【694回】加古里子「どうぐ」に描かれた願い
人間の条件とは。
絵本作家、加古里子は、「だるまちゃんシリーズ」「からすのパンやさん」のみならず、遊びや科学、歴史など、幅広い作品を残されている。
「道具」について紹介する本作品は、まさに「道具を作り、道具を使い、道具を組み立て、さらに道具を作る」過程を描く。
大きな願いは結末に語られる。
人間は道具を作り、使う生物だ。
ただ、条件がある。
その条件が「ゆたかな たのしい くらし」につながっているか。
つまり、人々の幸福につながっているか。
絵本に描かれた人々は、笑顔だ。楽しそうだ。
幸福に見える。
しかしもし、道具によって、「まずしく くるしい たたかい」の日々につながっているのならば。
それは、人間ではない。
加古里子は、そのような苦しみを抱いていたのではないか。
どうか、無力な人間を破壊する行為が、停止してほしい。
道具で、破壊を進めないで。
報復は、してはならない。
報復は、お互いを悪魔に変えてしまう。
戦いを、止まって。