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テクノ新譜試聴メモ:2023-01

2023年1月の新譜チェックです。

日本を代表するDJ Shufflemasterさんの2001年の名作アルバム"EXP"が、オリジナルのレーベルであるTresorから装いも新たにリイシューされました。22年ぶり!

オリジナル盤に収録されている全曲に加えて、Angel Gate EPからSurgeonのリミックスを加えた3曲、"Innervisions"のパイロット版などを盛り込んだ全17曲の決定版。わたしは本作は、ある意味でテクノの「完成形」のひとつと考えています。抜群の音の良さはもちろんのこと、90年代にジェフ・ミルズが蒔いた種がヨーロッパを経て遠く東の日本にまで届き花開いたという意味で、ハードミニマルという価値観、美学の終着点のようなところがある。まだ聴いたことのない方にはぜひおすすめします。超・かっこいい。

2001年の金森さんはすごくて、"Geylang"や"Tokyo Rose"もこの年だったことを考えると、本当にこの頃にはやり尽くしてしまったんだなという気すらします。暗闇のなかで躍動する音。瞑想的でストイックな反復の向こうに、ギラギラしたエモーションが浮き沈みする。今の耳で聴いてもまったく古くさく感じない普遍性、説得力が明確に音自体にある。

わたしはもちろんオリジナルを持っているけど、今回のはどうしようかな。コレクターズアイテムというか愛蔵版であることは間違いなくて、しかしこういう再発を物理で買い始めるともう際限がなくなってしまう…。でも新しいビジュアルめちゃめちゃ世界観に合っててクールだしな。

Tresorは今年3月にはSurgeonの5年ぶりのテクノアルバムのリリースも告知していて、先行トラックが公開されています。楽しみ。

Viels - Distorted Reality EP [Dynamic Reflection]

Warm UpやNon Series、Edit Selectからも出しているイタリアのVielsの新譜が4曲とも熱い。最高に仕上がっている密度の濃いボトムヘヴィな音像で、複雑にレイヤーされている上モノのアイディアも変化に富んでいて飽きさせない。全曲A1みたいなEPだね。

Ness - Levare [Lotus Parable]

イランで生まれ、キプロスでオープンエアパーティーLotus Paradiseを主宰するHani Samaが立ち上げたレーベルの初コンピレーションは、特に良質のディープ&ヒプノティック系テクノをコンパイルした佳作でした。Nessのこの曲は、這うように地底から湧き上がってくる極太のベースラインが歯切れ良い裏打ちの縦ノリと絡み合って気持ちいい。サイトに掲載されていたレーベルの旗揚げに至るストーリーが面白かった。

V.A. - Desert Flowers [Duna]

ヒプノ・ロウ・テクノで個人的に大注目している、イタリア生まれのSimone ScardinoことConceptualが率いるDunaレーベルの初のコンピ。ラインナップにMike Parker、Stanislav Tolkachevを迎えるなど気合いが入っている。どれもビキビキしたシンセが脳に直接届いてよく効く。わたしはここでもやはりConceptual自身の作品が重くて不穏でめちゃ好きですね。

Pfirter - Acceptance [MindTrip]

モダンハードミニマルの雄Pfirterが、自身のMindTripからリリースした新作のうち2曲がグレーエリアで驚いた。ずぶずぶハマっていきそうな宇宙的グルーヴ。完全に流れ来てますね。

NØRBAK - Verdade Absoluta EP [Mord]

お馴染みMordからポルトガルのNørbakの新作6トラックEP。とにかくキックが重い! うねるような轟音の低音が作り出す前のめり感のなかで、オールドスクールなベル系の低音が催眠的に繰り返すタイトル曲が好き。

Last Life - Astral Tribe [LL SERIES]

硬派な前衛ドラムンベースのLast Lifeの新曲、ダブ~ハーフステップにトライバルで呪術的なサウンドも混ざって、いよいよジャンル不明の境地へ行きつつある。Bandcampで先行リリースされていたものがBeatportでも出た。かっこいい。

Lidvall - Still Mad [Selected Records]

マドリッドのSelected Recordsから出たLidvallのLPから、ひたすらに重く直線的なこの曲が良かった。暗くモノトーンながらも、フェイザーで周期的に変化する位相が、波間に漂うような気持ち良さを演出してくれる。

V.A. - HYS​.​K006​.​1 & K006​.​2 [Hayes]

Downwardsとかの昔ながらのダーティー&ロウなハードミニマルが好きな人は、HayesのKシリーズの新作として出た2タイトル同時リリースのコンピレーションは絶対チェックしてみてください。こちらの1番には特にツールライクで攻撃的な曲が集められている。Nørbakの歪み感、あるいはMarcalやDivideの前のめりなシーケンスに見え隠れするSurgeonの遺伝子の濃さよ。

続く緑のジャケの2番には、覚醒的なコードやメロディーなど、より多彩な音を盛り込んだ曲が多く収録されている。Temudoの"Da Haze"が特に好き。

Filterheadz - Waveriders [Tronic]

プログレッシブハウスみたいなエモいパッドにガシガシした縦ノリのテクノを組み合わせたキャッチーな曲。Tronic最近こういう分かりやすいピースフルな曲好きだよね。っていうかみんな好きだよこんなの。

ちなみに、掲載リンクの重複が見た目の上で煩雑になってしまうため、今号からBandcampないしSoundCloudで試聴できるリンクがある場合はそちらの掲載を優先し、同じ曲のBeatportへのリンクは掲載しないものとしています。アーティストやタイトルの表記はこれまで通りなので、必要に応じてご利用のストアで検索してみてください。

Spotifyのプレイリストは、例年の通り年初でリセットしていますので、2023年は2023年分として、下記のとおり新たにまとめていきます。

「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。ピックアップは楽曲単位、またはEPやアルバム単位でも紹介しています。

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