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小袋成彬『分離派の夏』

※去年の秋に書いたものですが公開をし忘れていました。
 
 日本の多くの人にとって常夏のイメージがある沖縄ですが、ここ最近の朝と夜は「す、涼しい…かもしれない…」と思えるような、ささやかな季節の変化を感じます。とはいっても、日中はまだまだ暑く、畑に植えたレタスやトマトは、日を浴びるとうな垂れるように萎んでいますが…

 そんなささやかなすぎるほどの秋を感じる沖縄で、若干季節外れかとは思いますが、僕が夏場には毎年、必ずと言っていいほど聞くアルバム、小袋成彬『分離派の夏』の感想をかいてみたいと思います。

 『分離派の夏』は、2018年に出された小袋成彬のデビューアルバムで、なんとあの宇多田ヒカルもプロデューサー、ボーカル、エンジニアとして参加しています。スキットを含めると全14曲の本作では、小袋自身も全ての楽曲で作詞作曲していて、多彩なセンスを感じるものとなっています。

 楽曲では、おそらく実体験に基づく、仕事のことや親や家族との関係、昔の恋人とのノスタルジックな思い出を情緒的な言葉で、私小説的に描いています。アルバム全体に統一感があるかどうかは分かりませんが、歌詞がとても良く練られていて、一曲一曲からその時期の小袋成彬が感じていたことが伝わってきます。

 また、R&B /ソウルといったブラックミュージックの要素を感じるところもあり、HipHopとの親和性が高いなと感じました。実際、その後のアルバムで5lackやThojiと共演したり、ラッパーのプロデュースを手掛けたりしていて、HipHopが好きな僕としてはとても嬉しく思います。

 最初は「宇多田ヒカルと曲出してるじゃん聞いてみよ」的なミーハー丸出しで手に取ったアルバムでしたが、小袋成彬と同じ世代ということもあり、私自身が私生活に抱いていた感情の一部を歌詞、または語りや音として表現されていて共感する部分が多くありました。アルバムのスキットとして、小袋成彬の友人による語りが入るのですが、これもまたよかったです。正直、この語りの部分は最初、すっ飛ばして聞いていたのですが、通勤中の車の中で、たまたま流れてきた語りの内容に労働者である私も心動かされる部分があり、その語りを含め、思い出に残るアルバムとなりました。

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https://music.apple.com/jp/album/%E5%88%86%E9%9B%A2%E6%B4%BE%E3%81%AE%E5%A4%8F/1538134119

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