生成系AIの現在位置
なんだか月刊誌の連載のようになってきましたが…
今回はまとめの回にしようと思ってます。もし一連のブログ記事を全4回の短期集中連載と考えると、各回のサブタイトルは次のようになりそうです。
第1次AIブームと現在の歴史的相似
生成系AIは機械翻訳技術の発展系
AI倫理:人々はチャットボットに何故ザワザワするのか?
生成系AIの現在位置
ということで…
今回は、ChatGPTに代表される生成系AIの現状に触れながら、少し考察し、最後にタイトルの質問に対する僕の意見を書いてみます。
生成系AIの現状
まずはNRIが公開している「日本のChatGPT利用動向」です。
このグラフは2023年6月時点とちょっと古いのですが「5月に入り横ばいになりつつある」と報告しています。その後の利用動向は公開されていないので7月以降のアクセス数はそのままの横ばいかかもしれません。
次に先月公開されたイギリスのシンクタンクであるガードナーのハイプ・サイクル2023も見てみましょう。
ハイプ・サイクルはマーケター・サイドの分析概要、平たく言えば「今後、人気が出る可能性のあるIT新技術の現状と期待値」をグラフ化したもので、エンジニアリング的には必ずしも正確な内容ではないものです。
ちなみにこのグラフの読み方の詳細説明はこちらをみてください。
以上、NRIとガードナーのシンクタンク2社の資料では、ChatGPTを代表とする生成系AIは現状で「過剰な期待」のピークに位置し、「幻滅期」に突入するのも時間の問題だと分析しているように見えます。
生成系AIの普及が伸び悩んでいる理由
確かにChatGPTも今年の1月〜3月のような状況は脱し、横ばい状態になっている印象がありますね。その理由について考えていたら、Quora で次のような質問を見つけました。
回答の中の「それっぽい事を言って来るだけで、正しいか正しくないかいちいち判断しないといけない」という指摘には、僕も同意です。確かに配属されたばかりの新人にOJTをやっているようなイライラ感を感じますね。
先のガードナーは生成系AIについて次のようなレポートを公開してます。全体としてはメリットをアピールしている印象ですが…
問題点に関しては生成系AIの応答は「予測不能であり、サービスを提供する企業でさえその動作に関して常にすべてを把握しているわけではない」と述べており…
時折に不正確、捏造、バイアスがかかった内容になる場合がある
知的財産と著作権を保護・保証する検証可能な仕組みがない
サイバー攻撃や不正行為に使用される可能性がある
といったリスクを指摘しています。実は次の法曹関係者のシンポジウムでもほぼ同じ内容で論点が整理されているようです。(詳しい内容はページ内の講演資料のリンクから参照してください)
ということで「ChatGPTは生成系AIの技術的可能性を示したものの、現状では社会的コンセンサスを得るまでには至ってない」との理解が正しい現状認識なのではないでしょうか?それが生成系AIの普及が伸び悩んでいる理由だと僕は思います。
先生、ChatGPTは人間の仕事を奪うのですか?
思い返せば…Google 検索を始めとするウェブ・コンテンツをクローリング(スクレイピング)するタイプの検索サービスが登場した時も、コンテンツの著作権侵害の議論があったように思います。あの時は「クローリングしたコンテンツはそのままキャッシュしているだけ」と解釈して、コンテンツの所有者が検索サービスのクローリングを拒否する手段を整備することで、社会的コンセンサスを得たような記憶があります。検索サービスが商業ベースで本格的に普及し始めたのはコンセンサスが成立した後のことだったかと。生成系AIの場合は、クローリングしたコンテンツを言語モデルの一部として取り込み、その言語モデル全体から新たなデータを生成するという仕組みですので、著作権ロンダリングの装置のように見えなくもないですね。著作権問題ひとつをとっても検索サービスと比べてさらに難しい議論をすることになるのだろうなぁ…と素人ながらに想像しています。
生成系AIの法規制は諸々のリスク回避ための制限を課する方向でまとめられると聞いてますが、そう考えると最終的にはマイクロソフトの Bing AI のような「ナチュラルな文章で応答する検索エンジン」に集約されてしまうようにも思います。それ以上に高度なAI、例えばAGIなどは「研究するのはOKだが、サービス化はNG」みたいなことになるのではないでしょうか?
なので「ChatGPTを始めとする生成系AIが人間の仕事を奪うことはない」が僕の結論です。チャットボットELIZAは、その後風変わりなゲームとして広く認知されました。ChatGPTも単なる作文のお助けツールとして定着するのではないでしょうか?第1次AIブームの時のように…
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