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Them/ゼム(2021) これは直視できないと感じました。

 ずっとマイリストに入っていたドラマ。とりあえずシーズン1を見終えたので感想を。正直これはえげつなかった。人種差別をテーマにした作品ということは分かっていたけど、今まで観た似たような系統の作品の中では群を抜いてヤバいと思う。 

<あらすじ>

アメリカに根強く残る闇に焦点を当てて制作された本シリーズ。シーズン1「ゼム:コヴェナント」では1950年代を舞台に、“黒人の大移動”によりノースカロライナ州から白人ばかりが住むカリフォルニア州コンプトンへ引っ越した黒人一家を中心に描かれる。悪質な警官や敵意を向ける隣人、さらにはこの世のものではない何かによって、一家の穏やかな日常は恐怖に塗り替えられていく。

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<感想>

※以下ネタバレを含みます※


 言わずと知れた傑作ゲットアウトやアス、NOPEなど、近年は黒人に対する人種差別をテーマにした”ブラックホラー”というジャンルが勢いを増しているらしい。私はこの用語を初めて聞いたのだが、このドラマはまさにその最たるものと言える。ポップでカラフルなのにどこか不気味な映像や効果音などの演出は、それこそジョーダン・ピール監督の作品に通ずるところがある。

 まだまだ白人が優位だった1950年代、ある黒人夫婦と二人の娘は白人ばかりが住む地域へと引っ越した。入居初日から10日目までに起こったことを1話ずつ描いていく全10エピソードの構成となっている。

 近所の白人たちは信じられないほど露骨な方法で黒人一家を追い出そうとする。黒人が好きだという音楽を24時間大音量で流して揶揄したり、飼っている犬を殺害したりと、その行動はどんどん過激にエスカレートしていく。心理的に追い詰められた家族はそれぞれに幻覚を見るようになり、しだいに現実と妄想の境目が曖昧になっていく。その幻覚も彼らが受けてきた不当な扱いによるトラウマ、劣等感などが生んだものではあるのだが。事実(現実)の嫌がらせと、ホラー要素としての幻聴幻覚が混ざり合い、上品ながら不穏な雰囲気に仕上がっている。

 執拗な嫌がらせはもう見ていられないほど可哀想で、演じた黒人の俳優さんたちに心理的ダメージはないのかなと思えてくるレベル。特に子役はまだ幼く、これが作り話だとしてもこういう扱いを受けて傷ついてしまわないのかなと考えてしまった。撮影していて嫌な気分になったりしないのだろうか。

 私が作中最もキツかったのは赤ちゃんのシーン。実は夫婦には3人目の子供である息子がいたが、白人集団に目をつけられてしまう。妻は強姦され、まだ赤ちゃんだった息子は妻の目の前でずた袋に入れられる。白人達はその袋を投げてキャッチボールを開始。袋には血が滲み、やがて動かなくなった。

 息子がいたことは冒頭から示唆されていたが、このシーンを観たときは開いた口が塞がらず、見たくないけど目が釘付けになった。ここまでするとは。そして、過去にこんな思いをしているのに、それでもなお白人の街へ引っ越す決意をした夫婦に疑問すら抱いてしまった。決して差別に屈しないという意志なのかもしれないけど、まだ幼い姉妹がいるのだ。私なら絶対無理だと感じた。

 ゲットアウトもそうだが、ホラーファンタジーとしての要素を織り交ぜつつ、物語のベースにある人種差別は事実であるため、重厚感と畳み掛けるような絶望感が半端ではない。観ていると本当に心が重たくなるし、半分は本当にあったことだと思うといたたまれない気持ちになる。ドラマ終盤では二重の意味で悪の根源に立ち向かう家族の姿が描かれる。

 ほとんど白人しか出てこないこの作品の撮影現場の雰囲気とか、私はそんな余計なところまで気にしてしまった。もちろん和気あいあいと撮影したとは思うけれど。

 シーズン2は違う時代のお話で、シーズン1と直接のつながりはないようだが、同じく人種差別が主軸に置かれている。少し休憩してから鑑賞してみようと思う。単一民族で人種系の問題に疎い日本人だからこそ、こういう作品から得られるものは非常に大きいと感じた。何にせよ、考えるきっかけは大切だ。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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