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SELの導入や推進で大切なこと

 私が情動知能(EQ)を本格的に学びはじめたのは2010年頃です。その後、2013年にシックスセカンズの門を叩き、SELに対する深く広い学びがスタートしました。
 シックスセカンズ(Six Seconds)は、1994年(日本では1995年)に発刊された『EQ こころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン著)の本の第15章「情動教育のかたち」で紹介されたSELの先駆的な学校であるヌエバスクールの創設者たちが、ヌエバスクールで培ったSELの知見を世界中に広める団体として設立した米国NPOです。
 私は、ヌエバスクールの元校長で現在はシックスセカンズCEOを務めるジョシュア・フリードマンや、ヌエバスクールやシナプススクールのプログラムディレクターを務めSELプログラム「セルフ・サイエンス」の生みの親であるアナベル・ジェンセンから直接SELの学びを得て現在に至ります。

今回は、SELの先駆的役割を果たすシックスセカンズでの学びと推進中のプロジェクトをはじめとする日本国内の経験から、SELの導入や推進で大切と感じたことをお伝えしたいと思います。

「教える」から「学ぶ」へ


 SELの学びで最初に衝撃を受け、とてもワクワクしたのは「教える」ではなく「学ぶ」をいかにデザインするかが大切であるということです。
 ここで「教える=Teaching」と「学ぶ=Learning」は、その言葉が違うので意味も違います。私が得たここでの「学ぶ=Learning」は、「学習者が自らの体験を振り返り深い洞察から気づきを得ること。その気づきを応用したり再現できるように抽象概念化すること」を意味します。学習者はSELの場合、主な対象者は子どもや生徒になるでしょう。

 情動スキルや社会性のスキルは、知識付与ではないため、教えることができません。先に書いたように学習者が「学ぶ」ためには、いまでは日本でも聞かれるようになった経験学習や、アクティブ・ラーニング、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)などによって講座(授業)をデザインすることが求められます。

ファシリテーターへ


 「セルフ・サイエンス」の生みの親であるアナベルは、繰り返し私たちにこう言います「最良の教育者とは、最良のファシリテーターです」と。
SELを導入・推進するためには、教育者の役割も教える人であるTeacher(ティーチャー)から学びをデザインするFacilitator(ファシリテーター)へ変わっていくことが求められます。

 SELの導入において教育者は、経験学習やアクティブ・ラーニング、PBLによる学びをデザイン(=事前準備)し、学ぶ場をファシリテート(=教室で実践)します。ファリテーションによる学びに予定調和はなく、ハプニングや私たちの予想をはるかに超えた子どもたちの反応やアウトプットがあります。その場の状況に適切にフィードバックし、深く広い学びにするためのファシリテーションスキルが求められます

 SEL導入の初期段階では、それまで馴染んだ「教える」をやめて、生徒が自ら学ぶ力があると信じて学びをファシリテートするために、教育者自身のマインドチェンジが求められるために不安を感じて難しく感じる局面があるかもしれませんが、オープンに受け入れるマインドさえあれば、それは新たな学びや気づき、感動を生徒ともに分かち合うとても楽しいものになります。

学習者・実践者であり続ける


 また、SELの導入で最も大切なこととしてSELの先駆者から「あなた自身が、一番の学習者であり、実践者であり続けることを忘れてはならない」という言葉を授かりました。

私自身も学び続けています。そこには終わりがないのかもしれません。より具体的な内容は実践事例を交えて別の機会にお届けしたいと思いますが、今回はSELの導入に際し基礎となる2つのスキル習得についてご提案します。

・ファシリテーションについて学びましょう
 教職員同士でファシリテーターと学習者をロールプレイする自主的な勉強会やSELを実践している教育者を招いたファシリテーションによる学びの体験会からはじめると良いでしょう。
・「情動スキル」や「社会性」に対する正しい知識を身につけましょう
 情動とは何か、情動スキルとは何か、それらはなぜ必要か、専門家や専門書による基礎知識の修得と教職員同士の対話による自己理解の深化(自分の言葉で話せるようにする)を行うと良いでしょう。情動や社会性については、思い込みや誤った浅い知識は、かえって弊害となります。

日本でも専門的に学べます


ご参考までに、米国NPOシックスセカンズの日本オフィスであるシックスセカンズジャパンでは2022年4月から日本向けにSELプログラムである「セルフサイエンス」が学べる国際認定プログラムの提供を開始しています。世界をリードするSELプログラムに触れてみるのも良いかもしれませんね。
https://6seconds-cart.com/item/eq-educator1

一般社団法人 日本SEL推進協会 理事
一般社団法人 感情活用研究会 理事
シックスセカンズジャパン データ分析センター フェロー
株式会社THdesign 代表取締役
三森朋宏

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EQ|SEL|非認知能力|専門家|三森朋宏
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