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引っ込み思案の生まれ変わり

嫌なことを嫌と言えず、笑って曖昧に濁す悪い癖があった。20歳のわたしはなんとそれを大人な処世術と思いこむ始末だった。

学生のころドイツに憧れ、バイト代を貯めて一週間ひとりで旅行に行った。

ミュンヘンに行って体のでかいおっさんやお兄さんに声を掛けられた。どこにいくの?お茶をしようだとか君の泊まる部屋にいきたいだとか。アジア人女性だとなめられやすいのだろう。

怖かったけど笑っていたら手を引かれて地下鉄やバスに乗せられ何時間かウッカリ一緒に過ごしてしまって、やっと「嫌と言わないと私が危ないのか」と気付いた。拒否をしなければ都合のいいようにされてしまうのだ。おっさんに「中央駅に帰る。わたしは帰る」と言い、おっさんが違う方向を向いている間にダッシュで振り切った。その後、屋外でビールを飲んだ。ビールは苦手だったのに飲んだ。すこしだけ逞しくなった気分になった。

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