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地域のために。エプソンアヴァシスに在籍する現役消防団員がつくった消防団向けクラウドシステム「コミュたす」を応援してください!!

消防団向けクラウドシステム「コミュたす」。

エプソンアヴァシスに在籍する現役の消防団員が開発したシステムであることはご存じでしょうか?

今回、開発を主導したエプソンアヴァシス株式会社 関澤明愛あきよしと、営業を担当する岡村忠人に、「コミュたす」の開発秘話を聞きました。

現役の消防団員だからこそ分かる、現場の悩み。

関澤明愛。2010年エプソンアヴァシス入社。システムやファームウェアの開発に従事したのち、2022年4月より「コミュたす」のプロジェクトリーダーを務める。上田市消防団は11年目で、現在の階級は部長。

― 開発のきっかけを教えてください。

関澤
私は長野県栄村の出身でして、長野県北部地震で大きな被害を受けました。その当時、多くの地域から支援いただき、上田市も駆けつけてくれた一つでした。あの時の恩返しをしたいと思い、上田市に移住後、2013年に上田市消防団に入団しました。 

消防団員は、火災や災害発生時、自治体や消防署から出動要請を受けると自宅や職場から現場へ駆けつけ、消火や救助活動を行います。出動要請は管轄範囲外の団員に及ぶことがあり、自分が行くべき災害なのか分かりにくく、団員同士が連携しにくいと感じていました。また、多くの地域で消防団員のなり手が不足している中で、少しでも団員の作業負荷を減らし、活動しやすい環境をつくりたいという想いが募っていました。

当時から所属する分団ではLINE*グループチャットを用いて現場までの出動方法などコミュニケーションをしていました。そこで、誰でも使っているチャット上で団員に必要な情報を配信できる仕組みができないかと考えたのです。システム開発のスキルを生かして、2019年、火災発生時に団員のLINEに出動指令を通知するシステムを作り、所属する分団で使っていただきました。

*:「LINE」はLINEヤフー株式会社の商標または登録商標です。

団員さんからは「とても便利です」と評価されて、上田市消防団から「上田市全域に展開したい」と相談を受けたタイミングで会社に提案しました。

エプソンアヴァシスでは、社員が考える新事業アイディアについて経営陣と気軽に意見交換し、経営目線ならではの助言を受けながらアイディアをブラッシュアップする「Catch Ball」という活動があります。2022年4月に経営層にプレゼンし、経営陣と意見を交わした上で、事業化に向けた承認をいただきました。

「Catch Ball」の様子。社員同士がとても近い距離感で会話しているのが分かる。

開発当初は専任プロジェクトとして関澤が一人で進め、途中から岡村にジョインいただき、現在は二名体制です。ほかには、エプソンアヴァシス独自のSIP活動*を利用して数名が協力してくれています。

:Software Innovation Projectの略。「作る」から「創る」への発想の転換を目的とした社内活動。既存業務を効率化し、全業務時間の15%を個人の自由な活動に使うことができる。活動内容は人によってさまざまだが、各活動に共感する者同士が自発的に集い、チーム活動へ発展していくことも。


エプソンアヴァシス株式会社 代表取締役 武井喬。 関澤は、被災された経験から「人の役に立ちたい」というビジョンを掲げ「コミュたす」の開発を自主的に行い、 Catch Ballに持ち込みました。関澤のビジョンと熱意があれば進めていけるのではないかと感じGoを出しました。今までの努力に報いるために、まずは内閣総理大臣賞をプレゼントしたいですね。

市場構造を読み解き、
真に求められる価値を創り込む。

― ボトムアップからの事業化とは驚きです。

関澤
国の政策に消防団の活動が左右されるという市場構造を読み解いたこと、現場経験に基づき取り組むべき「問題」と「あるべき姿」を明確に提示できたことが事業化を後押ししてくれた要因だと感じています。

2021年4月、消防団員の処遇改善を目的とした消防庁長官通達が出されました。通達では出動報酬の創設や、出動報酬の基準の策定などが盛り込まれています。それを受けて私が所属する上田市消防団では、活動時間区分に応じて2000円から8000円まで3段階で報酬を支払うようになりました(出動報酬の支払い基準は自治体によって異なります)。

活動した時間に応じて報酬を支払うためには、団員一人ひとりの詳細な出動記録が必要です。ところが、テレビなどで報じられている災害現場を想像してもらうと分かりやすいですが、急を要し混迷を極める現場で、どの団員が、何時何分に出動していたのかチェックするのは難しいですよね。消防団が「大変だ」と頭を抱えるほどの問題となっていました。

そこで開発した「コミュたす」は、出動指令の通知機能に加えて、出動状況を登録する機能を設けています。これにより、現場で出動者や出動時間を確認する手間がなくなります。

火災発生時に出動対象の消防団員にのみ出動指令を配信できる。通知を受け取った団員は出動手段を選択。団員同士で出動予定と出動手段を把握可能。これは出動する団員が車庫に寄らずに現場に直行するケースにも対応している。
火災鎮火時に消防団員のLINEに鎮火情報を通知。作業終了を登録できる。これにより、現場を指揮していた幹部団員が一人ひとりの活動時間を確認する手間が省ける。


岡村
「コミュたす」の提供価値は、現場の負担軽減だけに留まりません。
私は営業担当として市町村を回っていまして、出動報酬の計算には苦労しているとの声を数多くいただきます。ある自治体さんですと、団員さんに報酬を支払うために、半期に一度、3万枚もの書類を処理しており「とても大変です!」という切実な悩みを目の当たりにしました。

岡村忠人。2000年、エプソンアヴァシス(当時はエプソンコーワ)に入社。 営業職としてキャリアを積んだ後、営業部門や開発部門の部門長を歴任。2022年10月から「コミュたす」の開発プロジェクトに所属。


岡村
そんな困りごとに対し、「コミュたす」を用いることで事務作業の効率化にも貢献できます。

例えば、登録されているすべての団員の活動記録をCSVファイルで一括出力できるため、自治体の会計システムにデータを手入力していた手間が省けます。また、活動記録から活動時間の報告書を自動で作成し、各自治体で用いている既存フォーマットに合わせて出力できるため、出動報酬の支給計算もしやすくなります。
そして行政のデジタル化にも役立てられます。

報告書サンプル

― なるほど。消防団の活動を国の政策を含めた構造的な理解に基づき、問題を見極めたこと。筋の良い仮説を立て、プロセスを作り込んだのですね。お話を聞いていると、痒いところに手が届く機能が満載だと感じました。


まずは市場に投げて、
現場の声を聞き、改善していく。

エンジニアと営業職という異なるキャリアながらも、自然体で会話しているのが印象的。 二人で市町村を回ることがあるとのこと。

― 今回、アジャイル開発という手法を用いたとお聞きしました。β版での試行期間の間に、どのような機能が追加されたのでしょうか? 

関澤
一例をあげるならば、火災現場(火点)周辺の水利(消防用水の供給設備を指す)をマップで表示する機能を追加したことです。

例えば、火災の場合、消防団が現場に到着すると、先に消防署の隊員が到着して消火活動を行っているケースが多いです。その場合、火災現場周辺の水利は使われていることもあり、使用可能な水利を探す必要があります。1分1秒を争う火災現場において、水利の場所と種別が分からないことは死活問題です。

そこで、火点と周辺水利情報を同じマップ上に表示することで、出動前に現場で必要となるホースの本数などを把握でき、かつ、水利探索にかかる時間を大幅に減らせます。また災害時だけでなく、通常の点検時にも位置の特定に活用できます。

水利マップ画面サンプル
土地勘のない団員や新入団員であっても、どこに消火栓などの水利があるか、一目で分かる。


必要なのは、自ら課題を発見し、
ビジネスへと磨き上げる力。

「エプソングループ唯一のソフトウェア会社の強みを生かし、どんどん試していき、 グループ内にフィードバックしていきたい」と関澤。

岡村
「コミュたす」は初期導入費用と月額使用料をいただく有料サービスです。今回、プロジェクトリーダーを務める関澤を中心に、SIP活動を通じた社内有志の協力を得て、「コミュたす」の事業化にこぎつけました。アイディアだけの夢物語で終わらせてしまうのではなく、事業化するためにはどうしたらいいか。どうやったら対価をいただけるまでに価値を創り込めるか。技術者自ら課題を発見し、課題解決に向けて技術者が持っているポテンシャルを最大限発揮し、ビジネスへと磨き上げた良い事例だと思っていますし、これこそが、エプソンアヴァシスが目指す姿だと思います。

関澤
「コミュたす」の普及を通じ、対価をいただきながら社会貢献ができることは幸せです。また、自ら創り出したものを世の中に問うことで、自分たちの力量が試されていることにやりがいを感じますね。


「Digi田(デジでん)甲子園2023」の本選に出場

― 「Digi田(デジでん)甲子園2023」の本選へ出場されるようですね。

関澤さん
そうなのです。「コミュたす」を上田市様に導入いただく際、国の交付金である「デジタル田園都市国家構想交付金」の事業に採択されました。交付金の採択を受けて、上田市様より、内閣府が主催する「Digi田(デジでん)甲子園2023」への出場をご提案いただきました。 

「Digi田(デジでん)甲子園2023」とは、デジタル田園都市国家構想実現会議事務局(内閣官房)が主催するイベントです。デジタルの力を活用して地域課題の解決などに取り組む事例を幅広く募集し、特に優れたものを内閣総理大臣賞として表彰する制度です。

投票いただきました皆様ありがとうございました!!

■コミュたす専用ページ
https://www.commutas.jp/


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