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テクノ新譜試聴メモ:2021-02
2月の新譜はちょっと少なめです。
公式発表が特にないようなので正確なことは不明ですが、Beatportのシステム上のトラブルなのか、「My Beatport」機能でフォローしているアーティストやレーベルの新譜情報などが取得できない不具合があったようです。2月上旬あたりから、リリースが集中する月・金曜日の新譜がやけに少ないなと思っていたら、同じ報告がちらほら散見されて、どうもそういうことだったみたい。このトラブルは、わたしの環境では現在は解消しています。
デジタルでの音楽リリースって、Bandcampを主軸としてマルチプラットフォームで行うのが当たり前になっているだけに、購入先はもはやBeatportでなくとも全然構わない。でも、幅広いジャンルから自分の興味のあるアーティスト/レーベルの新譜情報だけを一元的、かつ機械的に取得できて、なおかつおいしい部分だけ試聴できるのがBeatportのメリット。別の音楽販売サイトに移行するにしても、フォローリストを見直してそのサイトでカバーできるレーベルとそうでないレーベルを洗い出さなければならないのはけっこうな重労働のはずで、どうしようかなという感じ…。
ところで、フランスのNico Morenoが主宰するInsolent Rave Recordsから出た999999999のリミックスのMVが良かった。別に自撮りでレイヴ・パーティーの様子を撮って回っているだけの映像なんだけど、もう完全に遠くへ行ってしまった日常への郷愁を感じる。曲がまた、投げやりみたいな雑なハードコアですごくいい。
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Joachim Spieth - Ousia [Affin]
Affinから出たJoachim Spiethの新作エクスペリメンタル・アルバム"Ousia"をよく聴いています。昨年出た"Tides"の延長線上にある完全な続編とも言える内容。縦軸たる周波数軸上も、横軸たる時間軸上にも拡大して引き伸ばされた、ほとんど轟音のように響くウォームなシンセパッド持続音が、人間のスケールを超えた巨大な何かが蠢く様子を連想させる。
4曲目の"Akasha"のように、単純なピアノ打鍵音と残響の応答のなかにもピッチの微細な揺らぎが感じられて、よく聴くと前作よりも情報量も解像度も上がっているのが分かる。相反する「瞑想」と「高揚」が同居しているような世界観で、聴くときのテンションに左右されず、長く楽しめそうです。
John Tejada - Year Of The Living Dead [Kompact]
LAのベテランJohn Tejadaのニューアルバム"Year Of The Living Dead"は、タイトルからもジャケからも2020年という年に起きたさまざまな環境変化の影響を強く感じさせるコンセプチュアルな内容。実際に彼自身の制作環境が大きく変わるなかで、学び直しや再発見が多くある作品になったそう。ディープながらも全体的にからっとした明るさに包まれたアルバムで、聴きやすかった。
I Hate Models - Two Steps from Heaven [Disco Inferno]
新レーベルDisco Infernoの1番。また凝ったかっこいいMVを作ったね! 退廃ゴシックパンクな世界観にハマる、ギラギラしたトランシーなウワモノが派手なハードチューン。刹那的な快楽のなかにも過剰にエモーショナルな美を追求するI Hate Modelsらしさが詰まっていて、最高だった。
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Spotifyプレイリストも更新しておきました。
興味のあるかたはプレイリストを追加してみてね。
「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。