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テクノ新譜試聴メモ:2022-08
8月の新譜チェック。
Marboc - Never Show Weakness [Rhod]
スペインのRhod Recordsのコンピから。シンセパッドのワンコードと前のめりなシーケンスだけでぐいぐい引っ張る疾走感のあるテクノ。個人的にあまり馴染みのないアーティストだと思ったら、もともとテックハウスやプログレッシブハウス出身の人で、速いミニマルなテクノをやりはじめたのはここ何年かのことみたい。
Zigler - Percezione alterata [Signal LTD]
Drop-Eの主宰するSignalから、初めて知ったイタリアのZigler。ダークインダストリアルな匂いのする重心の低いハードなテクノが得意のようで、この曲でもヒプノティックなノイズの向こう側で変則的なキックが叩きつけるメリハリが気持ちいい。RGNDによる同じ曲のリミックスは、もっとシャキシャキしたストレートな仕上がり。
Pause - Fake Satellite [BAHN·]
フランスのディープテクノアーティストPauseによるソロEP。抑制的なテンションは保ちつつも全曲どれも重くコンプレッション感のあるアグレッシブな音で、過去の作風に比べてもけっこう攻めており、かっこいい。これからぜひ注目したいアーティスト。
Lakej - Exploited Symbolism [Illegal Alien LTD]
メキシコのIllegal Alienレーベル15周年を祝うエクスクルーシブなコンピの第3弾から、活躍目覚ましいLakejの新曲。ギラギラしたシンセの不協和音の煌めきが徐々に正気を乱していくヘヴィーなツールトラック。
本作はシリーズ全6作に各10曲を収めた大ボリュームの書き下ろしコンピレーションであるばかりか、界隈の実力派アーティストをほとんど網羅的にカバーしたラインナップになっていて、モダンな覚醒系ミニマルテクノの現在地を示すショウケースとして超おすすめです。
Lakej - Exposed Vulnerability [Non Series]
もうひとつLakej、スペインのNon SeriesレーベルのWhiteシリーズの12番として6曲入りソロEP。捨て曲なし。相変わらず完成度が高い…!
Jonas Kopp - Magnetic Turbulence [(R)3volution]
ロッテルダムのレーベルからJonas KoppのシングルのA1。裏を打つオープンハイハットのディケイの長さも気持ちいい荒々しいロウ・テクノ。
Presha - Mainliner (Mike Parker Remix) [Samurai Music]
Preshaのリミックスシリーズ第3弾になんとMike Parkerが登場。もう本当に4つ打ちのヒプノティック系ディープテクノとSamurai系のドラムンベースは境界が交じり合って分からなくなってきた。ここまでエッセンスを削ぎ落すと早回しのエレクトロに聞こえるような気もするし。Mike Parkerはこの路線は既にSpazio Disponibileからの2020年のリリースでも試みているけれども、わたしの知る限りこの音では後に続く人がない。推していきたい。
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今月取り上げたトラックはSpotifyのプレイリストにまとめてあります。
「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。