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「サービスデスクの運営と改善」(後半)~システム思考を脱し、事業とユーザーの視点でサービス提供するために必要なのは何か?~

ePlugOneでは、お客様のITサービスマネジメントの課題解決を人材育成の側面からご支援するために、オリジナル教育プログラム「サービスマネジメント実践」シリーズを立ち上げました。
今回はその第1弾としてリリースされた「サービスデスクの運営と改善」研修コースの受講生Aさんにインタビューしましたので、2回に分けてお伝えします。

前半ではコースの内容について伺いましたが、後半ではサービスカタログの必要性をきっかけに、サービスマネジメントについてより深くディスカッションしています。


サービスデスクが提供すべきは「サービス」がもたらす価値であり、「システム」の使い方の情報ではない

Aさん:はい、でも、「急がば回れ」ということなのでしょうか。IT側の目線で捉えた「システム」とユーザー視点で捉えた「サービス」の差の説明が冒頭にあり、まずサービスカタログを整備する必要があると言われたのには驚きました

自社のITSMプログラムでは、ITSMアプリケーション導入プロジェクトが先行していて、サービスポートフォリオやサービスカタログの整備は後回しになっているからです。

鈴木:DIG2ネクストが提供するコンサルティングでは、サービスマネジメントを始めるに当たってはまずサービスカタログを整備し、「サービスは何か」を事業側とIT側で合意することから始めることをお勧めしています。

サービスを通じてユーザーに価値を提供する最前線にあるサービスデスクの業務はサービスカタログありきのはずですので、この研修コースでもサービスの定義とサービスカタログの説明は最初にあるべきです。しかしユーザーにとってわかりやすいサービスカタログをもとにサービス提供ができている組織は多くはないのではないでしょうか。

Aさん:はい、当社もユーザー向けの業務ポータルサイトにはシステム名が羅列されています。何の業務ができるのか、システム名の一覧を見てもわからないです。しかしこの研修コースでは常に「ユーザーへのサービス提供者の視点」からサービスデスクが語られており、IT側の人間として陥りがちな「システム側の視点」からの発想の転換が必要と感じました。

私は前職でITインフラの運用設計をしていたのですが、運用設計の書籍はいくつかあるものの数は少なく、あっても「システム」運用管理の範疇に留まっている内容だったと記憶しています。

鈴木:システムありきの現状を変えるには、正しいサービスマネジメントの理解が不可欠です。従来ユーザーサポート窓口はヘルプデスクと呼ばれ、「システム」の使い方に関する情報の提供や申請の処理を行うだけのコストセンターと考えられてきました。

しかしサービスデスクが提供すべきは「サービス」がもたらす価値、営利企業であればビジネスへの貢献です。そうでなければ事業側からIT部門がビジネスパートナーとして認められることはなく、IT部門の取り組みといえばコスト削減ばかりが題目にあがり、事業側が自社のIT部門とではなく外部と協業し、「IT部門は役に立たない」と言われかねません


ユーザー満足度の向上には、サービスの理解に加えてIT以外の知識も必要

Aさん:サービスデスクの改善活動の方法を学びに来たつもりでいたので、まずはサービスマネジメントの正しい理解が必要という話になるとは思っていませんでした。

鈴木:サービスマネジメントはユーザーのためにあるもので、サービスデスクもその手段ですので、本来避けては通れないものです。サービスマネジメントは多岐にわたる知識を必要とする領域で、取り組むには相当の覚悟とリソースが必要となり、自社のサービスを正しく定義するという工程も骨が折れるものです。

しかしサービスマネジメントをスキップしてITILのプロセスやITSMツールの導入だけをすると、プロセスやツールはあるが効果が不明という事態を招きます。サービスを使うユーザーのことを考えずにシステムをマネジメントしていても、ユーザー満足度の向上につながりません。

Aさん:もはや消化不良を起こしそうですが、「サービスデスクの運営と改善」研修コースにはメンバーのエンパワーメント(力を与える)やメンタルヘルスのケア、サービスデスクのリーダーシップのあり方など、社会心理学的な内容もあったので、IT以外の知識を取り入れるよいきっかけになりそうです。

それにサービスデスクの運営での困りごとをサービスデスクでの業務経験を持つ講師に質問してアドバイスをもらうことができたので、それだけでも大きな収穫です。

鈴木:収穫があったとのことでよかったです。サービスマネジメントにはIT以外の様々な知識が必要になります。どんな組織やチームでもメンバーが幸せで楽しく仕事ができることがユーザーによいサービスを提供する前提条件になるので、研修コースではそのようなトピックにも触れています。

特にサービスデスクのメンバーはユーザーとのコミュニケーションポイントとなるので、メンタルヘルスは大切です。

今後も変更管理などの実践研修コースを開催しますので、ぜひご参加をご検討お願いします。