[ショートエッセイ]コロッケ
少女は父親が食べているお弁当をのぞき込む
「お父さん、午後も仕事なのにそれじゃ足りないでしょ。私のコロッケ一つあげるね!」
「おーありがとう」
父親は微笑みながら受け取った
少女は美味しそうにコロッケを頬張る父親をいつまでも見つめていた
目が覚めると朝だった
記憶のどこを探してもそんな思い出はない
自分の中にいる幼い私が
叶わなかった願望を見せつけてきたのだろう
あの子はいつまでも同じ場所にいて
前に進めないんだなぁ
父の顔や声も忘れつつあるというのに
気づけば枕を濡らしていた
31年間のほとんどを
言い知れぬ寂しさと同居しながら生きてきた
お父さんにコロッケあげたかったなぁ
今朝体験した実話でした。
久しぶりに大泣きしてすっきりしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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