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「じぶん編集」の授業

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美術大学で学生に伝えている、デザインにおける考え方やコミュニケーション、健やかに生きていくための思考方法のまとめ。「じぶん」を再発見する為にどんなことを普段授業でしているかをご紹…
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#じぶん編集

育児から学ぶ「やさしい伝え方」

この半年、生活の景色が変わると同時に、じぶんの中の価値観も変わってきました。一言でいうと「不安」と「自由」が一緒にきた感じ。でも、そもそもいつでも「自由」とは「不安」とトレードオフで得られるものなんだとも思います。 仕事においても環境が変わってきました。極度な合理設計と過去のデータの組み合わせによる未来予測は、もはや人間の仕事ではないと思いますし、そこにしか価値と可能性を見出せないビジネスは、短期的に終わってしまうと感じています。時間とお金だけを追い求めるビジネスからのシフ

オリジナルの在り処

「これのオリジナルは二十年くらい前のアレだね」「私のアイデアが盗まれました」「これってイギリスのあのデザイナーのパクリなんじゃない?これは文化の盗用だ」などなど、今も昔も日々いろいろなところでパクリパクラレ論争が起きています。かくいう僕自身もアイデアをパクられたこともありましたし、今書いているこの文章が誰かに「私のパクりに違いない」と思われているかもしれません。 ------ 👩「クマ先生、先日弊社で企画開発したアプリが、ライバル会社に真似されまして。完全コピーというわけ

リモートを続けてふと思う、オフィスって何だったっけ

この数ヶ月、生活の景色が変わると同時に、じぶんの中の価値観も変わってきました。一言でいうと「不安」と「自由」が一緒にきた感じ。でも、そもそもいつでも「自由」とは「不安」とトレードオフで得られるものなんだとも思います。 仕事においても環境が変わってきました。極度な合理設計と過去のデータの組み合わせによる未来予測は、もはや人間の仕事ではないと思いますし、そこにしか価値と可能性を見出せず投資できないビジネスは、短期的に終わってしまうと感じています。時間とお金だけを追い求めるビジネ

みんなの共感を呼ぶのは 理屈なく「好き」という熱量

noteで連載しております「じぶん編集」の授業が書籍化され、10月25日に発売しました! 今回は、この『うまくやる〜コミュニケーションが変わる25のレッスン〜 』の第4章の一部を公開します。 ーーーーーーーーー みんなの共感を呼ぶのは理屈なく「好き」という熱量 どんなに役に立つ情報よりも、どんな にいいこと言っている投稿よりも、人を惹きつけるのもの、それは「熱量」です。人のニーズは関係なく、じぶんが好きだと思っているからやっているという「熱量」こそが

はじめてのことをうまくやる4つのステップ

noteで連載しておりました「じぶん編集」の授業の書籍が本日10月25日に発売しました! 今回は、この『うまくやる〜コミュニケーションが変わる25のレッスン〜』の第3章の一部を公開します。 ーーーーーーーーー はじめてのことをうまくやる4つのステップ 「はじめて」のことって、つい緊張し、構えてしまって、うまくいかないことが多いものです。しかし、どんなにはじめてのことでも、手順さえしっかり踏めば、失敗せずに、良い結果が残せるものなのです。まずはそ

「なんかいいなぁ」と思わせるシズル感の見つけ方・使い方

noteで連載しておりました「じぶん編集」の授業の書籍が10月25日に発売します! 今回は、この『うまくやる~コミュニケーションが変わる25のレッスン~ 』の第2章の一部を公開します。 ▼第1章の一部公開はこちら▼ ーーーーーーーーー 「なんかいいなぁ」と思わせるシズル感の見つけ方・使い方 コマーシャルで目にする炊きたてごはんの湯気、ビールのポスターに出てくるジョッキやグラスの水滴、人間をより健 康的に若々しく見せるお化粧。全ては、そのものをよりよく見せ

置かれた環境が向き・不向きをつくる

noteで連載しておりました「じぶん編集」の授業の書籍が10月25日に発売します! 今回は、この『うまくやる~コミュニケーションが変わる25のレッスン~ 』の第1章の一部を公開します。 ーーーーーーーーー 置かれた環境が向き・不向きをつくる 「じぶんは不器用だから細かな作業に向いていない」「じぶんは口下手で人と話す仕事に向いていない」。 向いている、向いていないは、生まれ持った能力と、個々のスキルの問題ではなく、実は自分の置かれている環境に大きく影響されるものなので

書籍化が決まりました。

この度、noteで連載しておりました「じぶん編集」の授業が、あさ出版より書籍化することになりました!今月10月25日に発売予定です。 京都精華大学デザイン学部で教えはじめてから10年を過ぎたあたりで、カリキュラムの試行錯誤も一段落し、10年教えている間、ずっと生き残ってきた定番のネタが出来上がってきました。それを、まとめて書籍化したいという思いが出てきて、試しにこのnoteで書き始めたのが2018年の春。その後、お世話になっている方から出版社の方をご紹介いただき、2018年

難しい話は、かんたんに

「グローバルデジタルソリューションの中で、弊社は弛まぬ探究心と技術力で、ベストインテリジェンスをリードし、グローバル社会で新たな価値を創造することをミッションとして、お客さまと共に歩んでまいります」 「なんなんですか。それ。意味がわからない言葉がいっぱい」と学生。 「これ、みなさんが就職する会社の理念だった場合。そしてこれを朝礼とかで音読する場合。みなさんはどんな風に思いますか?」 「さっきも言った通りで、何か具体的なこと言っているようで言ってないと思います。全部の単語

「またご飯でも!」を、もうひと押しすると関係が進展すること。

「今日の授業は、ちょっといつもと違うことを話しますね。みなさんは、人とばったり会う、人とネットで久しぶりに何かしらやりとりする、ずっとお話したいと思っていた人と話せる機会ができた、なんてときの別れ際、もしくはやりとりの最後の部分で『またご飯でも!』なんていう挨拶をしたことありませんか?」 僕の問い掛けに対して学生が答えます。 「ごはんには誘わずに、シンプルに『またね』と挨拶することが多いかもです」 「確かにみなさんは『またね』の方が多いかもしれませんね。 でも社会人にな

後ろ向きにマクドナルドまで歩く授業

最近新しく始めたことって何かありますか? だいたい、年初め、年度初め、誕生日なんて日から何かを改めたり、始めたりする方は多いと思いますが、ぜひその際は知識を得るだけの行為ではなく、体験、行動を伴うようなことを始めていただきたく思います。 学問なき経験は経験なき学問に勝る、といいますが、これに僕は心底同感します。 机上対現場、どちらの方が人の記憶に残るかというと、圧倒的に後者ですし、実際に自分の学生時代の記憶を呼び起こしてみても(じぶんが聡明でなかったせいもあり)座学よりも、

いいね!と思う人と悪いね!と思う人は同じ数いる説

1.「自信がないんです」 2.「怖いんです」 3.「実力がまだないんです」 どうして自身の作品ををアピールしないのですか?と美大生に聞いたときの返答は、だいたいこの3つです。今日は「称賛と批判」についての授業です。 「さてみなさん。1.自信がないことと、2.怖いことは批判されることへの恐怖ですね。ここでひとつ確認をしたいのですが、この考えのベースには、自分の努力次第で批判より称賛を得られるという考えを持っていませんか? 例えば、10人に何かしらのアプローチをかけて、はじ

じぶんカメラの話(2)

今回は、前回の授業の続きです。 『じぶん自身を見るカメラ』に続く、『世の中を見るカメラ』の話です。 - - - 「コミュニケーションって、憑依(ひょうい)することだと思うんです」 はい。憑依という言葉が強すぎるのがわかっていながら、そういう表現をいたずらに使いたいだけです。とはいえ、学生の怪訝な表情を察知すると『通じないとマズいぞ』と弱気になり、すぐさま別の言葉で言い直します(笑) 「違う言い方をすると、他の人の視点、すなわち他人のカメラをハックすることとも言えます」

じぶんカメラの話 (1)

人は写真に写るとき、ちょっとでも良く写ろうとします。 笑顔をつくったり、顔が小さく見えるようなポーズをしてみたり。 あれって、誰のための、何のための演出なのでしょうか。後でじぶん以外の人に見られて恥ずかしくないように、なんて対外的な理由として、じぶんを納得させてしまいがちですが、本当はじぶんの写っている写真を見返すのは、本人がいちばん多いのではないでしょうか。 となると、より良く写りたい願望というのは、未来のじぶんが写真を見返したときに、過去のじぶんを肯定したいという気持