即死攻撃ってなんなんだ

 即死攻撃が幸福をもたらすことってあるか?私見では、多分ない。

はじめに

 ここでは筆者が即死攻撃について日頃思っていることを述べる。まず1でここでの即死攻撃の定義をし、2で即死攻撃の三つのシチュエーションを挙げてそれを検討する。そして3で2を踏まえた結論を述べる。4は余談であり、論点がぼやけそうなのでできなかった話をだらだらやる。

1 即死攻撃の定義

 ここでいう即死攻撃とは、主にターン制コマンドバトルを採用したRPGなどで見られる、一定確率で対象を即座に戦闘不能にする攻撃技のことである。他のゲームにおいてはタワーディフェンスでもそういう技を見たことがある。アクション系のゲームにあるのかどうかは寡聞にして知らないが、そういうゲームでは命中/回避にプレイヤースキルが絡んでくるため少し事情が違うことだろう。ので、ここで述べる話はアクション要素のあるゲームの即死攻撃とは関係ない。

2 即死攻撃は幸福をもたらすか

 さて、冒頭で提示した話をしよう。即死攻撃は幸福をもたらすのか。この問いに対して具体的な状況を三つ挙げた上で、それぞれの状況で何を感じるか述べてみる。

1:雑魚敵が即死攻撃を使ってくる

2:ボスが即死攻撃を使ってくる

3:プレイヤーキャラクターが即死攻撃を使う

 まず『1:雑魚敵が即死攻撃を使ってくる場合』。普通に考えて、嫌だ。

 雑魚敵の即死攻撃が高確率即死などという挑戦的なゲームデザインをしている場合はまず無いだろうから、仮に即死を装備品で防げたとしても、諸々を勘案した結果、ステータス上昇値が大きかったりする別の装備をしている事だろう。しかし、どんなに低確率であったとしても可能性が存在するのなら、その結果は実現しうる。不意に引き当てた20%や10%でそれまでの進行が台無しになり、リカバリ努力を強いられる。普通に嫌だ。なんなら身構えていない分、ボスに敗北するより嫌かもしれない。また、ランダムエンカウントの雑魚敵が50%以上の確率の即死攻撃を持ってうろついている場合を考えてみよう。やる気なくすわ。逆に、そのようなデザインでありながらなおプレイし続けたくなるならば、そのクソ要素以外がよほど素晴らしいのだろう。そういうゲームを知ってたら教えてください。

 次いで、『2:ボスが即死攻撃を使ってくる場合』。こちらはやや話が簡単だと思う。どういう立ち位置かは知らないが、仮にもボスなのだ。NPCの台詞なり攻略WIKIなり、ゲームの内外に「あいつ即死攻撃使ってくるんだよね」という情報がそれなりにあることだろうし、ボス戦とあらばたいがい事前にセーブをしている事だろう。事前対策のチャンスがあり、リカバリも容易だ。雑魚敵よりはショックが少ない。……しかし、ショックが少ないというだけで、盛り上がるかとかうれしいかと聞かれたらそうでもないだろう。

 最後に、『3:プレイヤーキャラクターが即死攻撃を使う』を考えてみよう。

 微妙な所である。即死攻撃は確率に依存する場合が多く、いつでも望みの結果を得られるとは限らない。そして、即死攻撃はたいていリソースを消費する。であるからして、普通に殴って殺せる相手なら普通に殴った方が手っ取り早いと感じるし、一手の損失が戦局を揺るがすような強敵相手にはそんな不確かな攻撃を使わない。

 というか、そもそも強敵相手に即死攻撃を使うという発想がまず浮かばない。ある程度ゲームに慣れた人間であれば、ボスキャラとあろう者即死耐性を備えていて当然だと思うものだ。もちろんこれは単なる偏見、ステレオタイプに過ぎない。確かめてみれば、あのボスもこのボスも意外と即死攻撃で倒せたのかもしれない。

 だが、それはそれでまたうれしくはないだろう。ボス戦はゲームの華だ。専用BGMとか残HPで表示される台詞とかそういった演出を楽しみ、あるいはゲームの側にそういう演出が無かったとしても、ここに至るまでの主人公一行の旅路を思うなどして気持ちを盛り上げるものだ。プレイヤーはボス戦に感慨や達成感を求めている。画面を見ながらボタンをぽちぽち押したいわけではない。肉体が行っている行為はそれだけかもしれないが、そこになんらかの物語を感じたいのである。少なくとも筆者はそうだ。それが、即死攻撃一発で片がついてしまえばどうだろう。拍子抜けというか肩透かしというか、不完全燃焼という気分はまぬがれまい。ボス相手には良い感じに苦戦した上で勝ちたいのである。数ターンかけて、なんならちょっと泥沼でもいい。ゴリゴリ削れるHPにビビりながら回復アイテムを事前に買っておいた自分の判断を賞賛したり、切れかけたリソースを大きな攻撃に使うべきか防御方面のバフに使うべきか悩んだり、敵の攻撃の下ブレに期待したり、そんなこんなを経てボスを倒し、「やった……!俺達、やったんだ……!」みたいな台詞を言う主人公一行の一員面をしたいのである。即死攻撃一発で得た勝利は味がない。ボスが強キャラっぽい演出だったり、なにかしら因縁があったりすると、気まずくすらある。


3 結論

 以上、三つの例をあげて即死攻撃について考えてきた。結論を言ってしまえば、即死攻撃が幸福をもたらす事はまず無い。敵が使ってきたら嫌だし、自分で使うにはやや頼りない。また、あんまり頼り甲斐があってもそれはそれでゲームバランスがおかしくなり、容易に勝てすぎて味気なくなる。どう転んだとてなにかしら微妙、それが即死攻撃だと思う。


4 とりとめのない余談

 でも即死攻撃を使うようなキャラ付けのキャラはだいたい好きかもしれんという所があって……。そういうキャラにはダークなかっこよさを期待している所があるし即死攻撃もバシバシ決めてほしいのである。悩ましい。

 あと、格上相手に通るか通らないかの即死攻撃で博打を打ったり、ボロボロ状態で耐久しながら即死攻撃を試行し続ける、これはキャラの心情描写とかによっては熱くてドラマチックなシーンになる気もする。ゲームのプレイヤーとしての自分はそんな行動をしないが、ゲーム風ファンタジー小説でそういう展開があったら書き方次第では好きになりそう。個人的には状態異常命中率に彼我の基本能力値を参照したりするシステムは好みじゃなくて、やっぱり状態異常は弱者の牙、状況を覆すものであってほしいという思いがある。そもそも魔攻やレベルで上回ってるなら普通に殴っても勝てちゃうじゃん。

 ひとしきり主張した後で例外を述べておけば、メギド72のメギドクエスト(キャラの育成素材を得るための戦闘)において、アモンをPTリーダーにした際にハルファスが10%で繰り出す即死攻撃、これはうれしい即死攻撃である。「できる、かな」キャー(即死SE)を何度聞いてきた事だろう。嵐炎龍フラカンとの戦闘は気楽だがうれしくはないので含まない。フラカン戦とメギクエのロノウェ・ザガン以外でダーティレイド使ったことないです。

 そもそも即死攻撃の持つ重みはセーブの容易さ、リソース回復手段の豊富さ、蘇生の位置づけによって大きく変わってくるので、今回の暴論が全般に通じるとは思っていない。たとえば、戦闘不能が即キャラロストとなる仕様での敵即死攻撃はちょっと嫌どころの話ではない。反対に、戦闘不能が戦闘中に回復できる状態異常に過ぎない場合、即死攻撃はその他の行動制限系状態異常となんら変わりないだろう。また、HP回復が高コストなゲームにおいては雑魚戦を先制即死攻撃で解決できるのはうれしいかもしれない。

 だいぶとりとめが無いが以上。

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