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今も大切なパートナー

暫く投稿をしていなかったので久しぶり何を書けばいいのか迷った結果、
最近のインスタグラムに投稿した内容ですがお店についてもちょくちょくをあげていこうかなと思っています。

先日16周年を迎えた時に改めて月日を振り返りました

ロールケーキについてオープンする時に感じたことを書いた文です、16年経って若干内容が変わった部分もありますが今でもエプルヴェや僕自身にとっても大切なパートナーです。。

お時間のある時にでも目を通していただけると幸いです。



フランスから帰国したばかりの頃、日本で食べるショートケーキやロールケーキなど「定 番」と言われる生クリームをメインとしたケーキが美味しいと思えませんでした。その土 地に根ざした食生活は気候や空気、時間の流れまでもがそれを左右しますが、フランスと日本の違いは大きく、味が濃厚なフランスに比べ日本のケーキはあっさりしすぎで、水っぽく感じたのです。

ショートケーキが美味しいと思えるようになったのは2、 3年後。フランスのものをフラ ンスで食べる、のと同じに日本のものを日本で食べることが最も味が引き立つことを学ん だからでしょう。それはちょうど独立を考えていた頃で、海外で学んできた事=正しい。もしくはフランス菓子=先進的と言う価値を180度転換させる気が無いまま、ケーキを作る自分の中に葛藤がありました。そこであるケーキに出会ったのです。

それは見た目には何の変哲もない、何処にでもあるようなロールゲーキ。たけど、今まで 食べた事のない味に思わず出た言葉が「何これ!?」。同時に今まで悩み、もやのかかっていた僕の目の前がサッと開け、自分のいくべき方向は「綺麗、珍しい」ではなく、「美味しい」なんだ!と気づいたのです。それから、ロールケーキの試作に取り掛かりました。

「しっかりとした食感」があるのに「簡単に溶けていく」。そんな2つの相反するものを目指しましたが、簡単に到達するものではありません。独立・開店に向けて店の物件探し もはじめましたが、なかなか思うような条件にはめぐり会えませんでした。ロールケーキ の試作、そして失敗。物件探しも難航。そんな時期が3年間続きました。それでも理想の味を目指して、試し続け、やっとの思いで配合のベースが出来上がったとき、不思議と現在の土地にめぐり会う事が出来たのです。その時、なんだか神様に「もう、お店をしていいよ」って言ってもらっているように思えました。

この3年の時期は僕がロールケーキの完成に費やした時間であると同時に、この亀岡という土地に根付くための必要な期間だったような気がしてなりません。かつての僕がフランスのものをフランスで食べて、おいしいと思えることが、遠く離れた亀岡でも可能なことを知るに至った時間です。今、僕にとっての喜びは自分が良いと思うものを亀岡、京都のみならず世界の人が食べて「美味しい」と感じてくださることです。僕の作るものをおいしいと言ってもらうには、僕自身がその土地に根付き食を考えることが必要だったのでしょう。

だからロールケーキはエプルヴェそのもの、と言っても言い過ぎではないような気がしま
す。毎日ロールケーキを作り、食べている僕にとって、ロールケーキは良きパートナーでもあり ます。気温、混ぜ方、卵の鮮度、色んな要素のうち、ひとつでも違ったら同じものは出来 ません。だから、手順を間違えることなく、そして真心こめて作ります。この亀岡で食事 をし、仕事をし、生活をしている今、この土地から受けたすべての恵みに感謝しながら自分が美味しいと感じる物、最高と思えるものを目指して毎日ロールケーキを作っています。

「おいしい!」を夢見ながら。

店主 石川 正樹

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