キャロルの終末(2023) これすっごいよ!!
Netflixオリジナルのアニメシリーズ。アメリカの作品。何気なく観てみたのだが、あーこれは傑作だ。私だけ?と思ったらFilmarksの評価4.1。だよなっ!(ちなみに全くホラーじゃないので安心してください)
〈あらすじ〉
巨大な隕石が接近している地球。衝突を免れる手段はなく、地球滅亡へのカウントダウンが始まっていた。人々が思い思いに残された日々を過ごす中、独身中年女性のキャロルにはやりたいことが思いつかない。そんな彼女がとった行動は、いつしか人々の心を繋いでいく…
〈感想〉
日常アニメでありながら設定はディストピア的だ。開放的になった人々は全裸で過ごしたり乱行パーティをしたりとやりたい放題だが、もうすぐ地球が滅亡するからといって特別なことをしなきゃいけない訳じゃない。地味で控えめなキャロルは、常に素っ裸で過ごし自由な性生活を楽しむ両親や、常にハイテンションな陽キャ姉に馴染めない。そんな中、とある会社を見つけ、毎日そこに出勤して事務仕事をしては帰宅する、いわゆる普通の日常を選択する。そこに集った人々は互いに面識もないが、皆何かしらの事情を抱えてこの世紀末でも出勤しているのだ。
このアニメの何が良いのか説明しようと試みたが私の実力では無理だったので、とりあえず個人的に特に好きな第5話について紹介する。
<第5話 あらすじ>
職場で少数の同僚と仲を深めるキャロルだが、周りを見渡せばまだまだ知らない社員ばかり。そこでキャロルは人事記録をもとに全員の顔と名前を覚えることにする。「おはよう○○」「ありがとう○○」と相手の名前を添えて挨拶するキャロルに人々は驚くばかり。そんな折、デイヴィッドという一人の男性社員が職場で急死してしまう。遺体を発見したキャロルは家族のもとに遺体を届けに行くが、家族は全くデイヴィッドに関心がなく、彼が家にいないことにも気づいていなかった。仕方なく軍に火葬を依頼したが、デイヴィッドにとって世界で唯一の居場所はこの職場だったと感じたキャロルは職場で彼を弔うことを企画する。キャロルの考えに賛同した人々はそれぞれデイヴィッドとの数少ない思い出を出し合い、その死を悼むのであった。
まずこの名前を呼ぶところがすっごく良い。今までただの「名もなきエキストラ」だった人たちが一気に存在感を増し、それぞれに名前があり違った人生があるという至極当然なことを思い出させてくれる。相手が名前を覚えてくれてるって素直にめっちゃ嬉しいもんね。
それからデイヴィッドの扱い。彼はいわゆる冴えない中年男性で妻は浮気し放題、もう家族に必要とされていなかった。ひっそりと家を出た彼はホテルで寝泊りしながらこの会社に出勤していたんだよね。それを知ったキャロルは、長い時間を過ごしたこの職場こそ彼が帰る場所であり、ともに過ごした時間はかけがえのないものだ、と主張して皆を集めて弔うことにする。もちろん誰もデイヴィッドの素性を知らないため、皆が話す彼の思い出は本当にしょぼくて「髭が生えてた」とか「ホチキスを貸した」とかそんな内容。だけど誰にも注目されることなく一人で死んでいった彼のために、人々がちゃんと仕事の手を止めて集まってくれること、小さなことでも思い出してくれること。これがもう初見の時は刺さりまくってめっちゃ泣いた。誰からも忘れられることほど辛いことはない。彼の人生は孤独だったかもしれないが、キャロルのおかげで最後に人の温かさに包まれるのだ。
キャロルは決して押し付けがましくなくて、悪く言えばすごく地味な普通の中年女性。結婚もしていないし子供もいないから、ひたすら淡々と日々を過ごしていく。あまり抑揚のない落ち着いた話し方すごく心地よい。キャロル以外の人たちが大切な人とのわだかまりを解消していくサブストーリーもあり、これもまた心が温まりまくるのだ。キャロルのように生きていけたら素敵だなぁ。
近い将来地球が滅亡するとしたら、残された日々をどうやって過ごすだろうか。
シニカルに大人の日常を描きつつ、つい忘れがちなことを思い出させてくれる。決して派手ではない展開が、人生に疲弊した私たちの心に優しく響く傑作だ。
ぜひご鑑賞ください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。