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テクノ新譜試聴メモ:2022-02
今月はたくさんあるのですが、まずはニューアルバム"Sell_by_Date"も出たNeil Landstrummのロンドンでの最新ライブ映像がYouTubeで公開されていて、超かっこよかった話から。
Octatrack 1台のとても地味なライブなんだけど、もうデビュー以来30年近くまったく変わらない、レイヴ/ベースミュージックを起点に展開する独特のブリーピーな音世界。まさしく職人! 右下の、本人以外誰にも分からないであろうカンペの存在感よ。
新しいアルバム、もうとっくにわたしの手の届かない領域へ行ってしまってDJで使うという感じではないんだけど、いつも新作は楽しみにしている。高校生のときからずっとヒーローですね。
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変わらないカッコよさといえば、BUBBLE-B feat. Enjo-Gさんの新曲、その名も『ドラッグ大好き』! これは問題作ですよ。
骨太のバックトラックに乗せて唯一無二のデスボで単語を連呼するというスタイルで20年くらいやっておられて、あんまり言わないけどずっとファンです。最近またクセになっちゃって、昔の動画をよく見ている。やっぱ、時代や機材が変わっても、根っこの部分を変えずに…というか「どう作ってもそうなっちゃう」みたいなことをやり続けるのが一番かっこいいな、とつくづく思うわけです。
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さて、海外では続々と自粛ムードが解禁されているそうで、例えばマドリッドのFabrikで行われているテクノパーティー"CODE"は見たところもう以前の通り。海外のDJを招いてのギグも再開しているらしい。いいなあ。
F A B R I K TECHNO pic.twitter.com/QDf6dLb2uJ
— Cisco ferreira (@ciscoadvent) February 20, 2022
そんな中、Arminあたりは"We Can Dance Again"という再開したパーティーでウケそうなキャッチーなトラックをちゃんと用意していて、さすがなんですよね。まるでこの2年間を丸々長めのブレイクみたいに使っていて、こんなの絶対盛り上がるよ。日本もあと少しの辛抱だと思いたい。
以下、2月の新譜から。
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Sorcery - Viper Reflex [In Silent Series]
通好みの渋いキュレーションで注目しているIn Silent Seriesレーベルの新譜から、この曲がかっこ良かった。もつれるようなビートがテクノとドラムンベースの境界を曖昧にさせる。
SorceryはドラマーのMerlin Ettoreによるプロジェクトで、他にこういうのがないかと過去作を漁っていたら、2019年に発表された"Orbature"という曲がヤバかった。一歩踏み出すとブレイクコアとかになりそうだけど、別にエクストリームさを志向しているわけではなさそうで、その実験精神はテクノといえば間違いなくテクノだ。画面がめちゃくちゃ点滅するので注意!
Lucinee - Bang Juice (MRD Remix) [Voxnox]
バキバキの若いテクノで元気なVoxnoxのオールスター的レーベルコンピから、ArtsからもソロEPをリリースしているノルウェーのニューカマー、MRDによるリミックスワークが良かった。90年代後半のジャーマントランスを彷彿とさせる、アシッドなベースラインにきらきらしたパッドが乗った明るいハードテクノ。こういうピュアな気持ち忘れていたかもしれない。ナイス。
RNGD - Hidden Funk [Tronic]
Tronic最近またフレッシュで良くて、ついこの前ANAØHから超かっこいいEPを出していたスペインのRNGDをピックアップしていて唸った。909ハットとクラップが歯切れよいこの曲が一推し。強いグルーヴ。
Damon Vallero - Face This [Electracom]
Damon ValleroのElectracom新譜!と思ったら、00年代前半のデジタル未発表曲をコンパイルしたEPだった。ヘヴィーな音像の隙間を縫うように複雑なウワモノシンセが絡んでくる、当時から完全に好きだったDamon Valleroの音で、嬉しくなっちゃった。今またきっと光る曲だ。
Hoedus - Forbidden [Non Series]
精力的にリリースを重ねるスペインのヒプノ系テクノレーベルNon Seriesの新譜は、IoriさんとイタリアのHoedusのスプリット盤。全曲ドープでかっこいいけど、サイケデリックさにおいて際立っているA1のインパクトがすごい。脳がビリビリ痺れるのを感じる。
Rhythm Assembler - Ritmica [Methodical]
レーベルオーナーMTDによるRhythm Assembler名義のEPから。ほど良く歪んだビートと抑制的なシンセ、タイトな展開で引っ張っていく走ってるテクノ。
Uncertain - Charge [Suara]
元Boriqua Tribezとして知られるベテランUncertainのSuara新譜。がっつり潰したサウンドに声ネタが絡んでくるシカゴ直系のパンピンな4トラックで、甲乙つけがたい。どの面をかけても間違いないやつ。
Ecilo - Black Paradygma [Planet Rhythm]
ジャカルタのEcilo自分のなかでずっと来てますね。熱い。もう少し派手めのアシッドな曲もあるけど、いかにもB面っぽい内省的なフレーズとソリッドな縦ノリが気持ちいいこの曲が良かった。
Sam KDC - Prophecy Unfurling [Auxiliary]
127.5/170bpmのグルーヴを究め続けているSam KDCのAuxiliary新譜。ダークなムードのなかにもブレイクビーツ的なガチャガチャ感が心地よいトラックで、ぼんやり聞いているとダビーなゆるさだけどそのまま4つ打ちテクノにスライドできる解釈の広さを持っているグレイエリア。
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今月取り上げたトラックはSpotifyのプレイリストにまとめてあります。
「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。