きな人はいるのかたずねた。

Tくんは頷き「○○さんも好きだし、○○さんも好きだし、○○さんも好きだし、eriさんも好き」と言った。

私は心の中で「おいおいおいおい」と思った。(ちゃっかり私の名前入ってるし!)

それを聞くと、Yちゃんは泣きながらコンパスを手にした。

「私の事好きって言え!」

そう言いながら、Yちゃんはコンパスの針をTくんの腕にあてがった。

小学生の私はビックリしすぎて言葉を失っていた。

「いやだ!」

Tくんが泣きながら叫ぶと、Yちゃんがゆっくりとコンパスの針に力をこめていく。コンパスの針がTくんの腕の皮膚を突き破っていく。

紅い小さな丸が、コンパスの針が刺さったあたりから滲み出てくる。

Tくんの血液だ。

「好きだって言え!」「いやだ!」

それを繰り返している2人。

私は、それからの記憶があまりない。

多分、Yちゃんを止めていた。

コンパスの針が、食い込むのに泣きながら耐えているTくん。

私はその姿に、自分の脳が痺れるような感覚を覚えた。

私を好きだと言った男が、泣きながら痛みに耐えている。

その官能的なシチュエーションは私をSに目覚めさせるには十分だったに違いない。




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