映画『凪待ち』で香取慎吾が演じる"ダメ男"ぶりが秀逸!(佐藤ミジーの映画鑑賞メモvol.1)
エピソーディングアートの佐藤ミジーです。
今月から映画情報サイトで取材ライティングを担当させていただくことになったんです。もう絵描きなんだか、物書きなんだか、中年ニートなんだかわからない"複業"人生。キングコングの西野亮廣さんも"複業"を勧めておられるから、いいのかなこれで。いいんだな、うん。
洋画はそこそこ見ているし外国の役者さんもそこそこ知っている。しかし邦画のことが、まったくわからない。まずい。日本の映画情報サイトなので、日本映画の情報が中心なんですよね(当たり前だ)。ここ5年くらいはテレビさえ持たない暮らしぶり。日本の役者さん、もとい有名・著名な方を見て名前がわからない、というようでは仕事にならない。
その昔、『ぶらり途中下車の旅』という番組の撮影でお会いした現・ジャイアンツのコーチを務めていらっしゃる宮本和知氏に「野球がお好きなんですね」と言って周囲を凍りつかせた私。ほんとに知らなかったの......強面のディレクターが青ざめる様子でやらかしたのわかったよね......
私、今、けっこうでかいターニングポイントにおりまして。学んだらわかることでクビになってる場合じゃない!!!なんとかしなきゃいけない!!するんだ!!
というわけで。
少しでも緊張感を保ちながら勉強をしていけるように、noteで"映画鑑賞メモ"というカテゴリを作って感想を綴る、そしてチョークアート(または他ツールもあるかも)で挿絵を描く、あわよくば文章か絵で仕事もらう、というつまるところ私利私欲にまみれた企画になっております。
ごめんなさい。
冒頭の勉強アピールをやめろ。
【今回の映画を選んだ2つの理由:ウダ タカキさんって何者?】
映画鑑賞メモの1本目は、こちら。
先週公開された"新しい地図"の香取慎吾さんが主演を務める映画『凪待ち』。
この映画を選んだのには2つ理由があるんです。
1つは、今、私が勝手に注目している俳優・ウダタカキさんが出演されているから。友人に誘われてたまたま見た映画『DEPARTURE』(2018年)でウダ さんを知ったのが始まり。セリフが無いシーンでも、ウダ さんのまわりに劇中の空気がごっそり持っていかれるあの佇まい。1列目の座席で舞台鑑賞をしているような臨場感と迫力を味わわせてくれる俳優さんなんです。文末でもう少し触れます。いや、触れさせてくれ。
2つめは、ポスターの慎吾くんが慎吾くんに見えなくて気になったから。
テレビとか芸能界にいくら疎い私でも、同世代のSMAPは知っている。小学6年生くらいの頃、友達と行った原宿で『ミルキィウェイ』という名前のレストランに入っていく"キラキラした少年たち"をみかけたことがあった。しばらくしてテレビで彼らを見ることに。そう、あの少年たちはSMAPだった、というおとぎ話みたいなほんとの話。懐かしい思い出です。
ただ、このポスターの慎吾くんは、これまで携えてきたであろうすべてのキラキラ感=オーラのようなものは完全に封印している。一瞬、誰かわからなかったっていう人だっていそうなくらい、暗い。とてつもなく、暗い。この印象は、そのまま正しく映画に引き継がれていきました。
ここから下は、ネタバレになる内容が含まれることもありますので、
"まだ映画見てないから知りたくないよ"という方は閲覧をお控えください(拝)
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
【誰の闇がどこで猛威をふるうのか。じわじわと心を蝕むサスペンス】
ポスターのキャッチコピーでは「犯人探し」が強調されているけど、物語の主軸はそこに無いかな。登場人物それぞれが一種の『社会的カースト』に属していて、逃れられない運命に引きずりこまれていく様子に胸が苦しくなる。変わりたいと願う人を変わらせない社会構造とかレッテル。生きていれば多かれ少なかれそんな壁にぶつかることはあると思うけれど、この映画の中で生きている人たちのそれは、とりわけ重い。
劇中、少し"安堵"できたところといえば、前述のウダさんが医師役で登場し心地よい低音の声で患者さんを怖がらせないように説明している時と、郁夫(慎吾くん)のパートナーである亜弓(西田尚美さん)の故郷・石巻の自室から見える美しい風景がかいま見えた時くらい。
最初でこそ、郁夫が出てくると「あ、慎吾くん。」と思ったけれど、だんだんそんなことはすっかり忘れて「郁夫、なぜそこでそうなるーーー!!!」と、これでもかというほど"負のスパイラル"に陥っていく郁夫に悶々としてしまう。1つくらい避けてくれ、と思うんだけど、全て体当たりしちゃうんだもの。
郁夫は『シングルマザーにパラサイトして正職につくわけでもなくギャンブルにはまるダメ男』である。なかなかのクズっぷりなのだけれど、亜弓の娘・美波(恒松祐里さん)は、実の親よりも彼に心を開いたりする。郁夫に腹が立つけれど嫌悪感はない、「そこまで苦しまなくていいから」などと声をかけたくなる気持ちになれるのは、慎吾くんの為せる技ではないかと実感しました。
登場人物のほとんどが闇を持っている、となると、明るく健康的な亜弓の存在がとたんに異質に思えてくる。学生時代、地元で人気者だったという彼女。前夫から同棲している男がいるなら養育費は打ち切ると言われ「入籍はしていない」と言い放ち、あっけらかんとする。彼女の明るさは、そのまま闇でもあるんじゃないかと。こうゆう明るさと表裏一体になっている闇って、うっかり人を近づけるじゃないですか。外からはわかりにくくて避けようもない。闇ってわかる闇よりも、ずっと人を傷つけることもある。
郁夫が殴られまくるのもいたたまれなかったけれど、私がこの映画の中で1番いたたまれなかったのは亜弓のお店に小野寺(リリー・フランキーさん)が訪れた時になされる一連のやり取りのシーン。ネタバレになるとあれなので全ては書けないんですけど、小野寺が去り際、亜弓に声をかける、というか注意を引くようにするところがもうね……私の解釈間違いでなければ、あの瞬間に物語がどう展開していくことになるのか察しました。リリー・フランキーさん、鬼才。もう脱帽。
物語の終盤、郁夫が歩きながら少しずつ咽び泣くシーンが凄かった!自分の血肉を削って、グッと押し流すように少しずつ嗚咽していくところ。心を失くしていた人が、自分を取り戻していくプロセスを見せてもらえた気がする。
邦画は、字幕を追う必要が無いから映像を見ることに集中できて面白かったです。これは白石和彌監督の作品だからなのか、まだ他の作品を見ていないのでわからないけれど、人物の表情をかなりフォーカスして追うようなカメラワークがとても見ごたえがあって良かった。役者さん達の息づかいが伝わってくるような感じがして物語に没入しやすかったな。
というわけで、第1回目の観賞メモは『凪待ち』でした。
【ウダ タカキさん、本日6日(土)WOWOWドラマに出演】
この映画を見るきっかけになった俳優のウダタカキさん。
今日、6日(土)夜10時〜WOWOWドラマWに出演されます!
まだウダさんの活動履歴をリサーチしきれていないのですが、大まかに流れを追っていった感じでは今年に入ってからさらにご活躍の勢いが加速している!!
次回は、私の中でネクスト・ブレイク必至と確信しているウダさんの出演作でメモをお届けしたいと思います。絵をね……絵を描いているんだけど、お顔の整った方ってほんとうに難しい…鍛錬いたします、とほほ。
オススメの映画、などありましたら、ぜひ教えてくださいー!
長々とお読みくださった皆さま、
ありがとうございました!