ファッション界の巨匠、来日!デザイナーと、学生と紡ぐ未来。
2023年5月、韓国を代表するファッションデザイナーであるイ・サンボンさんが来日されました。
ご自身がデザインを手掛けられた衣装4点をエプソンへ寄贈し、エプソンが卒業制作などを支援する文化服装学院でファッションと文化に関する講演をすることを主な目的としての訪問です。
社内報編集部は一連のイベントに同行。その模様をお伝えします。
* * * 以降は、社内向けに発信された記事の転載です * * *
■ Day 1 ― May 24th, 2023 ―
【広丘事業所】ソリューションセンターLFP*
(長野県塩尻市)
「アニョンハセヨ!」というエネルギッシュな声とともに入って来られたのはイ・サンボンさんです。
会場にはプリンティングソリューションズ事業本部長 𠮷田潤吉さん、プリンティングソリューションズ事業本部副事業本部長 兼 P商業・産業事業部長の五十嵐人志さん、C&Iプリンター営業部 部長 奥苑一臣さんをはじめとするデジタル捺染に関わるメンバーが、イさんを迎えるために集まっていました。
先述のとおり、イさんは韓国を代表する著名デザイナーで、ビヨンセ、レディー・ガガなどのトップスターの衣装を手掛けたことでも知られています。
イさんとエプソンの関係は、2022年10月のファッションショーにEpson Korea Co., Ltd. (EKL)が協力したことから始まりました。2023年3月のファッションショーでもエプソンの捺染プリンターを用いた衣装を制作。一連の作品から、今回4点をエプソンに寄贈いただけることになったのです。
午前9時。関係者がそろったところで始まったキックオフミーティングでは、冒頭、五十嵐さんから「エプソンへようこそ!エプソンはお客さま・パートナー・社員が胸を高鳴らせる製品・サービス・イノベーションを提供できる環境があります。イさんとともに未来を創造していきたいです」との挨拶がありました。
続いて𠮷田さんは、当社のパーパスや経営理念、環境ビジョン2050を説明しつつ「エプソンが強みとするプリンティング技術で世界を変え、イさんとのコラボで社会課題の解決を実現していきたい」と語りました。また、奥苑さんからは捺染市場におけるデジタル捺染の展望や、当社の技術が実現する価値について説明がありました。
エプソン側の挨拶や説明を、時にうなずき、またメモを取りながら聞いていたイさんは、「創業80年来、自然環境保護に力を入れながらビジネスを展開してきたエプソンの取り組みに感動しています。皆さんと一緒に課題解決のため努力を続けたい」と熱を込めて語りました。
その後、イさんは五十嵐さんの案内で、ソリューションセンター内を見て回られました。インクジェット技術の魅力を実体験できるよう、和室やカフェを模したコーナーや、多くの実機をご見学。UVインクで装飾が施された畳や、本物と見粉うレンガ風の壁紙に驚きの表情を見せたイさん。見学の途中ではサプライズプレゼント(イさんとエプソンのコラボを記録した写真集)も用意されており、喜んだイさんが五十嵐さんをハグする場面もありました。
【広丘事業所】
ソリューションセンターDTF、PaperLab、Label Press*
韓国で20年以上にもわたって環境広報大使を務めているというイさんは、PaperLabへ強い関心を示し、使用済のプリントで作られた卒業証書には感嘆の声を上げていました。
【富士見事業所】ソリューションセンター富士見
(長野県富士見町)
一行は、午後にはリニューアルしたばかりのソリューションセンター富士見へ。富士見では、捺染プリンターを間近でご覧いただきました。イさんは「このプリンターはどのくらいの速さで印刷できるのですか?」など熱心に質問されていました。その後、今回のメインイベントの一つである、衣装の贈呈式が始まりました。開放的な空間の中、4台の高光束プロジェクターで映し出されるのは、エプソンが制作協力した2022年のファッションショーとその舞台裏の様子です。臨場感あふれる映像が終わると、拍手とともに衣装をまとった4体のマネキンが運ばれてきました。
イさんはそれぞれの衣装のコンセプトを説明した後、「私の想像力を、衣装という形で実現してくれるのがエプソンです。『地球を友に』という目標を、エプソンとイ・サンボンは共有しています。私は今日の感動を長く記憶し、皆さんと一緒に努力を続けたい」と、出席者に語りかけました。
■ Day 2 ― May 25th, 2023 ―
文化服装学院
(東京都渋谷区)
翌5月25日の正午。イさんと五十嵐さんが姿を見せたのは、文化服装学院です。学生さんへ、イさんの特別講義をお届けするためです。
<講義「ファッションと文化」>
イさんや五十嵐さんなどに学院内を案内するツアーが行われた後、20階のホールで講義が始まりました。
ファッション高度専門士科で学ぶ4年生の約100名がホールに集まり、「ファッションと文化」と題したイさんの話を聴講しました。学生たちが集まりだした時には、少しばかりざわついていたホールですが、「よろしくお願いします」の挨拶とともに講義が始まると静けさが訪れ、話が進むにつれ皆さんの集中が高まっていくのが感じられました。
イさんは映像でご自身のコレクションの様子を紹介しながら、インスピレーションの源泉となる東洋の文化や自然への思い、デザイナーの果たす社会的な責任について熱く語りました。また、「デザイナーの作業ひとつひとつには汗と涙がつまっている」と述べた上で、「皆さんの夢を応援します!」と締めくくり、ファッション、アパレル業界を目指す学生たちへエールを送りました。
<パネルディスカッション>
講義後半では、五十嵐さんや、ファッション高度専門士科を代表した4人の学生を交え、「サステナビリティにおけるデジタル捺染の可能性」「韓国・日本・ニューヨークのファッションシーンについて」の2点について意見を交換しました。
冒頭、五十嵐さんは「写真はデジタル化が世界的にも進んだが、捺染はまだ低い率にとどまっている。デジタル捺染の利点をアパレル業界に広げていきたいと頑張っている。しかし、その認知度はまだまだ」と現状を説明。その上で、「昨年に引き続き、今年も文化服装学院の卒業制作を支援している。教育の場からデジタル捺染の利点を伝えていきたい」と述べました。
エプソンの捺染プリンターを制作に使っている学生からは「デジタル捺染の正確な表現に驚いた」「生地のサンプルがさらに手軽に印刷できるとありがたい」などの意見が出されました。イさんは「アナログ捺染に比べ、デジタル捺染では労力と時間を大幅に縮められる。色の表現も素晴らしい。また、環境保護の観点からもプラスの面がある」と活用して実感した点を伝えていました。
次に、近年各国の消費者が商品に求めるサステナビリティとは何か、という点からも意見が交わされました。
アパレル業界の環境負荷低減にデジタル捺染はどのように貢献できるのか、デザイナーと企業が協力し、いかにして消費者が望むサステナビリティに配慮した商品を届けることができるかについて、企業、デザイナー、学生の立場からさまざまな意見が述べられました。特に「企業や研究者と連携して、サステナビリティに関する消費者の期待に応えていきたい」、「各国で “サステナビリティ”という言葉の受け止めには違いがある。この違いを考えるきっかけになった」といった意見は、エプソンにとって未来のパートナーとなりうる、学生の皆さんの声を直接聞く貴重な機会となりました。
特別講義とパネルディスカッションは90分で閉幕しましたが、次の授業時間が迫っていない学生たちはホールに残り、イさんや五十嵐さん、プリンター営業部のメンバーに捺染プリンターの特長や、生地の取り扱い、柄の配置など次々と質問をしては、熱心にその回答に聞き入っていました。また、展示された衣装を細部まで確認する姿も見られました。